浦丸真太郎さん(芸術漂流教室 修了生)個展のお知らせ

2023年6月2日(金)〜6月6日(火)


浦丸真太郎「メロン」


芸術漂流教室」修了生・浦丸真太郎さんの個展が6月2日(金)より日暮里にあるHIGURE 17-15 casにて開催されます。是非ご来場ください。


〝メロン〟

小さい頃から大好物である、甘く網目の入った果実。

見るだけで笑顔と唾液が溢れ、口に頬張れば嫌なことも全部忘れる位に大好きだった。

傷を縫う一本の細い糸は、僕と他者を繋ぎ合わせる。

ある人はこの果実の網目は、熟す過程で生まれた傷を治すための〝カサブタ〟であると教えてくれた。

また別の誰かは、人は傷ついた分だけ優しくなれると励ましてくれた。

沢山の傷と経験は、僕に〝こころ〟という名の栄養を与え、

細かった糸がいくつもの繋がりによって、次第に丈夫な網目へと変貌していく。

無数の傷痕が僕たちを覆い、完熟へと誘うだろう。

僕は甘美で、人を幸せにできる甜瓜へと生まれ変わる。

 


浦丸真太郎「メロン」

会 期:2023年6月2日(金)〜6月6日(火)
時 間:13:00〜19:00
会 場:HIGURE 17-15 cas(東京都荒川区西日暮里3-17-15)
休館日:会期中無休
観覧料:無料
協 力:HIGURE 17-15 cas、美学校


プロフィール:1993年佐賀県生まれ。大分県立芸術文化短期大学専攻科造形専攻卒業。
幼少期に親族である叔父から性虐待を経験する。自分自身の中に芽生える復讐心や、無意識に他者を傷つけることで心のバランスを図ろうとしていた自分に絶望し、人や社会から自ら孤立しようとしていく。そんな中、他者との関わり合いを断つ先に辿り着いたのがものづくりで、奇しくもそのものづくりが孤独だった自分と他者をもう一度繋ぎ合わせていた事に気が付いていき、以降作品制作の中で虐待経験による性的なトラウマや自己否定など、これまで自分自身が捉われてきた〝心の傷〟について考察を続ける。様々な人の身体に残る傷痕の写真を針と糸で縫い合わせた絵画や立体作品、手縫いで書き起こされた詩や自分自身の身体に他者の傷を転写していくパフォーマンス、インスタレーションなどを制作している。
主な個展に「縫合」 美学校スタジオ(東京2022)。
主なグループ展として「ホーム・ランド」ギャラリー201(東京 2019)、「他者の眼を気にして漂流する」ターナーギャラリー(東京2022)。
Instagram:https://www.instagram.com/shintaro_uramaru/
Twitter:https://twitter.com/uramarushintaro

作品協力 : 若林健、hapusakaki、手嶌春奈、河野優加美、ゆか、木村彩花、熊谷樹、小原篤人、M、佐藤寿喜、くぅ、hirabayashi riki、穂煌、そうてんぷす、岩瀬月楓、fjtkzk

特別支援: 福岡県みやま市東照寺

サポートクラブ「aloë」:nobu、Shinya Iwakiri、takahiro、senju0526、Kanamin、Takuma、tomokoro、Jay1962(https://note.com/shintaro0823/membership

●幼少期に性被害にあわれた経験を作品に落とし込もうと思った理由や思い

僕はこれまで性被害を受けたことによるトラウマや精神的な後遺症に悩まされてきました。性的なものに対する恐怖や嫌悪感、また自分のセクシャリティに対する戸惑いなどを感じて過ごしてきました。特に苦しかったのが、人間関係を上手く作れなかったことで〝過去傷つけられたから誰かを傷つけてもいい〟といった思いが無意識に芽生えてしまい、無関係な人にまで幼少期の体験の報復をしようとしていたことでした。そんな自分が抱える衝動や負の感情が一体どうやったら抑えられるのか日々苦悶するばかりでした。
しかし人と断絶していく中で興味を持ったものづくりの中に、自分のありのままの思いや感情を自然とぶつけるようになっていきました。それに興味を持ってくれる人達との間にまた新しい関わり合いが生まれていることが嬉しく思いました。最初は〝分かって欲しい〟という思いから始まったのですが、一番大切なことはそのもっと奥にある人間の生きる力強さや、前向きな心だったように思います。そのエネルギーに触れたい。そして自分の生きる力へと変えていきたいと強く感じたことが幼少期の性被害の経験と向き合い、また作品に落とし込もうと思ったきっかけだったと思います。

●今回の個展のみどころ

僕はこの2年間、自分の身体に残る傷を通して〝心の傷〟と向き合ってきました。そして自分の傷のみではなく、他者が抱える様々な傷と向き合う中で、自分と他者の傷を共に縫い合わされるように癒していく試みでもあります。作品として使用しているものは全て自分以外の人の身体の傷の写真を素材としてお借りしており、その傷にまつわる一人一人のエピソードにも今回焦点を当ております。
そして今回の個展では沢山の傷が集い、傷がより強力な網へと変化し、僕が幼少期から大好きだった果実〝メロン〟というモチーフが登場する所がみどころとなっております。

●メロンに込める思い

メロンは僕が子供の頃から大好物の果実でした。特に子供の頃はよく絵で描いていたことを覚えています。そんなメロンの網目模様には実は〝傷〟と深い関係があったのです。メロンの網目は実が大きく成長するときに全体に亀裂が入り、そこから果汁が出血のように溢れ出てきます。網目はそれを修復するための〝カサブタ〟です。成熟していく過程に残っていく傷痕が、人間も同じであると良いなと僕は思いました。メロンは網目がはっきりしてる程甘く育っていく。人間も心や身体に傷が残っているということは、人の痛みを知り優しくなれる。そんな人間的な成熟とメロンは同じなのかもしれないと。これまでずっと大好きだったメロンが〝傷〟というものを、温かくて力強いものへと変えてくれるように思いました。

●今回の個展ではどのような人に、どのようなメッセージを届けたいか

僕は身体、そして心に傷を抱えながらこれまで生きてきました。自分自身を否定し傷付け、自己嫌悪の渦にのまれそうな時もありました。また怒りや憎しみといった感情を他者に向けることで自分の心のバランスを保とうとしていた時期もあります。更にこれを読んで下さってるあなたもきっと今も疼き、傷んで止まない傷を抱えているかもしれません。そんな誰しもが抱えるあらゆる傷を今回の個展「メロン」では全肯定し、エネルギーに変化させたいと強く感じています。例えば「辛い」という言葉は〝幸せにないたい〟という願いであり、「死にたい」と嘆き叫ぶ声は〝生きたい〟という強い思いであったことに、今回傷を抱える方と対話を重ねる中で気付いていきました。そして彼らの思いや言葉には何にも代え難い、唯一無二のエネルギーで溢れています。その個人のエネルギーを他者と共有することで初めて生まれるものが、僕が幼少期の頃からずっと探し求め続けてきた〝愛〟だったのかもしれません。それはお互いを傷つけるのではなく、お互いの傷と傷とを縫い合わせていくような温かな愛だと思います。
僕とあなたの愛し合った証がこの種子でありますように。


芸術漂流教室 倉重迅+田中偉一郎+岡田裕子 Kurashige Jin

▷授業日:毎週月曜日 19:00〜22:00
「芸術漂流教室」は、倉重迅、田中偉一郎、岡田裕子を中心に、ゲスト講師も招きながら展開していきます。現代美術の領域で活動しながら他ジャンルにも軸足を持つ、無駄に経験値の高い講師陣とともに「楽しく」「真面目に」漂流しましょう。