実作講座「演劇 似て非なるもの」プレゼンツ リレーエッセイ『いま、どこにいる?』第45回 梶原丈義



実作講座「演劇 似て非なるもの」は「人と人が出会うところから始まる」と考えています。

先日、某美大の卒業/修了制作展に足を運んだ時、梶原丈義さんの個展「日々」を観ました。シンプルに横一列に並べられた小さなサイズの絵に梶原さんの過ごした日々を感じ、作者の生活と等身大の作品が好きで期間中二度足を運びました。絵のほとんどは日常の中からすくいあげられたイメージで、遠景というよりはもっと対象に近くて、目に映った一瞬の光景を切り取ったようでした。日記のようなものですか?と聞いたら、日記というよりは、日々を肯定していくようなものです、と梶原さんは話してくれました。とにかく描き続けていくことへの意志を感じて、そんな絵との向き合い方もすごく素敵だなと思いました。

(生西康典)


「今後の展望(笑)」梶原丈義

先日、美術大学の大学院を修了しました。
この先何をするの?とよく聞かれますが、実は…「板前修業」します!!
料理です。おいしいご飯を作ります。得意料理は餃子です。でも勤めるところは和食店ですが(笑) 修了制作でお絵描きしている傍ら、調理師免許を取得しておりました。国家資格です。美大に入学してから親がこの先どうするのか?と、心配の目を向けてきたことが多々ありましたが、国家資格を取ればもう親も安心でしょう。おそらく兄弟の中で一番金がかかったと思います。まあでも手のかかる子程可愛いというので、私はハイパー可愛いかったでしょうね。そんなハイパー可愛い私ですが、もう立派な社会人です。税金、年金、保険、etc…この世にはびこるくだらない搾取をされる立場になりました。もう学生気分ではいられませんが、同時にやっと、社会というものの中に入り込むことができたように思い、大人の階段を一段上ったような気分です。とりあえず今からは、車の免許を取り終え、4月からの新生活スタートの準備を整えたいと思います。料理に関してはまず魚を捌くところからですかね。これからの料理人人生に乞うご期待下さい!

とまあ、大学入学当初、このような人生が待っているとは微塵も思いませんでした。美術大学に入学したので、将来は絶対に有名な作家になるぞなんて思っていました。積極的に展示や制作を行って頑張っていた時期を思い出します。しかしながらそれも学部2年くらいまででしたが…。3年生の時にモノタイプという版画技法に出会いました。それがまあ楽しくてひたすらにその技法で絵を描いてたんですけど、それらの絵を講評されたときに、「絵の具遊びをしてるだけだ」的なこと言われて、美術って楽しんで絵を描いてるだけでは、ダメなんだなと思いました。まあそこから割と反省して、自分の表現って何だろうみたいな、美大生的な悩みを抱えたわけです。そして大学院にまで進学し、たくさん自分の表現について考えましたが、結局なんだかよくわからなかったです。まあでも展示をしていると色々な人がほめてくれて、作品を買ってくれて、喜んでくれるので、それでいいのかなと思います。絵の背景とか長々と説明されてもうざいし、どうでもいいですもんね。絵が良ければなんでもいいですよね。本当に、心の底からそう思います。大学に入学して、大学院に入学して、一番の思い出は何でしょうか?って言われると何でしょう?東京での選抜展の時に上野の鳥貴族で同期ズと飲んだことですかね。初めてのトリキでした!釜めしがおいしかったです(⌒∇⌒)
真面目に考えても鳥貴族のことしか思い浮かばないからまあそれが一番の思い出ということでいいです。本当にとっても楽しい大学生活でした。自分と関わってくれた皆のことが大好きです。またみんなで展示出来たりどこかで会えたり出来たらうれしいな、なんて思いながらこれからも生きていきます!!!!

(2025年3月25日)

梶原丈義(かじはらとものり、Tomonori Kajihara)

2000年山梨生まれ。
版画技法の「モノタイプ」を用い、日々身の回りにありふれたものや出来事を絵にして、表現している。

リレーエッセイ『いま、どこにいる?』

第1回 植野隆司「トゥギャザー」
第2回 鈴木健太「交差点」
第3回 黒木洋平「もっと引き籠る」
第4回 武本拓也「小さなものの食卓」
第5回 冨田学「面白かった本について」
第6回 竹尾宇加「新しい日常」
第7回 ドルニオク綾乃「集えない」
第8回 冨岡葵「Letter」
第9回 岡野乃里子「体を出たら窓から入る」
第10回 奧山順市「17.5mmフィルムの構造」
第11回 千房けん輔「中間地点」
第12回 佐竹真紀「お引っ越し」
第13回 山下宏洋「休業明け、歌舞伎町に映画を観に行った。」
第14回 小駒豪「いい暮らし」
第15回 伊藤敏「鹿児島にいます」
第16回 コロスケ「無意義の時間」
第17回 嶺川貴子「空から」
第18回 加戸寛子「YouTubeクリエイターは考える」
第19回 いしわためぐみ「OK空白」
第20回 井戸田裕「時代」
第21回 Aokid「青春」
第22回 佐藤香織「ここにいます」
第23回 池田野歩「なにも考えない」
第24回 皆藤将「声量のチューニングに慣れない」
第25回 寺澤亜彩加「魂の行く末」
第26回 しのっぺん「歩きながら」
第27回 野田茂生「よくわからないなにかを求めて」
第28回 野口泉「Oの部屋」
第29回 瀧澤綾音「ここにいること」
第30回 鈴木宏彰「「演劇」を観に出掛ける理由。」
第31回 福留麻里「東京の土を踏む」
第32回 山口創司「場所の色」
第33回 加藤道行「自分の中に石を投げる。」
第34回 市村柚芽「花」
第35回 赤岩裕副「此処という場所」
第36回 原田淳子「似て非なる、狼煙をあげよ」
第37回 石垣真琴「どんな気持ちだって素手で受け止めてやる」
第38回 猿渡直美「すなおになる練習」
第39回 橋本慈子「春」
第40回 堀江進司「動くな、死ね、甦れ!」
第41回 増井ナオミ「すべては初めて起こる」
第42回 富髙有紗「鴨川の鴨に鴨にされる」
第43回 高良美咲「出生地」
第44回 中村太一郎「ひとつのおいなりさん」


実作講座「演劇 似て非なるもの」 生西康典

▷授業日:月1回日曜日 12:00〜17:00
「演劇」は既成のイメージされているものよりも、本当はもっと可能性のあるものなんじゃないかと僕は思っています。それを確かめるためには、何と言われようとも、自分達の手で作ってみるしかありません。全ては集まった人達と出会うことから始めます。