第59回 5月10日(金)
「造形上の預金通帳を放棄する—マーク・ロスコの人と芸術」
講師:本江邦夫
抽象表現主義にはまとまった様式が無いとは、よく言われます。裏を返せば、それだけ個々の画家の絵画世界が深く鋭いということです。ニューマン、ポロックと比べると、マーク・ロスコ(1903-70)は一見したところ抒情的で、口当たりのよい「抽象」画家です。しかし、その奥底にはギリシア悲劇的とも言えそうな、実存的な情念が横たわり、彼の「色とかたち」を操っています。ただの図形的な「抽象」ではないのです。
本江邦夫
1948年、愛媛県松山市に生まれる。美術史家。1976年、東京大学美術史学科修士課程を修了後、同年秋より、東京国立近代美術館に勤務。マチス、ゴーギャン、ルドン等の大規模な回顧展を手掛ける一方で、現代美術にかんしても造詣を深める。1998年より多摩美術大学教授(‐2019年3月)。この間2001年より府中市美術館館長を兼務(‐2009)。主要な著書として「●▲■の美しさって何?」(1990)、「絵画の行方」(1999)、「現代日本絵画」(2006)などがある。
日 程:2019年5月10日(金)(講座は毎月第二金曜日開催)
時 間:19:00~21:00(開場18:40)
場 所:美学校 本校(地図)
東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル3F
参加費:1,500円
申込み:受講申込みは不要です。直接美学校にお越しください。
問合せ:宥学会 yugakukai@mbr.nifty.com
宥学会
かつて美学校に存在した観念美術家・松澤宥主催の「最終美術思考教場」。そこには、新しい価値観による表現をめざす自由な雰囲気がありました。宥学会・遊学塾は、その再現を願い創設された継続態です。主催するのは、同教場の最終年在籍生3名(窪寺雄二、米谷栄一、渡辺彰)が結成した宥学会。気負った名称ではありますが、松澤を崇めるのではなく触媒とすることで、各々の表現思考を広げたいと考えるささやかな集まりです。
アーカイブ
2012年
第1回 12月8日(土)「「叛アカデミー:グローバル・オルタナティブ美術教育」を探る」
2013年
第2回 1月12日(土)「松澤芸術と詩の位置」
第3回 2月9日(土)「なぜアートはヲタ文化に依存するのか」
第4回 3月9日(土)「ソーシャルに潜む同調性。ポリティカルが果たすべきこと。」
第5回 4月13日(土)「批評性の消失。情報と効率に呑み込まれる生」
第6回 5月11日(土) 討議「改めて問う芸術/美術」<自由参加ディスカッション>
第7回 6月8日(土)「私たちにとって描画とは何だったのか」
第8回 7月13日(土)映画談議
第9回 10月12日(土)松澤宥選詩集刊行記念「朗読と講演」
第10回 11月9日(土)「暮らしから生まれる抵抗・表現・共生〜ニューイングランドが示すもの」講師 アライ=ヒロユキ
第11回 12月14日(土)「ギャラリーとつき合う」講師:吉岡まさみ
2014年
第12回 1月11日(土)「松澤宥全詩閲覧」講師:中ザワヒデキ
第13回 2月22日(土)「12年前の松澤宥を映像で見る」
第14回 5月10日(土)「日本近代美術史の最前線」講師:足立元
第15回 6月14日(土)「アートが隠蔽/忌避してきたアート 天皇アート論〈予告篇〉」講師:アライ=ヒロユキ
第16回 7月12日(土)「「オブジェ」概念をめぐって――松澤宥の仕事から考える」講師:土屋誠一
第17回 8月9日(土)「松澤宥をめぐるフリートーク」
第18回 11月8日(土)「自由討論 松澤宥をいかに葬るか ―――中ザワヒデキ『「松澤宥論」論』をテクストに」進行:渡辺彰
第19回 12月13日(土)「松澤宥その可能性の中心――松澤宥をいかに葬るかⅡ」進行:渡辺彰
2015年
第20回 2月14日(土)「私にとっての60年代美術」 講師:細谷修平
第21回 3月14日(土)映像作品「ψプサイ」上映会(制作:黒田典子)
