銅版画工房講師:上原修一


[作品展のお知らせ]
「銅版画工房」の作品展が、3月22日〜26日に美学校スタジオにて開催されます。詳細はこちら


定員:10名
期間:2024年5月〜2025年3月
日時:毎週木曜日 13:00〜17:00
学費:341,000円 教程維持費:20,900円(年額)
開催教室:本校3F

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銅版画

銅版画という方法を使った「絵」を制作します。

銅版画の特徴として、ひとつは凹版画であることあげられます。もうひとつは、ほかの版種と同様に「版」を用いた間接表現であることです。

約1ミリの厚さを持った銅の板の表面に、何らかの技法で点や線を刻みつけます。
制作者のイメージや意図に基づいて点や線が刻みつけられた瞬間に、銅の板は「版」に変わる。その、点や線(凹部)に銅版画用インクを詰め、紙に絵柄を刷り取ります。

大切なのは、いかに美しい版を作るかではなく、その版を通して刷り上げられたもの(つまりは作品ですが)が「表現」になっているかどうかということです。

直接描いたのでは決して得られない点や線、あるいはマチエールを生み出す力を銅版画は持っています。
あくまでも基本的な銅版画の技法に拘りながら、さらにその可能性について考えていきます。

授業の前半期では、ドライポイント、エッチング、アクワチントといった銅版画の基本技法と、インクの詰め、拭き、修正、プレス機の取り扱いなど、刷りの基本技術とを学びます。なるべく早い時期に、工房での自習が出来るスタンスを確立します。

後半期は、ディープ・エッチング、ソフトグランド、写真製版、コラグラフなどの版作りの応用技法と、多色刷り、雁皮刷りなど様々な刷り方について学びます。多様な銅版画のテクニックを、体験則としてひと通り知って貰うためのプログラムを展開します。

ときどき合評会もやります。けれど、課題のようなものを求めることは一切しません。作りたい人の作りたい気持ちを最優先に実現できる、本当の意味での自由な工房を目指しています。

受講生同士はもちろん、受講生と講師も、忌憚なくお互いを評価、批評し合える関係でありたいと思います。

確信的なものでも、あるいは全く漠然としたものでも構いませんが、銅版画に対する憧れを持った人の受講を望みます。ここは一度嵌まったらとにかくなかなかに深い場所です。

上原修一

講師プロフィール

上原修一

上原修一

1963年長野県生まれ。2000年第5回さっぽろ国際版画ビエンナーレ展。2005年第3回山本鼎版画大賞展。2007年PRINTS TOKYO 2007、あおもり国際版画トリエンナーレ2007。2008年11月第4回山本鼎版画大賞展(上田市長賞)。2010年「第7回 大野城まどかぴあ版画ビエンナーレ展」(池田満寿夫大賞)。  

上原修一オフィシャルページ

銅版画とは?

銅版画は版種の分類では凹版画です。

たとえば、小学校で習うレベルの木版画(凸版画)の場合だと、版材の平らな面の色が残り、溝(彫刻刀で彫ったところ)は白く抜けます。
それと全く逆の仕組みが、凹版画の原理です。版の平らな部分は拭き取られ、溝(凹部)の中のインクが紙に転写されるのです。

凹版画の版材には様々な金属板が用いられますが、銅板が最も広く使われています。これは銅という素材の硬さと柔らかさとが、ちょうどいいバランスを持っているからです。緻密な描画から大胆なマチエール作りまで、多岐多様にわたる技法が展開できます。凹版形式の版画作品が「銅版画」と呼ばれるのはそのためです。

まず平滑な版材の表面に、何らかの技法で凹みになった溝を作ります。その方法は大きく分けて二種類あります。版に直接、溝を刻み込む直接法(直刻法)と、酸などを利用して版材を溶かして溝を作る間接法(腐蝕法)とです。
次にその溝に油性インクを詰め、版の平らな部分のインクを拭き取ります。そして紙を乗せ、プレス機という道具を使い非常に強い圧力をかけて刷り上げます。
プレス圧によって紙が溝に押し込まれながらインクを引き出してくるので、刷られたインクは紙の表面に盛り上がった状態で現れます。

銅版画の歴史

銅版画の起源については諸説ありますが、15世紀前半にはイタリアのフィレンツェ、ドイツのライン川上流地域、オランダ(フランドル地方)などで制作が始まっていました。その当時の作品は、金銀細工職人の技術と道具から生まれたものです。ビュランと呼ばれる鋭利な彫刻刀を使い、鉄板や銅板に直接溝を掘り込んでいく彫刻凹版(エングレービング)でした。この技法を完成の域にまで究めたのは、ドイツの金銀細工職人の家に生まれたアルブレヒト・デューラー(1471−1528)です。

