「映像表現の可能性」(現「芸術漂流教室」)講師×修了生による座談会



ホワイトキューブから、谷中墓地まで。「映像表現の可能性」修了展

――ほぼ毎年、年度の終わりに修了展を開催されていますね。1期と2期は新宿眼科画廊で、3期は谷中墓地で開催されていますが(笑)、なぜ谷中墓地になったのでしょうか?

倉重 受講生が二人だったので、最大の理由は経済的負担を考えてですね。

長田 谷中墓地って借りられるんですか?

阿部 大きな声では言えないけど、勝手に……。

長田 なるほど、ゲリラでやったんですね。お客さんはたくさん来ましたか?

阿部 通りがかりの人がたくさん来たよ(笑)。日暮里駅からどこかに抜ける近道として歩いている人がいるんだよね。

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2期生修了展「2011-2012 EXHIBITION! ファンファンファンファンファンファン」
2期生3名と1期生3名、総勢6名による新宿眼科画廊での展示風景

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3期生修了展「一期はshift、ただshift。」谷中墓地の空き地でゲリラ的に開催された。

――修了展の作品について講師のみなさんは事前に意見をするんですか?

倉重 けっこう言っていると思います。

田中 みんな、作れるか作れないかわからないけどプランだけが先走っちゃうんですよ。作れるものだけに絞ろうよと言うんだけど、全部やりたいということになって、結局「全部手が回りませんでした」と70%くらいの作品が並ぶのがお決まりのパターンです。

一同 (笑)。

長田 修了展の話自体は夏合宿が終わった頃から始めていました。会場を決めるために、翌週までにギャラリーの候補をみんなで調べてきたりして。2期生の修了展は、受講生の3人だけでなく、先輩(1期生)の3人にも依頼して6人で展覧会をやりました。展示位置の調整などを年明けくらいにしつつ、制作は展示ぎりぎりまでやっていました。

――修了展の思い出とかエピソードとかありますか?

倉重 雛子は藝大の受験で忙しかったよね。

長田 正直、受験で忙しかったんですけど、それは個人の都合だから、藝大を受験しているとも受かったとも言えず……。結局、展示のオープニングまで言えずに、大学に行ったあと遅れてオープニングに行ったら「お前何してんだ、もう始まってるぞ!」「実は、藝大に受かって……」みたいなことになってしまい……。

一同 (笑)。

長田 搬入も藝大の入学式が終わってから行ったりして……、本当に迷惑かけました。

――5期生は、「ティーム・エモZ」(※7)というグループ名で修了展をされていますね。

前田 12月にやった中間展のタイトルが「ティーム・エモ発表会」だったんです。それで、修了展も同じ名前でやりましたが、その後は特にグループで活動をしているわけではないです(笑)。

阿部 「ティーム・エモ」は、いつの間にか生まれていたからね。

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5期生修了展「ティーム・エモZ《エモンドセレクション金賞受賞祝賀会》」で販売されたトランプ。
トランプとして遊んでもいいし、カタログとして楽しむこともできる。

前田 修了展をやってよかったことは、やはり美学校の他のクラスの人や外部の人たちに作品を見てもらえたことですかね。「天才ハイスクール!!!!」の解散展と時期が重なり、場所も近かったので、その流れで足を運んでくれる人も多くて、予想以上にいろんな方に見ていただけたかなと思います。いつもとは違う視点からの意見を聞けたし、交流の場にもなりました。少人数だからこそかもしれませんが、ティーム・エモは話がまとまらなさすぎて準備が超絶にたいへんだったんですけど、それも含めて面白かったです。

――修了展の「エモンド・セレクション」のフライヤーの文章が面白かったですね。

阿部 あ、そうだ、俺の役割はそれもあるよね(笑)。忘れてた。アピールしておこう(笑)。毎回、その年の雰囲気に合わせて書きぶりを変えてます。

田中 中間展とか修了展のニュースリリースは全部阿部さんが書いているんですよ。映像クラスに入れば、「あなたの展覧会に本物の編集マンの言葉がつきます」って。

一同 (笑)。

(ここで仕事帰りに駆けつけてくれた修了生の渕本ありささんが登場)

――さっそくですが自己紹介をお願いできますか。

渕本 4期生の渕本ありさです。いまは会社員をやっています。もともと仕事でグラフィックデザインをやっていたんですが、平面ばかりでつまらないなと思っていました。そんなとき、たまたま会社の近くでやっていたTRANS ARTS TOKYO(※8)に行ってみて、そこで美学校を知って通うことにしました。

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4期修了生の渕本ありささん。会社員をしながら受講していた。

――講座で印象に残っていることはありますか?

渕本 いまも何か制作していて行き詰まると、迅さんに「つまんねーもん作ってんな」って言われそうだなって思います(笑)。

一同 (爆笑)。

渕本 これはつまらなくなるなって思いながら作っているダメな状況のときに、迅さんの声が聞こえるんです。

長田 それちょっとわかります。あと、「これもうやっている人いるよ」とか(笑)。

――トラウマじゃないですか(笑)。

阿部 セラピーが必要だな(笑)。

倉重 でも、それは言わないと時間が無駄じゃない。

渕本 会社との両立のなかで、どう時間を作ろうか考えていたんですが、うまくできなかったのが心残りです。在学中は思うように作品を作れないのもあって、ずっとその点を試行錯誤していましたね。

田中 よくよく聞いたら、渕本と僕の会社の人が一緒に仕事をしていたりもしたんだよね。4期は最終的に受講生が渕本だけになってしまったので、現代美術寄りというより、ミュージックビデオを作るとか、ちょっとデザイン寄りの課題も出しました。逆に、わりとおしゃれな作品を作る渕本に、現代美術の企みをもたせる作品化のコツみたいな検証もしました。

(※7)ティーム・エモZ
「映像表現の可能性」5期生による謎の組織(グループ)。2014年12月に美学校屋上で開催された一日限りの中間展「ティーム・エモ発表会」に際して発足。15年4月には、「ティーム・エモZ」にグレードアップし、高円寺pockeにて修了展「ティーム・エモZ《エモンドセレクション金賞受賞祝賀会》」を開催。
(※8)TRANS ARTS TOKYO
東京都神田錦町の旧東京電気大学跡地を拠点に、2012年から毎年開催されているアートプロジェクト。空きビルなど、都市のさまざまな空間を活用し、コミュニティに根ざしたプロジェクトを展開。美学校の修了生や講座も、展示やパフォーマンスを行っている。http://www.kanda-tat.com/