「芸術漂流教室」受講生座談会


倉重迅さん、田中偉一郎さん、岡田裕子さんが講師を務める「芸術漂流教室」。講師それぞれが「講座内講座」を持ち、「一粒で3度おいしく、3倍以上の楽しみ方がある」講座です。2021年度は、年齢や職業の異なる8名の受講生が集合。受講生の皆さんに「芸術漂流教室」での一年間を振り返っていただきました。

※ 5/21〜28に「芸術漂流教室」修了展「他者の眼を気にして漂流する」がターナーギャラリーで開催されます。詳細はこちら

講座の受講理由

木村 木村彩花です。普段はアルバイトをしています。現代美術に興味があって色々知りたいと思ったのと、作品を作って見てもらう機会が増えたらと思って受講しました。

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栗原 栗原那津子です。会社員をしています。講座の紹介文に「アートは決してフルタイムアーティストだけのものではありません」と書いてあって、働きながら美術に関わることを考えられるのかなと思って受講しました。

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きんたろう きんたろうです。普段はアルバイトをしています。仕事をメインでやっているんですけど月曜が休みで、「芸術漂流教室」が月曜開催だったので、ちょうどいいなと思って受講しました。

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三村 三村昂生です。武蔵野美術大学油絵学科版画専攻の学生です。もともと美学校では、田中偉一郎さんのオンライン授業(オープン講座「田中偉一郎のどこでも企画アカデミー」)を受講していました。大学だと、作品について話していても、それが広い意見なのか大学の中だけの意見なのかよくわからないことがあって、大学の外に一歩出たいと思って受講しました。

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 沼です。会社員をしています。会社員をしながらも、芸術を学んで表現をしたい気持ちがあって受講しました。

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浦丸 浦丸真太郎です。社会人です。自分ひとりだけでは、まだなかなか活動できなかったので、共通の目標や目的を持った人達と出会って、グループとして動いたり切磋琢磨することが自分には必要かなと思って受講しました。

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西田 西田珠恵です。今、出版社と探偵事務所と広告会社でカメラマンとして働いています。でも、それらはクライアントから求められている写真であって、自分の意思で撮る写真をどうやって作品にしたらいいかが分からなかったので、講座で人と会ったり、授業を受けたりして、写真をもっといい作品にできたらと思って受講しました。

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山田 山田奈津子です。保育園で造形指導の講師をしています。デザインや工芸の教育は受けてきたんですけど、もともと現代美術が一番やりたかったんです。「芸術漂流教室」は、現代美術の始め方を学べて、人に見せる弾みになりそうだと思って、子どもが成人したのを機に受講しました。

レモスコープ、大喜利、即興パフォーマンス……

山田 (倉重)迅さんの授業で、「レモスコープ」の手法で映像を撮るという課題があって、すごく腑に落ちました。編集なしで、作り込まない映像を撮るんですよね。

三村 今はスマホでも自由に編集できるけど、動画撮影の最初期に出来た最低限の要素で、1分間の映像を撮るんです。与えられたキーワードをそれぞれが解釈したうえで撮影して、教室のスクリーンで上映します。その際、撮影者は伏せて、誰が撮ったか分からないままどんどん映像を見て点数を入れていくんです。上映後に、迅さんが作者にどういう意図で撮ったのかを質問するんですが、それも本当の作者じゃなくて、適当に指名します。映像の意味を考えながら見るので、見るのにも体力がいるんだなと感じます。

山田 一回見ただけで他人の作品を自分の作品として説明しなきゃいけないので、瞬発力が必要ですよね。

浦丸 迅さんの特徴は結構辛口なことです。でも、現実的なアドバイスをもらえるので、問題点も改善点も分かりやすいですね。

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三村 田中さんの授業は、だいたい授業中にお題が出るので予め用意できないですね。その時に「あっ」と思いついたことが案外使えたり、普段なら絶対に考えないようなことを考えさせられます。田中さんの授業で大喜利をやったんですが、必ずしもその場でウケればいいわけではないんですよね。大喜利ではどんなお題が出ましたっけ。

浦丸 「あったら嫌な展覧会名」とかかな。アートが関係していないお題もあった気がします。

西田 大喜利自体、正解があるものではないから、言えばいいみたいなところがありますね。瞬発力兼積極性を評価されているかもしれないです。すべってもいいから言うことが大事みたいな。そこで度胸を試されている感じがありました。

栗原 仕事が忙しく、実際に授業は受けられなかったんですけど、紙からペンを離さずに、何十分間か自分が決めたテーマで描き続けるという課題が偉一郎さんの授業でありました。LINEで共有してもらって家で何回かやったんですけど、普段やらない方法だし、考えが整理されて面白かったです。岡田さんの授業では、グループに分かれて即興でパフォーマンスをやったワークショップが印象に残っています。

浦丸 2〜3人に分かれて15分間のパフォーマンスをやったんですよね。壊れてもいい小道具を家からふたつ持ってきて、皆が持ち寄ったモノの中から好きなものを使ってパフォーマンスをするんですけど、パフォーマンスの前に、モノを擬人化するワークショップをやりました。例えば、このペットボトルが何歳で、男性で、どんな性格か……とか考えるんです。そうすることによってモノをちゃんと観察できたし、パフォーマンスにも入り込みやすかったです。

