【8/4-6】したため公演『埋蔵する』『ふるまいのアーキビスツ』東京/美学校公演

2023年8月4日(金)〜6日(日)


京都を拠点に活動を展開するユニット・したためが、劇作家・岸井大輔の戯曲からつくったふたつのひとり芝居をみっつの街で上演します。宣言文のようだったり、辞書の定義のようだったり。一読しただけでは上演の具体的なイメージを結びづらい戯曲が、俳優と演出の共同作業によって、したため流のポップでキュートなパフォーマンスに。戯曲のおもしろさ、演技の楽しさ、俳優の魅力を味わっていただける二本立て。全回、終演後には演出家とゲストによるトークの時間も設けます。
したための夏の旅、ぜひお付き合いください!

戯曲全文

『埋蔵する』

石に下記文字を記し、土中に埋める。

この石に刻まれた文字は戯曲です。2500年を超えたギリシャのせりふがいまだ上演されるように、何千年かの後、演劇という言葉がなくなるか今とまったく違うように理解され、作品という言葉もなくなるか今とまったく違うように理解されているにもかかわらず、この石を見つけた誰かが、この言葉を写しとり、また写し取った誰かによって、上演されるでしょう。

『ふるまいのアーキビスツ』

1 俳優を、ふるまいのアーキビストと捉えてみる。

2 アーキビストとは、アーカイブをする人のことで、永久に保存する価値のある情報を、選んで、集めて、整理して、保存して、管理して、見ることができるよう整える専門職をさす。よって、人間のふるまいを人間がやって残しても、アーキビストの仕事とは遠いとされるだろう。しかし、日本において、建物や制度や芸術作品よりも、それらを作る技術の方が事実上⻑く保存されてきている。つまり、日本でアーカイブを考えるのならば、物体ではなく、ふるまいの継承において考えられるべき事だ。それは、かつてのふるまいを、リプレゼンテーション=再演/上演可能なふるまいとして継承することを意味する。

3 ふるまいは、個人の行動だけでなく、状況における行動をさす。状況には他人も含まれる。よって、俳優は、ふるまいをアーカイブするために、集団になる必要がある。また、その状況も含めてアーカイブするために俳優以外の人も必要になる。そして、ふるまいをアーカイブするとは、動きをトレースするだけでなく、そのふるまいの意義や状況など、意味するところも含めてアーカイブすることが使命である。

4 俳優は、わざおぎという古語の当て字である。わざは技であり、おぎは招くの意味だ。即ち、神を招く技をもつものを俳優(わざおぎ)と呼んだ。そして、多くこの職業は滑稽芸や曲芸をやったという。天岩戶や神道の葬式から考えるに、日本では神を招くためにこそ滑稽な技を使ったのだろう。私は、この言葉を、消えて行くものとしての先祖やオーラのような、ある状況のふるまいに伴う意義をも含め再現する、すなわちその場に招く技をもった存在と捉える。

5 ここでいう俳優はアクターでもプレイヤーでもない。

作、演出コメント

紙の雑誌も消えていき、ゆっくり考えることがほとんど不可能な世相に、どうあれるのか、と上演芸術は尋ねられているのだと思います。

岸井大輔

ただでさえ上演ができないように書かれているふたつの戯曲が、去年おととしと二度もつづけて新しいウイルスの蔓延による上演不能に阻まれ、今年が三度目の正直。この間、ずっとずっと思い出しなおしつづけてきた、いずれも徹底してレガシーについての作品です。

和田ながら


作|岸井大輔
演出|和田ながら(したため)

『埋蔵する』
出演|諸江翔大朗(ARCHIVES PAY)

『ふるまいのアーキビスツ』
出演|長洲仁美

演出助手|坂井初音

照明(上田公演)|伊藤茶色(合同会社 犀の角)

日 時:2023年
 8月4日(金)19:00開演 終演後トークゲスト:三浦雨林(演出家・劇作家)
 8月5日(土)15:00開演 終演後トークゲスト:檜山真有(キュレーター)
 8月6日(日)15:00開演 終演後トークゲスト:岡啓輔(建築家)
 ※開場は開演の30分前。
 ※上演は80分程、アフタートークは60分程を予定、休憩込み。
 ※上演は95分程、アフタートークは60分程を予定、休憩込み。(7/3更新)
料 金:一般予約 3,000円/一般当日 3,500円/25歳以下 2,000円(予約・当日共通)
予 約:定員に達したので予約を締め切りました。当日券は立ち見席で若干数ご用意しております。(8/6)
会 場:美学校 本校(地図
     東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル3F
協 力:一般社団法人シアター&アーツうえだ(上田公演)、シバイエンジン
助 成:京都府文化力チャレンジ補助事業(予定)
共 催:美学校(東京公演)
主 催:したため

