実作講座「演劇 似て非なるもの」プレゼンツ リレーエッセイ『いま、どこにいる?』第14回 小駒豪


実作講座「演劇 似て非なるもの」プレゼンツ

リレーエッセイ 『いま、どこにいる?』第14回 小駒豪


撮影:小駒 豪


実作講座「演劇 似て非なるもの」は「人と人が出会うところから始まる」と考えています。
でも今は人と接触することに、どこか恐れや不安を互いに感じてしまうような状況が続いています。
家族や職場の人たち、ごく限られた人にしか会わない生活をしている人も多いのではないでしょうか。
そんな中、みんな、どんなことを感じたり考えたりして暮らしてるのかなと思ってみたりします。
実際に会ってはいなくても、いろんな場所に信頼する人たちが居て、それぞれ日々の暮らしがある。
そのことを灯火のように感じています。

今週のリレーエッセイは小駒 豪さんです。

(生西康典)


「いい暮らし」 小駒 豪

僕は、東京生まれで、小金井が実家なんですが、
数年前から足立区で、暮らしています。
足立区の家は、荒川の北側で、川からは、200mくらいの一軒家です。
ここに住んでいるのは、縁あって格安の賃貸物件を借りることができたからなのですが、
前々から東東京には興味がありました。

下町の風俗や歴史にも興味がありましたし、内装工事のバイトをしていた関係で、産業廃棄物の運搬をすることがあり、隅田区、足立区などの、荒川沿いのゴミの中間処理場に頻繁に通っていて、町の雰囲気も知っていました。

仕事の関係で自宅で木工作業などをするのでかなり、ゴミが出ます。
そのゴミをなるべくお金をかけずに処理したいのですが、ここ、足立区は、その点において、かなりメリットがありました。

いきなりですが、普段の僕の具体的なゴミの処理の方法をお教えします。
ひとまずは、というか、とにかく分別が重要です。
分別をした上で、金属なら金属、木なら木、を各所に、軽トラで持ち込んでいきます。

木材に関しては、銭湯に持ち込みます。
高い煙突があって、裏口をのぞくと、木材が山積みされているような銭湯であれば、薪として無料で引き取ってくれます。材木であればOK,家具などは、解体して、あればOKです。
ただし、専属の建物解体業者と契約している場合も多いので、一般の素人が持ち込んでも断られることが多いです。今のところ、一般人でも引き取りOKの銭湯は2件しか知りません。

金属に関しては、金属の買取業者に持ち込んで、買取をしてもらいます。
買取の金額は種類によって違いますし、一度にたくさん持ち込むと買取金額アップしたりします。一番高く売れるのは、銅で、500円/1kg前後です。ステンレスが100円/1㎏、雑鉄が10円/1kg、電線、給湯器、エアコンなどもOKで、誰でも持ち込み可能です。
ちなみに、気に入った鉄屑とか、古い照明とかを逆に買う事あります。

また、紙や段ボールも、それぞれ、別のリサイクル業者に持ち込みます。どちらもお金はかかりません。

それ以外の、プラスチックやコンクリートガラ、ゴム、石膏ボード、カーペット、はお金を支払って廃棄することになります。川沿いの産業廃棄物処理場に持ち込みます。
この場合は、どれだけ支払う金額を少なくできるかが、ポイントです。金額は、廃棄物の種類によって違いますが、見た目の量/かさ、によっても変わってきます。ですので、トラックなどにゴミを積む時になるべく隙間ができないようにし、踏みつけて、なるべく平らにします。
軽トラックの、荷台にあおりの高さまで摺り切りいっぱい積むと、約0.7立米となり、内装解体の混載ゴミであれば、だいたい1万円くらいです。あと、顔見知りになると、少し安くしてくれるようになります。

以上が僕の、格安ゴミ処理法です。
と、このエッセイで、リサイクルを推進したいわけではないのですが、、
こういう事が、僕にとっては、かなり新鮮でした。
他にも、いくつか、ここに住んで発見したことを書きます。

