【集中連載】EN-Tokyo 〜レコード屋とビートが繋ぐ縁〜
vol.2 アーティストインタビュー


新プロジェクト『EN-Tokyo』のコンセプト

━━━10代の頃から続けて来た『プラットフォームを作る』という活動を、シンプルに『縁』というキーワードの元で発展させたのが、今行っているEN-Tokyoという事ですね。

根っこのコンセプトはYel-oweやRAWSと同じなんです。突き詰めれば「良い音楽を産みたい。」「外に出て一緒に作れたら面白いじゃないか。」くらいの発想でしかないんですよ。
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EN-Tokyoを動かすにあたっては、この美学校っていう場所が 使えたという事もすごく大きいし、それに加えて、僕自身も元々神保町のレコード屋で働いていたという『縁』もありました。どこにどういうレコード屋があるかという土地感も馴染みがあるし、レコード屋が今どういう状況にあるのか、ということも、小売りの現場からずっと見てきていました。
レコード屋の店員としてディスク・ユニオンのジャズ館で働いていた当時思っていた事は、とにかく若いお客さんが少ないということでした。

━━━おっさんが多いんだ。

一週間店舗に立ち続けるということを二年間続けてきて、音楽ソフト(主にジャズ)の小売りの現場の色々な状況をリアルに見る事が出来た。とにかくそこで目についたのが若いお客さんの少なさで、たまに来てくれたとしても、大抵フュージョンコーナーのbob james探してるんだな、とかそういう感じで(笑)。視覚的にわかっちゃうんですよね。ヒップホップぽい格好の人が入って来たな、あ、フュージョンのBの棚見てる。視聴機を横目に、あの元ネタのアレを探しに来たんだな、とか。多分こういうのは他のレコード屋も同じだと思うんだけど。

自分のレーベルからリリースしているビートメーカーも、レコード好きという人は多いんだけど、それでも結局は、ディスクユニオンのようなチェーン店くらいしか知らなかったりするんですよね。そもそも知る手段もないし。そうした状況に対して、活気づけじゃないですけど、個人店舗のディープなレコード屋にもちゃんと皆で回って、レコード屋文化自体を盛り上げていけるような企画が出来ないかなと思ったんです。

━━━やっぱレコード屋文化にはすごく愛着があるんですね。

プラス、ビートメーカーに新鮮な刺激を与えたいという気持ちの両方ですね。さらにもう一つコンセプトがあるとすれば、『レーベルを超えたい』という気持ちがあります。日本のヒップホップ・シーンって、レーベルのカラーが凄く強いと思うんです。レーベルの色がガツンとあって、アーティスト個人のカラーは二の次という状況がある。

━━━まずレーベルによってアーティスト・イメージが決定されてしまうんですね。似たようなカラーを持つサウンドを集めることでブランディングしていくというのはレーベルの担う役割ではあると思うんだけど、それが過剰に働いてしまい、アーティストを縛っているようなイメージでしょうか。

そうです。ビート自体がレーベルをなかなか超えられない要因になっていると思います。そういう壁を超えていけるような機会があれば、ビートという音楽自体がもっと面白くなっていくんじゃないかと思うんです。
こうして考えていくと、結局僕のやりたいことは『もっと良い音楽を聴きたい』という事に尽きるんですよね(笑)。

━━━根っこの部分はすごくシンプルですね。

EN-Tokyoが、垣根を越えて良い音楽を作れるような環境になれば良いなと思っています。