特別講義デジタルコンテンツ時代の著作権


オルタナティブな著作権~Creative Commonsの理念

齋藤 さて、著作権の歴史的経緯やベーシックな部分をこれまで説明してきたところで、ここから今回のテーマ~デジタルコンテンツ時代の著作権という所に話を踏み込んでいきましょう。

デジタル技術が発達した現在において音楽を創ることを考えたとき、何らかの形で作品を二次利用する/されるという機会が非常に増えて来ています。機材の普及によって技術的な敷居が下がったということもありますし、ギターやピアノといった伝統的な楽器で曲を作るよりも、既存の作品を元ネタとしてコンピュータ上で曲を作ったりリミックスをしたりというような事が、コミュニケーションの一つとして活発になっていると思います。

その時にネックになってくるのが先ほどから説明している著作権や原盤権といった権利です。そうした権利を完全にクリアするためには、複数の権利者に承諾を取ったり、煩雑な事後処理が必要だったり、大金が要求されたり、何かと大変な訳ですよね。
そうしたこれまでの著作権に対して、オルタナティブな権利の在り方を提案しているのが『Creative Commons』というNPO団体です。そこではシンプルな6種類のライセンスを考案していて、それを『アーティスト自身』が『自分の作品』に付与する事ができます。
つまり、誰かがそのアーティストの作品を二次利用したいと思ったとき、あらかじめアーティスト自身がCreative Commonsライセンスを付与しておく事によって、そのライセンスの定める範囲に従ってくれというメッセージを作品に与える事が出来るというものです。これによって、二次利用のおけるコミュニケーションを簡略化してスムーズにする事が出来るという訳ですね。

Creative Commons PV

齋藤 PVを観て頂いた所で、具体的にCreative Commonsの事を説明していきたいと思います。えーと、実は今日、何人か同僚の弁護士が客席に来てくれていまして…

吉田 おお、頼もしい。困った時はヘルプで(笑)!

齋藤 お願いします(笑)。
さて、そもそもCreative Commonsは、アメリカのスタンフォード大学のLawrence Lessigという法学者によって立ち上げられた団体です。アメリカ発ですが、今や世界中に広がっており、法律の異なる50カ国以上の著作権法に準拠しているという点が1つ大きな特徴になっています。
注意してインターネットを見てもらうと、『SOME RIGHTS RESERVED』や『CC』など、Creative Commonsのマークは実は結構色んな所にあるんです。

一番分かりやすいのがWikipediaですね。何でも良いのでWikipediaのページを開いて、下部までスクロールしてもらうと、『クリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンスの下で利用可能です』という表記を見つける事が出来ます。
Wikipediaというのは、いろんな情報を各人が持ち寄って、どんどん共同編集、バージョンアップして質を高めていくという仕組みになっている事はご存知でしょうか。情報の精度をどんどん上げていくという作業というのはつまり、元の情報をどんどん改編していくという作業になるので、著作権的には問題が発生しうる領域なんです。Wikipediaに記載された情報も、立派な「著作物」ですから、著作物の改変にあたるんですね。そこのライセンスをCreative Commonsということである程度フリーにしてあげる。そうすることで、古い情報(=著作物)の改編が可能になって、情報の精度が高められていくという仕組みになっています。
では、他にCreative Commonsライセンスがどういう所で使われているか、いくつか実例を見てみましょうか。

吉田 はい、よろしくお願いします。