2015年5月より、講座名を「ω(オメガ)芸術表現 ―― 宥学会・遊学塾」から「宥学会・遊学塾」に改称。
第22回 5月8日(金)「ボードリヤールの言う消滅 ――あるいは、私に今何よりも詩である彼の言葉について」講師:渡辺彰
第23回 6月12日(金)「「歴史による無名化」考 中西レモン個展を“肴”に」
第24回 7月10日(金)「詩作品にみる戦後70年」講師:渡辺彰
第25回 9月11日(金)「中井正一を何度も読み直す」講師:土屋誠一
第26回 11月13日(金)「松澤宥を語る会」
第27回 12月11日(金)「遅ればせながらchim↑pomと向き合う」渡辺彰
2016年
第28回 2月12日(金)「1971年、松澤宥、渡欧の旅〜写真アルバムを手掛かりに」ゲスト:松澤久美子 聞き手:細谷修平、中西レモン
第29回 3月11日(金)「新・方法 talks about 新・方法」ゲスト:新・方法
第30回 5月11日(金)<総力特集> —蔵書から発見!「ムー」より読み解く「松澤宥の謎」—
第31回 6月10日(金)芸術弾圧誌『メインストリーム』の紹介と宣伝 講師:『メインストリーム』編集部(東野、山本)
第32回 7月8日(金)「希代のカラリスト松澤宥の絵画」 講師:長沼宏昌
第33回 10月14日(金)「知りたい!セルビアのアートと文化」講師:吉岡まさみ ゲスト:セルビア大使館文化担当
第34回 11月11日(金)「自由の可能性と不安の時代における思考のテクネー」講師:藤井雅実
第35回 12月9日(金)「孫たちの見た松澤宥」ゲスト:松澤桂子さん、佐々木梓さん 聞き手:米谷栄一
2017年
第36回 1月13日(金)「ダダ101年と松澤宥―キャバレー・ヴォルテールからΨの部屋へ」講師:塚原史
第37回 2月10日(金)「芸術作品とただのモノ」講師:本江邦夫
第38回 3月10日(金)「美学校校長 vs 宥学会 口舌バトル!」
第39回 5月12日(金)「『キャラクター絵画』は可能か -藤城嘘の作品を振り返って-」講師:藤城嘘
第40回 6月9日(金)「赤とピンク 日本近代ポルノグラフィ史」講師:足立元
第41回 7月14日(金)「芸術を織り成す諸価値の迷宮へ」講師:藤井雅実
第42回 9月8日(金)「美術からみた「演劇性」再考 日本における新劇ムーヴメントを中心に」講師:土屋誠一
第43回 10月13日(金)「芸術の公共圏」講師:gnck
第44回 11月10日(金)「松澤宥は何をやろうとしたのか?」講師:千葉成夫
第45回 12月8日(金)「カウンターカルチャーの目撃者・写真家 羽永光利」講師:羽永太朗
2018年
第46回 1月12日(金)「松澤宥論・第二回:「松澤宥幻想」」講師:千葉成夫
第47回 2月9日(金)「松澤宥談義」パネラー:宥学会(大住建 窪寺雄二 米谷栄一 渡辺彰)
第48回 3月9日(金)「ゼロ次元−岩田信市とその周辺から」 講師:筒井宏樹
第49回 4月17日(火)「絵画の始まり、東・西の絵画」講師:千葉成夫
第50回 5月11日(金)「バーネット・ニューマンの人と芸術」講師:本江邦夫
第51回 6月8日(金)「芸術的経験への哲学的テクネーの実装:ポスト構造主義・思弁的実在論から古典美学まで」 講師:藤井雅実
第52回 7月13日(金)「Beyond myth of the AIMITSU─靉光という神話のむこうへ」 講師:石川翠
第53回 9月14日(金)「イメージで思考することの限界 ーキャラクターの表象不可能性をめぐる美学と理論」講師:塚田優
第54回 10月12日(金)「絵画の再発見」講師:堀浩哉
第55回 11月9日(金)「美術家の領分、信憑性 -わたしの仕事をめぐって」講師:梅津庸一
第56回 12月14日(金)「『神霊』写真について」講師:原田裕規
2019年
第57回 2月8日(金)『展覧会構成の新解釈ーー「春のカド」その活動と思考について』講師:内田百合香、船戸厚志
第58回 3月8日(金)「千葉成夫に訊いてみよう」