Menu

Home
【集中連載】EN-Tokyo 〜レコード屋とビートが繋ぐ縁〜
vol.2 アーティストインタビュー

【集中連載】EN-Tokyo 〜レコード屋とビートが繋ぐ縁〜
vol.2 アーティストインタビュー


作り手以前にまずリスナーであるという自意識

 

━━━改めて活動を紐解いていくと、06年頃から一貫して、アーティストというよりはむしろ、アーティストたちが活動しやすいプラットフォームを作るという事の方により高い意識が向けられている事が見えてきました。

自分で曲を作る時のスタンスも同じで、結局自分が聴きたいから、聴きたいものを作るというだけなんですよね。例えば、あるネタをサンプリングしたビートが既に世の中にあるのならそれを聴けば良いし、まだ刻まれていないネタがあるのならそれを聴きたいから自分で作る、というだけ。そういう意味で、作り手としてのエゴよりも、リスナーとしての欲求の方が強いんです。

━━━アーティストエゴが強いと、作りたい思いの方が大きくなっちゃって、他の音楽を殆ど聴かないというようなタイプの人もいますよね。そういうタイプじゃなくて、まず何よりも聴くことが好きなんですね。

自分でレーベルを立ち上げたり、周りの若手をフックアップしたり、というプラットフォームを作る活動も、自分が聴きたいものを聴くための手段でしかないのかもしれません。自分の好きなアーティストがCD一枚だけ出して消えていっちゃったりとか、そういう状況を小売りの現場で沢山見て来ました。アンダーグラウンドで才能ある作り手が音楽を作り続けられなくなるのは凄く勿体ない事だと思うんです。そうではなくて、もっとアーティストが活動を続ける上でのモチベーションを高められるような機会にしたいんですよね。

EN-Tokyoに関して言うと、文字どおり東京の『縁』という事なんだけど、そこから超えて海外のアーティストとも繋がって大きいムーブメントにしていければと思っているんです。そうした大きな展開も含めて、アーティスト個人のモチベーションアップに繋いげていければと。pigeondust_5

優れたリスナーを育てたい

 

━━━具体的には今後どのような展開を考えていますか?

まずは定期的に行うプロジェクトとして、コミュニティとして継続していきたいですね。そしさらには、アーティストが活動し易くするために、リスナー側を育てるという事をやっていきたいんです。『ビートミュージックって何?』という漠然としたイメージの人たちにまでもう少しきちんと説明し、広めていって、僕たちのようにアンダーグラウンドな活動をしているビートメーカーの、作品を聴いてもらえる機会を増やせればと考えています。
具体的には、ビートメーカーや最新のビートを紹介するポータルサイトとしての役割も担っていきたいと思います。2014年の現在、ネット・レーベルって凄く増えたし一般的になっているけど、結局レーベル的な活動だけだと片手落ちというか、それぞれのアーティスト・エゴを押し付ける以上先に進まないんですよね。
もう少し散り散りになっているアーティストやリスナーを繋げられるようなプラットフォームを整備してやることで、もう少し大きなムーブメントに展開していけるんじゃないかと思うんです。

━━━確かにビートやヒップホップって、音だけ取り出せば決してそう遠くないサウンドであるにも関わらず、すぐ隣の畑のアーティストを知らないというような、狭い中でのさらなる断絶が結構多いように思います。

Nujabesが好きな人とMadlibが好きな人がいて、みたいな、ビートは聴いているんだけど、中々この両者のリスナーが結びつきにくいみたいな断絶ってかなりあるんですよね。そのように、結びつきがたい断絶を埋めるようなプラットフォームになりたいというのがEN-Tokyoの大きなコンセプトの一つかもしれない。

━━━リスナーを育てる、という発想は凄く面白いし、いちアーティストでありながらそういった大きな視点で活動しているのはすごく稀少な個性ですね。

これは単に以前に読んだ本からの受け売りなんですけどね(笑)。アート、音楽のマーケットでは、買い手の感受性を育てて、物を売らないといけない、という考え方です。

━━━マーケットを自分自身で作っていくという事ですね。あるいは、ある種の啓蒙精神というか。

結局多くの人って、自分の好きなものを分かっているようで分かっていないんですよ。聴いてみたら実は好きなんだけど、単に聴こうとしていない、聴く機会がない、というようなものって凄く多い。

━━━僕も凄く共感する所があります。EN-Tokyoの公式サイトの方はコアなビートメーカーをがっつり紹介していってほしいんだけど、さすがにいきなりゼロからそこに飛び込むのはちょっとハードルが高い。だから、こうしたインタビューはじめ連載記事を通して、今まで聴いていなかった音楽を聴くための入口に役立てて欲しいという気持ちはありますね。


ページ: 1 2 3 4 5