特別講座「宥学会・遊学塾」第62回「絵画の内部と外部、またはその境界について」講師：藤井雅実、梅津庸一

第62回 9月13日（金）

「絵画の内部と外部、またはその境界について」講師：藤井雅実、梅津庸一

絵画は時代とともに違った役割を担ってきたが伝統があるがゆえに手堅く、物理的に所有しやすいという点は大きく変化していないと言えるかもしれない。今日も絵画作品は描かれ続けているが多くの場合は個人的、形式的、歴史的な諸条件と物理的・概念的制約と密接に関わりながらつくられているのではないだろうか。絵画の物体性、表面、イメージ、アレゴリーはどのように作品に付与されるのだろうか。また鑑賞者はそれらをどのように読み解き活用することができるのだろうか。

本イベントでは美術評論家の藤井雅実と美術家の梅津庸一にそれぞれ「絵画」についてレクチャーしてもらいその後議論してもらう。

藤井雅実「絵画の潜在性：その構造と快楽」

「ネットが世界を覆い、PCやタブレットで世界中の多くの人々が、手軽に絵を描き、投稿できるようになった今日、おそらく宇宙史上、もっとも絵が描かれ、人に見られる時代となった。そして、そうした環境の変化は、絵の形式・内容にも、様々な影響を与え、かつてのモダニズムや伝統絵画とは異質の場を、開いている。と同時に、ネット環境は、その潜在的な可能性と表裏に、感性・知性の様々な次元での偏りや閉塞ももたらしている。それは、伝統的な様式や技法、価値観にも及んでいるだろう。
そうした、環境の変容を配慮しつつ、絵画の潜在的な可能性を探ってみたい。」

梅津庸一「わたしと絵画について」

「わたしは一貫して絵画やその周りの環境を自分の仕事にしてきた。今回は主に以下の三点について話したい。
・まるでお稽古事のように習い覚えた絵画の描き方、それを相対化し改変し編集しようとする手つきと意識について。
・様々な絵画（絵）の生態系のネットワークについて。
・絵画制作の即物的なことについて」

藤井雅実（ふじいまさみ）
芸術哲学研究。芸術・文化評論。元「画廊パレルゴン」主宰。
近著：『美術手帖』2019年6月号「80年代　日本のアート」特集：藤井雅実インタビュー、筒井宏樹、吉竹美香、椹木野衣らのテキストに関連記述あり。　
『〈外〉への共振−哲学と芸術の限界とその〈外〉』（「Search&Destroy」第１号・東京造形大学電子マガジン ※ダウンロード無料）。
編著・共著：『現代美術の最前線』（画廊パレルゴン刊　※ダウンロード可のPDF版あり）
『人はなぜゲームするのか−電脳空間のフィロソフィア』など。
CD-ROM監修・翻訳：RMNデジタル・アートセレクション『レオナルド・ダ・ヴィンチ』『ドラクロワ』『セザンヌ』（フジテレビ・NECインターナショナル）。
翻訳(共訳)：R・ニード『ヌードの反美学』、R・カミング『深読みアート美術館』など。

梅津庸一（うめつよういち）
美術家、パープルーム主宰　1982年山形生まれ。
東京造形大学絵画科卒。絵画、ドローイング、パフォーマンスによる映像作品、自宅で営む私塾「パープルーム予備校」の運営、展覧会の企画、テキストの執筆など活動は多岐にわたる。
近年の主な展覧会に「未遂の花粉」（愛知県美術館、2017年）『恋せよ乙女！パープルーム大学と梅津庸一の構想画』（ワタリウム美術館、2017年）など。作品集「ラムからマトン」（ART DIVER）

日　程：2019年9月13日（金）（講座は毎月第二金曜日開催）
時　間：19:00～21:00（開場18:40）
会　場：美学校スタジオ（地図）
　　　東京都千代田区西神田2-4-6宮川ビル1階（袋小路奥）
参加費：1,500円
申込み：受講申込みは不要です。直接美学校にお越しください。
問合せ：宥学会　yugakukai@mbr.nifty.com
協　力：みそにこみおでん

宥学会

かつて美学校に存在した観念美術家・松澤宥主催の「最終美術思考教場」。そこには、新しい価値観による表現をめざす自由な雰囲気がありました。宥学会・遊学塾は、その再現を願い創設された継続態です。主催するのは、同教場の最終年在籍生３名（窪寺雄二、米谷栄一、渡辺彰）が結成した宥学会。気負った名称ではありますが、松澤を崇めるのではなく触媒とすることで、各々の表現思考を広げたいと考えるささやかな集まりです。