エッチング(腐蝕法)は、もともとは武器や甲冑の装飾職人が用いていた技術です。金属に蝋を塗り、図案を描いて(蝋を削って)から酸に浸すと、その部分が酸に溶け凹んだ模様になります。16世紀にこの技法が凹版画に応用されました。そしてエッチングは、オランダのレンブラント・ファン・レイン(1606−1669)によって17世紀に黄金時代を迎えます。

18世紀に入ると、点刻法、アクワチント、ソフトグランド・エッチング、リフト・グランドなどが開発され、銅版画の技法は多様化します。また、多色刷りの方法もこの時代に確立されました。

リトグラフ(石版画)が普及し、写真技術が発明された19世紀に銅版画は大きな転換期を迎えます。絵画の複製や印刷物の挿絵といった「商業的な」需要が激減してしまったのです。これは、画家自身のオリジナルな銅版画以外には価値がなくなったことを意味します。芸術性を持ち、且つ銅版画でしか表現出来ない世界への追求が始まりました。

「銅版画工房」を受講して

美学校の開校初期から現在まで続く「銅版画工房」。工房には、現役の受講生はもちろん、自身の作品制作のために工房に通う修了生の姿があります。本稿では、修了後も銅版画の制作をつづける南花奈さんと堀越照美さんに話を聞きました。・・・続きを読む

講座レポート

みなさんは「版画」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。彫刻刀で木の板に絵柄を彫る様子。インクをのせた版の上に紙を置き、バレンで紙をこする様子。例えばこうした作業を思い浮かべる人が多いのではないか。つまり、「版画」と聞いて、刷り上がった「絵(作品)」を連想する人は意外と少ないのではないだろうか。

油画が油絵の具を、水彩画が水彩絵の具を用いて頭のなかのイメージを描き出すように、銅版画もまた、「銅版」を使って頭のなかのイメージを紙に描き出す。要は、版を作るのが目的なのではなく、最終的な「絵」を作ることが目的なのだ。銅版画工房の紹介文にある通り、「大切なのは、いかに美しい版を作るかではなく、その版を通して刷り上げられたもの(つまりは作品ですが)が、『表現』になっているかどうか」なのである。

自身も美学校の銅版画工房に学び、第一線の作家として活躍する講師の上原修一さんは、「(工房では)描くもののテーマは自由だけど、『なぜ銅版画という方法を使うのか』を常に意識させるようにしている」と話す。「絵」を描くための方法は銅版画以外にもたくさんある。むしろ筆と絵の具で直接キャンバスに描いた方が手っ取り早い。ではなぜ、今銅版画に取り組むのか。その理由を求めて工房を訪れた。・・・続きを読む

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〈版画/写真〉


シルクスクリーン工房 松村宏 Matsumura Hiroshi

▷授業日:毎週月曜日 13:00〜17:00
カリキュラムは非常に厳しく設定してあります。1年目では困難だがまずは基本的なトレーニングから始める。同時に意図した色が確実に定着出来るメリットを生かして色彩研究にも取り組みます。


リトグラフ(石版画)工房 佐々木良枝+増山吉明 Sasaki Yoshie

▷授業日:毎週火曜日 13:00〜17:00
石や金属の版の上に脂肪分を含んだ画材で、自由に描いたものを版にすることができ、ドローイングや自由な描画、筆やペンで描いた水彩画のタッチを出したり、色を重ねることによって複雑な色合いを出すことができる技法です。


銅版画工房 上原修一 Uehara Shuichi

▷授業日:毎週木曜日 13:00〜17:00
銅版画の特徴として、一つは凹版であることが挙げられます。ドライポイント、エッチング、アクアチントといった銅版画技法の基本技法と、インク詰め、拭き、修正、プレス機の扱いなど、刷りの基本技術を学びます。


版表現実験工房(銅版画) 清野耕一 Kiyono Koichi

▷授業日:毎週水曜日 18:30〜21:30
銅版に触れ合うことによってモノ作り本来の楽しさを体験し、美術表現を創造する「発見」の場をめざします。従来の「版画」の垣根を取り払い、柔軟に他のメデイアとの交流を図り、研究し模索する制作現場です。


写真工房 西村陽一郎 Nishimura Yoichiro

▷授業日:毎週金曜日 13:00〜17:00
カメラの持ち方やフィルムの入れ方など、順を追って実習を進めていきます。「銀塩フィルム」による撮影、ケミカルをつかった手現像、バライタ印画紙への手焼きプリント、筆と墨による修正などが中心のカリキュラムです。