鉄の買取工場には、様々な業者が鉄を売りに来ていますが
自転車、あるいは、三輪車に乗って空き缶を集めてまわり、それを売るのを生業にしている人が、一定数います。
高さ2mくらいまで、空き缶の入ったゴミ袋を自転車の荷台に積み上げている人もいて、これはかなりアジアを感じます。
しかも、アルミ缶は、一度にたくさん持ち込むと買取額がアップするらしく、数人でグループになって空き缶を集めているグループも見受けられます。エリアを分担して協力して、缶を集めているのだと思います。
そんなグループが、10チームくらいはいるように思いますが、彼らはトラックなど使って、大々的にはやっていません。それはおそらく、法律的にグレーな仕事なので、あまり大きくやらず、ある均衡状態を保ったうえに成り立っているからなんだろうなと思います。

またこの地域には、靴のパーツを作る工場や金属加工業者、皮革製品製造業者や、家具の製造業者などが多いのですが、その多くが、自宅に工場がついていて、家族経営しているような規模の小さな業者のようです。ちなみに自分の自宅も仏壇職人さんが、仏壇を作っていた工場つき住居で、いまだに、仏壇が残っています。

この家は、仏壇職人さんが、大工さんと一緒になって,建てたと聞きましたが、
この地域の家屋は、おそらく住人が自分自身でできる範囲で、修理しているであろう物件が多いのが特徴です。
そういった家のデザインはかなりユニークです。
たとえば、現場で余ったタイルなどを、片っ端から外壁に貼ったような家や、
新築建売り物件の外構や玄関先に、ゴミとも思えるような、品物を置きまくって、数か月で、全く新築に見えないようにしてしまう人。
また、道沿いに、金魚の水槽とジオラマを設置し、その上に仕事で使っていたであろう工業用のウィンチや、フックが絶妙なバランスで吊ってある家。
そういった、足立アーティストが数多くいます。
こういう街並み、人々の暮らし方は
西東京の、既製品のような家が多い街で生まれ育った僕には、とても新鮮でした。

住み始めてから、地域の歴史を調べてみると、
この地域が戦後の一時、バタヤ部落と呼ばれていて、歴史的にも廃品回収業を生業にしてきた人が多い地域だと知りました。バタヤというのは、廃品回収業の差別的な呼称ですが、

だれがどう言おうと
誰かが捨てたものを拾って売るとか、お金かけずに今あるものを使って何かをつくったり、という暮らし
を、やりやすい場所ですることは、(あまり見栄をはったりしないですむので、)ユニークな暮らしだ。
と僕は思います。

気の合う人と近くで暮らし、そうでもない人とは社会的距離を保って暮らすのが、いいと思います。

(2020年7月12日)

小駒 豪 Go Ogoma

1983年東京生まれ
舞台照明と美術と、内装工事などをしています。
2019年12月 照明の個展「あかりのrehome」を学芸大学の「準備中」で開催 
7/15~19ウンゲツィーファ 連ドラ演劇『一角の角』に照明で参加します。
毎晩20:00~ 15分程のライブ配信×全5話

photo by Harumi  Kobayashi

リレーエッセイ『いま、どこにいる?』
第1回 植野隆司「トゥギャザー」
第2回 鈴木健太「交差点」
第3回 黒木洋平「もっと引き籠る」
第4回 武本拓也「小さなものの食卓」
第5回 冨田学「面白かった本について」
第6回 竹尾宇加「新しい日常」
第7回 ドルニオク綾乃「集えない」
第8回 冨岡葵「Letter」
第9回 岡野乃里子「体を出たら窓から入る」
第10回 奧山順市「17.5mmフィルムの構造」
第11回 千房けん輔「中間地点」
第12回 佐竹真紀「お引っ越し」
第13回 山下宏洋「休業明け、歌舞伎町に映画を観に行った。」

▷授業日:週替わりで月曜日と金曜日 19:00〜22:00(6月から開講)
「演劇」は既成のイメージされているものよりも、本当はもっと可能性のあるものなんじゃないかと僕は思っています。それを確かめるためには、何と言われようとも、自分達の手で作ってみるしかありません。全ては集まった人達と出会うことから始めます。