かつて美学校に、観念美術の創始者・松澤宥が主催した「最終美術思考教場」が存在した。それは新しい価値観による美術を創出しようとする教場だった。
本講座は、その継続態でありながら、そこから長い時間が流れた今現在を見つめることで、新たな表現の模索へと再び舵を切ることをめざすものだ。
主催は、最終美術思考教場の最終年在籍生である3名=窪寺雄二(写真家)米谷栄一(美術家)渡辺彰(詩人)によって結成された宥学会。
各々が各自の内的要請から得た問題意識を、講義あるいは討論のかたちで持ち込み、また随時、講師として新進の批評家やキュレーターなどを招くことで、世代を超えた“今”の現出に立ち会い刺激し合うことをめざしている。
そういう集まりであるため、一般参加はぜひとも歓迎するところ。さまざまな嗜好の人と面白い話ができることを望んでいる
■宥学会
松澤宥の知られざる研究や未公開の作品の探索・整理・保存を担う機関であるとともに、松澤を(崇めるのではなく)触媒とすることで表現者の思考の資とすべく研究・議論・雑談することを旨とするグループ。出版・展覧企画などの活動を志向し、「世界蜂起計画」の一翼を担う「表現情報資料センター」を継ぐ機能の獲得もめざす。
【ω芸術表現関連:経緯・活動】
2005:松澤宥より「裏ψの箱を瞑想台に埋めよ」指令(伊丹宛)
2006:松澤宥消滅
2007:05年指令による「秘儀-虚空会」を執行(参加22名)
2011:松澤家より詩集刊行依頼(渡辺に打診)
2012:3月、宥学会発足
10月、松澤宥詩集「地上の不滅」復刻(宥学会刊)
「世界蜂起計画」発掘
12月、美学校特別講座「ω芸術表現」開講
2013:瞑想台遷座の検証と儀式
2013:10月15日 松澤宥選詩集「星またはストリップショウ」発行(書肆山田刊・宥学会編)
2014:「世界蜂起計画22」第一弾公開
第37回2月10日(金)
「芸術作品とただのモノ」
講師:本江邦夫
1970年代のコンセプチュアリズムの根底にある「芸術とは芸術の定義である」(Kosuth)という、「現代美術」のある意味での公理を念頭に置きつつ、「芸術と芸術ではないもの」の境界線を19世紀末から探ってみたい。またここでいうモノはただの行為をも含み、「関係性の芸術」(Relational Art)の(無)意味についても考えたい。「美術」そのものが死にかけている今だからこそ、これは必要な手続きである。ちなみに、表題はDantoの含蓄に富んだ迷走的エッセーの題名。
プロフィール
本江邦夫
1948年生。76年、東京大学修士課程(西洋美術史)を修了後、東京国立近代美術館に勤務。マチス、ゴーギャン、ルドン等の回顧展と同時に、「メタファーとシンボル」、手塚治虫、辰野登恵子等の現代展にかかわる。98年4月多摩美術大学教授、現在に至る(2001年~09年、府中市美術館長を兼務)。著書に『○△□の美しさって何?―20世紀美術の発見』『絵画の行方』『オディロン・ルドン-光を孕む種子』『現代日本絵画』など。
日 程:2017年2月10日(金)[講座は毎月第二金曜日開催]
時 間:19:00~
場 所:美学校 本校(地図)
東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル3F
参加費:1500円
申込み:受講申込みは不要です。直接美学校にお越しください。
問合せ:宥学会 yugakukai@mbr.nifty.com
窪寺雄二
美学校最終美術思考工房の最終年在籍。以後、断続的に美学校とのかかわりを持つ。現在は写真を手掛け、舞踏・演劇・パフォーマンス等を主な被写体として表現の現場を記録している。戦後日本の美術界が最も過激だった60年代(~70年代)を振り返りながら、何が面白かったのか、今何が面白いのか、を探っていきたい。
渡辺彰
美学校最終美術思考工房、Bゼミスクール理論専修卒。詩集に『谷間からの十五篇』(沖積舎)『風の頬まで』(深夜叢書社)『詞』(開扇堂)など。“現実への逃避”が進む社会で表現行為の拠って立つ場は…? 松澤表現の原点である詩を素材として同時代の詩と美術の状況を辿るのを皮切りに、戦後日本の多分野の表現史を再検証することで現在状況にコミットする問題を提出し論議したい。
米谷栄一
美学校では、「最終美術思考工房」(松澤宥)に学んだ後、「インド哲学講座」(松山俊太郎)「絵画教場」(菊畑茂久馬)に学ぶ。以後、画廊企画展・グループ展・芸術祭・アートイベントへの出品多数。沢山の絵画作品を持参した私に、松澤先生が言ったのは「消滅!」のひと言だった。私が松澤先生に関わってものを言う場合、欠かせない場面である。しかし制作することを「消滅」させることは出来なかった。私はものを作ることで、手で考えるような人間である。先生はそんな私を面白がってくれたように思う。そして「今日の作家展」「牛窓国際芸術祭」「弁天海港佐久島アートイベント」など、先生と同じ機会に作品を発表した。私は「消滅!」を目の前に据えて、どんなものをどのように作ってきたか。そしてそのときどきどのように先生と関わったかをお話ししたい。
