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「映像表現の可能性」(現「芸術漂流教室」)講師×修了生による座談会

「映像表現の可能性」(現「芸術漂流教室」)講師×修了生による座談会



作品を作って、言葉にして、「絶対に見ない映画」を見に行く授業?

――授業はどんな感じで進めていますか?

倉重 ひとつのクラスのなかに、3つの授業が同時進行している感じです。授業が月4回あるとすると、2回は僕が担当して、あとの2回を偉一郎くんと阿部さんが1回ずつ担当しています。はじめから決まったカリキュラムはあまりなくて、人数が少ないので毎年受講生を見て内容を決めています。例えば、5期は美大生が二人いたので、わりと最初から作品を作りました。逆に、4期は受講生が美術寄りじゃなかったので、ゆっくり入っていってだんだん間口を狭くしていく感じでしたね、僕の場合は。外部のイベントに出かけることもあります。

田中 安易な言い方をすると、僕は「発想の仕方」みたいな授業を必ずやるんです。アート大喜利もそのひとつですね。見たものに対して自分なりにケチつけるとか、自分がこの作家だったら何を作るかと考えてみる。あと、この授業でしかやらないだろうことで言うと、絶対に自ら進んで見ることがないであろう映画を見て批評するとか。今週いろいろ見たなかで最もつまらないものを挙げて、どうしてつまらないかをプレゼンする、なんていうこともやります。現代美術の本当は美味しいところ、意外とモチベーションはそこにあるはずなのに、っていうところを掘り下げるというか。あんまり実のある感じにしない、合理的な授業にしないというのが僕のスタンスで、そこは迅さんとは違う視点になっていると思います。あと、コンペに作品を出すように受講生に促したりもしますね。

――「絶対に見ない映画」って、例えばどんな映画ですか?

田中 僕がいくつか候補を挙げて「どれが一生、絶対に見ないと思う?」って聞くんです。それで映画館に行ったのは、「神様のカルテ2」ですね(笑)。まあ、見て批評するわけです。

倉重 受講生の書いた批評文、面白いよ。

田中 この教室の中ですごく狭く授業をやっているような印象があると思うけど、プロが作ったものを見に行くと、実際に世の中でいま起きていることとつながっている感じがもてるじゃないですか。メジャーな作品も、作っている人がいるとわかるだけでもだいぶ違う。そういう意識付けを、自分も含めてやるということですね。もともと迅くんと僕は性質も違うだろうし、同じような人が同じようなことを言ってもしょうがないので、僕はそういう授業をやっています。

倉重 僕と偉一郎くんはけっこう違うね。同じ生徒の作品を見ても、反応は真逆ぐらい違います。

――一方で、阿部さんはどんな授業をされていますか?

阿部 二人がそういう授業をやっているという前提で、俺は違うことをやる必要があるんです。しかも、先ほど迅くんが言っていたように、受講生の人数が少なくて経歴もバラバラなので、授業の内容はそのたびごとに考えることが多いです。直前まで悩むこともある(笑)。俺の場合、すごく簡略化して言えば、「できるだけ言葉にしてみよう」という発想が前提にあって、それが自分の役割だと思っている部分もあります。自分の作品についてできるだけ説明してほしいし、自分が見た展覧会、演劇、テレビ、なんでもいいから鑑賞したものについてみんなの前で説明するということを毎年やっています。そうすることで主観性と客観性の両方に自覚的になれるし、いずれは自分の展覧会で作品について質問されたときに、ある程度説明できるようなアーティストになってほしいと思っているんです。他には、ゲームを通して自己分析をしたり、ワークショップを通して心理学的、社会学的なものの見方を実践したりもします。受講生のレベルに合わせてみんなが知りたそうなこと、美術史だったり社会問題だったりいろいろですが、それらについてわいわいディスカッションできる場を作っている感じ。自分の本音と向き合えば、その人ならではの表現に近づけるかなって目論見もあるし。こういうふうに言うと小難しい感じですが、本当はわりと遊んでいるだけなんですよね。

倉重 阿部さんの授業はあんまり見たことないけど、小難しいよね、きっと。

佐久間 小難しいです。

一同 (笑)。

阿部 難しい話もするんだよ(笑)。難しくなる話もするんだけど、いきなり難しい話はしません。

佐久間 そうそう、生徒に合わせてくれます(笑)。

田中 発表するにも、語彙も文脈もないとどうやって説明していいかわからないじゃない?でも、阿部さんがある程度そういう話をしてくれると、学んだことを使えるでしょう。

阿部 使っても使わなくてもいいんだけど、使えるかもしれないと思うだけでも違うよね。

長田 阿部さんは、話しやすいところから話をさせてくれるなって思います。何かについて発表するときも、好きな本や音楽、見た展覧会について思ったことを言えばいいので。だから、阿部さんの授業を通じて、考えることが単純に増えたというか、考えるきっかけになりました。

倉重 それで東京藝大に受かりました……。

一同 (笑)。

田中 映像クラスはそういうウリでいいよ。「藝大合格者◯名」っていうコピーをつけて。

佐久間 予備校みたいな感じで(笑)。

田中 藝大以上だな……、「藝大以上、アートのレシピ未満」みたいな。

一同 (笑)。

 

eizo09

 

 


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