山田 15分間見られることを意識し続けることだけが縛りでしたね。私も身体を使った表現は面白いと思っていたものの実際に自分がやったことはありませんでした。でも、15分だけやれただけで腑に落ちたんですよね。この先パフォーマンスをしていくわけじゃないけど、これでOKみたいな。いろんな課題を通して、やりたかったことをちょっとでもやれることで、そういう思いを成仏させていけると感じています。

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授業でのパフォーマンスの模様

答えや考えは複数ある

山田 先生たちは、作品の批評はバシッとしてるけど、3人ともすごく愛情深い方たちだなと思います。一人ひとりをよく見てくれているのが印象的です。

栗原 その人のやりたいこととか、良さみたいなものを3人の先生がそれぞれ引き出そうとしてくれる感じが、授業を通してすごく分かりますよね。

浦丸 ひとつの作品に対して、迅さんは良い、田中さんは悪い、岡田さんは良いと言っている……みたいに、全員一緒の意見ってことがないんですよね。大学では、先生が良いと言えば良かったし、悪いと言えば悪かったので、自分と先生の考えにズレがあると悩むことも多かったけど、先生が3人いることで、考え方や答えはいくつもあって、ひとつに依存しなくていいんだと分かりました。その感覚は大事にしたいと思っています。

三村 授業は基本的に先生が1人ずつ担当するのでまだ良いんですが、中間展の講評の時は三者三様の意見をくらうんですよね。先生が1人だったら、その意見を聞けばいいと思いますが、3人違う意見だと、どうすればいいんだろうと考えざるを得ないんです。1人の意見を聞いたら、残り2人の意見を聞いてないことになってしまう場合もあるので。どうしたらいいかな、こうしたらいいかなって考えながら、次の作品にちょっとだけつなげられればいいかなと思ってやっています。

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授業で一年間つけていた「交換日記」。
内容はコラージュ、日記など様々。
1人1冊ノートをつくり、受講生同士で交換することで距離が縮まった。

木村 2021年12月の中間展「AとP」では、二人一組のペアを組んで展示をやりました。一人がアーティスト役で、もう一人がプロデューサー役になって、お互いにやりとりしながら展示を作るんです。相手が自分とは違う考えを提案してくれるので、そういうやり方もあるんだなって勉強になりました。

きんたろう 中間展は、自分のパフォーマンスを見て、めちゃめちゃ驚いてくれた人がいたので、それだけで満足です。

浦丸 「AとP」では組んだ相手と個人的にLINEや電話をして、アイディアの壁打ちを繰り返しました。制作の段階で、一人で悩みこまずにアイディアをもらえたのは大きかったです。展示の前は、先生たちが「今どこまで進んでるの?」「どういうこと考えてるの?」と、毎回一人ひとりに聞いてくれて、「それならこのアーティストが参考になるよ」とか「それは現実的には難しい」といったアドバイスをくれるので有り難かったです。

大学では、大学が卒業制作展などの機会を準備してくれますが、美学校は「なぜ展示をやるのか」といった動機から入り、自分たちで日程と会場、テーマやタイトルを決めるので、やり方を覚えたら今後自分でもやっていけるんじゃないかと思いました。もちろん自分たちで出来ないところは先生たちが教えてくれますし、アーティストとしてやっていくイメージがより明確になった気がします。

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中間展「AとP」展示風景

受講を検討している人へ

西田 受講にあたっては身構えないほうが良かったかもしれないって思います。ただ、自分のルーツをちゃんと話せるといいかもしれないです。「こういうのが好きです」とか「こういうことがあったからこういう作品を作ってます」って先生たちに伝えたほうが、今後に発展しやすい助言をもらえるかもしれないので。自分の意思でモノを作りたい人たちが集まっている場所に参加できたのは良かったですね。大喜利なんて出来る場所がないから楽しかったです。

 芸術に関心があっても機会がなかった人、ブランクがあるような人も、授業の中で先生や生徒と関わりを持つことで、自然と自分のしたい表現を見つけて出来るようになると思います。

三村 逆に、何かを洗練させようと思っている人はあまり向いていないかもしれません。「芸術漂流教室」は、尖っていくというより広げていく感じがあるので。入ったら入っただけ、いろんなことをやれるけど、受講のハードルは低いです。

山田 でも先生たちは本気でしゃべってくれていますよね。

三村 そうですね。小手先じゃないところで話せるし、クリティカルなことも言ってもらえます。

浦丸 授業では、結構みんな食い込んだ質問をするし、1時間近く1人の受講生の作品について話したりすることもあります。どんな人でも入っていいんじゃないかなと思うし、仕事をしていて忙しい人も、無理がない範囲で受講できるよう先生たちがアドバイスをくれます。受講すれば誰でもよりアートに近くなる一年が送れると思います。

きんたろう 講座を受講して、よかったにゃ!

2022年3月21日 収録
聞き手・構成=木村奈緒 写真=皆藤将


芸術漂流教室 倉重迅+田中偉一郎+岡田裕子 Kurashige Jin

▷授業日:毎週月曜日 19:00〜22:00
「芸術漂流教室」は、倉重迅、田中偉一郎、岡田裕子を中心に、ゲスト講師も招きながら展開していきます。現代美術の領域で活動しながら他ジャンルにも軸足を持つ、無駄に経験値の高い講師陣とともに「楽しく」「真面目に」漂流しましょう。