伊丹裕
美術家。 松沢宥のもとで最終美術思考工房修得。1980「美道的表現の宣言」1991「サーキュレーション・アート提唱」。1992「波動空間哲学の構築」、1993-2003「惑星磁場修正計画」として地球上のパワースポット7箇所に磁場の修正装置を埋設し、地球の磁場を修正する実施プロジェクトを推進。「磁場=意識場」をコンセプトに見えないエネルギーを探求し、視覚・聴覚的に見えるかたちに表現することを試みるとともに、未知なるエネルギーを利用可能にする考え方のメッセージを発信している。「惑星磁場修正計画」の広義的解釈は、地球環境を様々な分野から探求し、導き出された観点より、改善を図る長期的なプロジェクトと位置づけている。
アーカイブ
2012年
第1回 12月8日(土)「「叛アカデミー:グローバル・オルタナティブ美術教育」を探る」
2013年
第2回 1月12日(土)「松澤芸術と詩の位置」
第3回 2月9日(土)「なぜアートはヲタ文化に依存するのか」
第4回 3月9日(土)「ソーシャルに潜む同調性。ポリティカルが果たすべきこと。」
第5回 4月13日(土)「批評性の消失。情報と効率に呑み込まれる生」
第6回 5月11日(土) 討議「改めて問う芸術/美術」<自由参加ディスカッション>
第7回 6月8日(土)「私たちにとって描画とは何だったのか」
第8回 7月13日(土)映画談議
第9回 10月12日(土)松澤宥選詩集刊行記念「朗読と講演」
第10回 11月9日(土)「暮らしから生まれる抵抗・表現・共生〜ニューイングランドが示すもの」講師 アライ=ヒロユキ
第11回 12月14日(土)「ギャラリーとつき合う」講師:吉岡まさみ
2014年
第12回 1月11日(土)「松澤宥全詩閲覧」講師:中ザワヒデキ
第13回 2月22日(土)「12年前の松澤宥を映像で見る」
第14回 5月10日(土)「日本近代美術史の最前線」講師:足立元
第15回 6月14日(土)「アートが隠蔽/忌避してきたアート 天皇アート論〈予告篇〉」講師:アライ=ヒロユキ
第16回 7月12日(土)「「オブジェ」概念をめぐって――松澤宥の仕事から考える」講師:土屋誠一
第17回 8月9日(土)「松澤宥をめぐるフリートーク」
第18回 11月8日(土)「自由討論 松澤宥をいかに葬るか ―――中ザワヒデキ『「松澤宥論」論』をテクストに」進行:渡辺彰
第19回 12月13日(土)「松澤宥その可能性の中心――松澤宥をいかに葬るかⅡ」進行:渡辺彰
2015年
第20回 2月14日(土)「私にとっての60年代美術」 講師:細谷修平
第21回 3月14日(土)映像作品「ψプサイ」上映会(制作:黒田典子)
2015年5月より、講座名を「ω(オメガ)芸術表現 ―― 宥学会・遊学塾」から「宥学会・遊学塾」に改称。
第22回 5月8日(金)「ボードリヤールの言う消滅 ――あるいは、私に今何よりも詩である彼の言葉について」講師:渡辺彰
第23回 6月12日(金)「「歴史による無名化」考 中西レモン個展を“肴”に」
第24回 7月10日(金)「詩作品にみる戦後70年」講師:渡辺彰
第25回 9月11日(金)「中井正一を何度も読み直す」講師:土屋誠一
第26回 11月13日(金)「松澤宥を語る会」
第27回 12月11日(金)「遅ればせながらchim↑pomと向き合う」渡辺彰
2016年
第28回 2月12日(金)「1971年、松澤宥、渡欧の旅〜写真アルバムを手掛かりに」ゲスト:松澤久美子 聞き手:細谷修平、中西レモン
第29回 3月11日(金)「新・方法 talks about 新・方法」ゲスト:新・方法
第30回 3月11日(金)<総力特集> —蔵書から発見!「ムー」より読み解く「松澤宥の謎」—
第31回 6月10日(金)芸術弾圧誌『メインストリーム』の紹介と宣伝 講師:『メインストリーム』編集部(東野、山本)
第32回 7月8日(金)「希代のカラリスト松澤宥の絵画」 講師:長沼宏昌
第33回 10月14日(金)「知りたい!セルビアのアートと文化」講師:吉岡まさみ ゲスト:セルビア大使館文化担当
第34回 11月11日(金)「自由の可能性と不安の時代における思考のテクネー」講師:藤井雅実
第35回 12月9日(金)「孫たちの見た松澤宥」ゲスト:松澤桂子さん、佐々木梓さん 聞き手:米谷栄一
第36回 1月13日(金)「ダダ101年と松澤宥―キャバレー・ヴォルテールからΨの部屋へ」講師:塚原史