神谷有紀「労働跡地」
西荻窪のスペース・トモ都市美術館にて、「外道ノススメ」修了生の神谷有紀さんの個展「労働跡地」が開催されます。是非おでかけください。
「消え得る労働と生まれてくる所作について」
労働の対価とは何だろうか。一般的には、最大の対価は賃金であると認識されているかもしれない。しかし私は、生きていく上で労働がもたらす1番価値あるものは、所作であると考える。
私は現在、最低賃金で接客業を行っている。1日中休憩時間がない時もあれば、休日が1週間以上ない時もある。だが、特に苦だとは思わない。働けば働くほど、得られる経験があるからだ。
生活してくための資金として、賃金は勿論大切である。現代社会において、殆どの人が労働で得た収入で生活している。私もまた、同じように労働で得た収入で生活している。
しかし、賃金は一時的に手元に入っては消えていく。食べ物や生活必需品を購入して、自分の所有物として還元されたとしても、それは一過性のものだ。
対照的に、労働により身についた技術や所作は体に染みつき無意識に行っているものである。
経営難からその職業を離れたり、今後その産業自体が世の中から無くなったとしても、習慣となった所作は体が勝手に覚えているだろう。
経験とは、何にも替えられない、得られたものだけが分かる特別な財産であると、私は思う。
例えば私は、レジを打つ手捌きが素早く見惚れるようなしなやかな動きをする人や、服を畳む滑らかな手つきに上品さすら感じるような人に、その人にしか出せない品やエロスなど、それぞれの価値を感じる。
私が良さを感じた所作について、当の本人も自分の作法に魅力を感じているのかどうかは正直分からない。そして、本人があえてその動きをしているかどうかということも、あまり関係ないと私は思っている。なぜなら、意図して行っていたとしても無意識にやってしまっていたとしても、その技術や所作は労働経験が無ければ習得できないものだからだ。全ては労働から発生しているのである。
本展覧会では、様々な労働環境における、所作の存在や重要性を見つけ出し、改めて価値あるものとして、作品を発表してく。
神谷有紀
神谷有紀 KAMIYA Yuki
1998年愛知県生まれ、在住。2020年に美学校外道のススメ修了。
最低賃金で休憩を取らず12時間1人でレジをするなど、過酷な環境で働いたことをきっかけに、自分にとって労働とは何なのか考えるようになる。
現在は、労働における対価や経験で得られる報酬などを、新しい価値として労働者目線で考え、作品を制作している。
会 期:2020年9月11日(金)〜9月13日(日)
時 間:13:00〜21:00
入場料:フリードネーション(寄付)
会 場:トモ都市美術館(東京都杉並区上荻4-6-6)
《アーティストトーク》
9月12日(土)19:00 – 20:00 (無料)
出演:神谷有紀 / 聞き手:トモトシ、 西田編集長
▷授業日:毎週土曜日 19:30〜22:30
現代を様々な角度から考証し、ハミダシ者として表現を創造していくことを目的に授業を進めていきます。キーワードとして、「サーチ&デストロイ」を強く意識していき、学校教育では教えられないことを存分に取り入れながら、強い表現とはなにか?を考え実践していきます。