お問合せ:info.shitatame@gmail.com(したため)

★他都市の公演について

当公演は長野県上田市の犀の角、京都市中京区のUrBANGUILDでも開催されます。

上田/犀の角公演

日程:
 7月7日(金)19:00 終演後トークゲスト:荒井洋文(犀の角)
 7月8日(土)14:00 終演後トークゲスト:岸井大輔(劇作家)
会場:犀の角(長野県上田市中央2-11-20)
予約:https://shibai-engine.net/prism/webform.php?d=p7a9nspi

京都/UrBANGUILD公演

日程:
 7月28日(金)19:00 終演後トークゲスト:佃七緒(美術作家)
 7月29日(土)19:00 終演後トークゲスト:渡辺健一郎(批評家・俳優)
会場:UrBANGUILD(京都市中京区材木町181-2 ニュー京都ビル3F)
詳細:https://shibai-engine.net/prism/webform.php?d=iadfws5n

プロフィール


岸井大輔 きしい・だいすけ

劇作家。1995年より他芸術で遂行された形式化が演劇でも可能かを問う作品群を発表している。代表作「東京の条件」「始末をかく」「好きにやることの喜劇(コメディー)」。多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科非常勤講師 美学校講師 PARA主宰

撮影:守屋友樹

和田ながら わだ・ながら

演出家。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科卒業、同大学大学院修士課程修了。美術、写真、音楽、建築など異なる領域のアーティストとも共同作業を行う。2018年、こまばアゴラ演出家コンクール観客賞を受賞。2019年より地図にまつわるリサーチプロジェクト「わたしたちのフリーハンドなアトラス」始動。NPO法人京都舞台芸術協会理事長。

photo_ISAMU NAKAJIMA

諸江翔大朗 もろえ・しょうたろう

京都造形芸術大学卒。京都市内において、Uber Eats配達員として料理を運び、翌朝にはそこから出たゴミを回収する仕事を生業としている。近年では、五代目 坂東玉三郎、ダンスカンパニーのakakilike、アーティストの荒木優光、演出家の和田ながら(したため)、萩原雄太(かもめマシーン)、河井朗(ルサンチカ)らの作品に出演している。記録にまつわる作業集団「ARCHIVES PAY」所属。

長洲仁美 ながす・ひとみ

茨城県出身。京都造形芸術大学映像舞台芸術学科 映像芸術コース卒業。卒業後に、dracom、大橋可也&ダンサーズ、Marcelo Evelin、したため等の作品に出演。

したため

京都を拠点に活動する演出家・和田ながらのユニット。日常的な視力では見逃し続けてしまう厖大な細部を言葉と身体で接写する、あるいはとらえそこないつまづくさまを連ねるように作品を制作する。俳優の日常生活からパフォーマンスを立ち上げた『巣』より活動を開始。以降、主な作品に、作家・多和田葉子の初期作を舞台化した『文字移植』、妊娠・出産を未経験者たちが演じる『擬娩』などがある。

ゲストプロフィール


三浦雨林 みうら・うりん

演出家、劇作家。日本大学 大学院 芸術学研究科 舞台芸術専攻 修了。隣屋 主宰、青年団 所属。
芥川龍之介やレフ・トルストイなど既存の作品を原案に、文学作品として書かれた言葉と人によって発話された言葉の差異を際立たせる手法で劇作・演出を行う。誰かの隣に寄り添える作品づくりを目指している。2020年以降、映像・美術を中心とするインスタレーションの手法も用いた演劇作品を発表している。

Photo by Yuji Oku

檜山真有 ひやま・まある

キュレーター。1994年大阪生。2023年よりリクルートクリエイティブセンター所属。主なキュレーションに2023年『谷原菜摘子の北加賀屋奇譚』(CCOクリエイティブセンター、他)、2022年『フォールアウトファミリーズ』、2021年『オカルティック・ヨ・ソイ』(デカメロン)。主なレクチャー、ワークショップに2023年『私は嘘をつくのが好き:キュレーションのハッタリとリアルについて』(PARA)、2022年『シャッフル・ディストリビューショナル・エディトリアル・ライティングW』(愛知県立芸術大学)。今年の目標を「ゲリラ・ネイチャー・アドベンチャー」に上方修正しました。

岡啓輔 おか・けいすけ

1965年九州柳川生まれ、一級建築士、高山建築学校管理、蟻鱒鳶ル建設中。1995年から2003年まで「岡画郎」を運営。2005年、蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)着工。2018年、筑摩書房から「バベる!自力でビルを建てる男」を出版。