特別講義デジタルコンテンツ時代の著作権


Creative Commonsライセンスの使い方

齋藤 CCライセンスの具体例ということで、まずは写真共有サイトFlickrを例に説明していきましょう。

まず前提として、そもそも著作権というのは、何か『作品』を作り出した時点で、自動的に発生する権利である、という事があります。作品 ーーこのサイトで言えば写真ですがーー これらの写真は、撮られた時点で自動的に写真家に著作権が発生していますので、これらの写真を使うためには、撮った人の許諾が必要になります。
繰り返しますが、著作権は、その写真家がプロだろうとアマチュアだろうと関係なく、等しく発生する権利なんです。たとえ全くの素人のスナップ写真だとしても、承諾無しで使用してしまえば法律的にはNG。万が一著作権侵害で裁判起こされたら負けてしまうという事になる。そういうガチガチの著作権法っていうのはあまりに画一的で、作品の利用方法をかなり損なっているのではないでしょうか。
そこで、全ての権利を余す所無く保護する『ALL RIGHTS RESERVED』という従来の著作権を少し緩やかにして、『SOME RIGHTS RESERVED』という形で、いくつかの権利だけ留保してあとはフリーに解放してあげる。このようなライセンスを、作者自身が選択して、自らの作品に提示していく、というのがCreative Commonsの考え方なんです。

吉田 作り手が、自分の作品に対して意思表示を行うことが出来るんですね。

斎藤 そういうことです。ライセンスの選択例を挙げてみましょう。一番緩いライセンスは『表示』という項目で、これは著作権者の名前の表示を義務づけるというものです。つまり、作者の名前を表示しておけば、商業利用や二次創作に使用してもOKという事ですね。他には『非営利』『改変禁止』『継承』という項目があって、それぞれを組み合わせて使用する事が出来ます。

吉田 例えば『表示』『改変禁止』という組み合わせならば、「アーティスト名を表記して、作品の中身を改変さえしなければ自由に使って良いですよ、商用利用もOKですよ」みたいな感じですね。

齋藤 そのようにライセンスを組み合わせて、その範囲であれば自由に使ってどうぞ、というガイドラインをアーティスト自身が提示出来るのがCCライセンスなんです。それによって作品の使われ方がもっと柔軟になるんじゃないか。新しい作品の共有の在り方を示す事で、クリエイティブな広まりが期待出来るんじゃないかということですね。

吉田 Flickrに限らず、こうした共有サイトは大抵CCライセンスを選べるようになっていますよね。

齋藤 そうですね。では音楽の例ということで、SoundCloudを見てみましょう。SoundCloudは簡単に音楽をアップロード出来る便利さに加えて、音楽の波形に対してコメントがつけられるのが特徴ですね。そうしたコメントでのやり取りも含め、様々なコミュニケーションに使える音楽共有サービスだと言えます。例えばこれはDaisuke Tanabeという世界的に活躍されている日本人ミュージシャンのページですけども、彼のように普通にCDリリースしている人でもここで無料の音源をアップするなど、様々なアーティストが利用しています。
ここでもFlickrの例と同様に、自分の作品に対して付与するCCライセンスをアーティスト自身が選択できます。例えばDaisuke Tanabe君のこの曲には、『表示』『非営利』というライセンスが付いていますね。これは「アーティスト名を表記して、商業利用をしなければ、自由に使っていいですよ、二次創作やリミックスもOKですよ」という事を現しています。

吉田 SoundCloudを介してミュージシャン同士が知り合ったり、音楽がコミュニケーションツールになるというのが面白いですよね。以前はmy spaceとかもありましたけど、そういう音楽SNSにCCライセンスが積極的に利用される事で、作品を通した自由なコミュニケーションが広がっていくという感じがします。

齋藤 そうしたコミュニケーションの例として、CCとアメリカのdublabというネットラジオ局の共同プロジェクトで、ちょっと面白い試みが成されているので、レクチャーの後半で紹介したいと思います。