【オープン講座】『(読んだはずだけど忘れてしまった)文学作品と出会いなおす講座』講師:矢野利裕

2025年7月〜2026年3月

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講師:矢野利裕より

 2025年4月に『「国語」と出会いなおす』(フィルムアート社)という著書を刊行しました。この本では、「文学」というものに対して、同じ空間で共同的に作品を読むという意義を見出しています。とりわけ国語の教科書で読んだはずの文学作品たちは、「なんとなく読んだなあ」「読んだことはないけどなんか名前は聞いたことあるなあ」という程度の共同性を持ったものです。

 多くの人が国語の教科書で一度は読んだはずの「文学」。人によってはきれいさっぱりと忘れてしまった「文学」。というか、実を言うといままであまり読んだことのなかった「文学」——。この講座は、そんな「文学」の作品たちとふたたび出会いなおし、読みなおすことを目標とします。夏目漱石、芥川龍之介、梶井基次郎、島崎藤村といった定番作家を中心に、まずはその作品をまっすぐに読み、その後、関連する資料も確認しつつ、その文学史的な背景やその作品をめぐる評論・論争なども紹介しながら、意味づけていきたいと思います。

 他文化/自文化がミックスされた表現として、アニメーション的な想像力の資源として、日本語ポピュラー音楽の祖先として、ポストトゥルースな虚構性とリアルな社会性の両方を抱えた表現として……など、古くて新しい「文学」について現代的な視点から捉え返したい/出会いなおしたいと思います。

 近代市民としてのわたしたちは、この社会のなかでどのように考え、生きていくべきか。自分たちの文化や言葉をいかなるかたちで位置づけていくか、という試行錯誤と格闘のなかにあった日本近代文学は、その社会との関りかたという点において、混迷をきわめる現在を生きるためのヒントを与えてくれるでしょう。

 講座は基本的には講義形式となりますが、参加者の意見や質問もうかがいながら進めていきたいと考えています。活発で楽しい講義になると嬉しいです。少しだけ専門的な文学論の見地も混ぜ込む予定なので、すでに読んだことのある作品であっても、まったく読んだことのない作品であっても、多くの発見があるのではないかと思います。同時にそれは、小説の基本的な読みかたを身につけることになるでしょう。

「小説を読むのは好きだけど、国語の時間は退屈だった」といった人、あるいは「国語は好きだったけど、いまはあまり小説を読まない」といった人は、ぜひ受講してみてください。

講座で扱う作品・内容

芥川龍之介「羅生門」

・芥川龍之介の文学史的位置づけをおさらいする——プロレタリア文学直前の大正期のプチブル作家として
・《語り手》と近代的自我
・「羅生門」をめぐる空間の問題
・改変されたラスト1文をめぐって

目取真俊「魂込め」

・本土/琉球という対立
・沖縄戦についてあらためて考える
・「魂込め」の舞台における空間性について
・精巧に整えられたマジックリアリズム的世界を読み解く
・祈りと忘却について考え続ける
・戦後50年目のマイノリティ文学として

夏目漱石『こころ』

・夏目漱石をめぐる評価をおさらいする——漱石神話とその解体作業
・『こころ』論争~大逆事件論争
・Kの自殺をめぐって——Kとはいったい誰なのか
・『こころ』に流れる血について考える
・明治(天皇)という時代を考える

島崎藤村「初恋」

・島崎藤村の文学的位置づけをおさらいする——ロマン主義から自然主義へ
・「初恋」の和歌的要素と西洋詩的要素
・ラヴソングとしての「初恋」
・翻訳語としての「恋愛」とロマンティック・ラヴについて
・日本語ポピュラーソングとの関連、あるいはラップミュージックまで

その他時間があれば…

梶井基次郎「檸檬」
宮澤賢治「なめとこ山の熊」
三崎亜記「ゴール」

対面授業orオンライン授業どちらでもOK

本講座は対面授業とZOOMによるオンライン授業とのハイブリッド形式での開催となります。オンライン参加の場合はご自宅の回線やマシンパワーなどご確認いただき、最新版ZOOMをインストールの上ご参加ください。

授業補助ツールとしてチャットツールのDiscordを使用します。課題提出や個別のフィードバックなど、授業時間内でフォローしきれなかった内容はDiscordを併用しながらカバーします。

授業時間だけでなくトータルで講座の場をご活用ください。
ほか、オンライン講座につきましては本校が定めるガイドラインをご参照ください。

詳 細

講 師:
矢野利裕

定 員:
12名程度

日 程:
月1回日曜開催/全10回(3月のみ月2回開催)
第1回_7/13
第2回_8/24
第3回_9/14
第4回_10/12
第5回_11/9
第6回_12/14
第7回_1/11
第8回_2/8
第9回_3/8
第10回_3/29

時 間:
各回18:30 〜 20:30

受講料:
一般:38,000円
美学校在校生・卒業生:35,000円

形 式:
対面/オンライン

会 場:

美学校本校4F音楽室(教室までの行き方)
東京都千代田区神田神保町2-20第2富士ビル4F

申込み:
申し込み受付は終了いたしました。有難うございました。

アーカイブ動画視聴に関して
講座は毎回アーカイブからもご聴講いただけます。視聴期限は2026年4月30日までとなりますのでご注意ください。

【キャンセルにつきまして】
お客様都合によるキャンセルは承っておりません。何卒ご了承ください。

講師プロフィール

矢野利裕(やの・としひろ)

作家・DJ・教員。
学校で教鞭をとるかたわら、音楽と文学を中心に批評活動をおこなう。2014年、「自分ならざる者を精一杯に生きる」で第57回群像新人文学賞優秀作を受賞。 著書に『「国語」と出会いなおす』(フィルムアート社)、『今日よりもマシな明日 文学芸能論』(講談社)、『学校するからだ』(晶文社)、『コミックソングがJ-POPを作った』(P-VINE)、『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)など。


〈オープン講座〉


映画を聴く

◆講師:岸野雄一
▷この講座では、映画における音/音楽の歴史や方法論、その効果を読み解く技術、すなわち『映画の聴き方』を身につけていきます。
授業では講師の所有する膨大な映像アーカイブをプレイバックしながら、20世紀以降の映像の発達史から、21世紀現在にまで繋がる音と映像の発展史を解読し、概念と方法論を体系化していきます。

「古典で読む 今を知るための近代史入門」

◆講師:パンス
▷本講座は、カール・マルクスやマックス・ウェーバー、福沢諭吉に至るまで、様々な「古典」を紐解きながら、近代史を「まずはざっくり」知るための入門講座です。
名前だけは知っていても中々触れる機会のないこれらの書物を通して、今を生きる私たちに連なる歴史としての「近代」を学んでみましょう。