月イチで開催されている内部企画「卒業生の話を聞いて飲む会」。
去る12月11日、初となる音楽クラス卒業生回として、映画音楽家の有田尚史さんを囲んで開催されました。
■『アーティスト』から『映画音楽家』へ
2007年に美学校の音楽講座(※当時は映画美学校・音楽美学講座)を卒業後、映画音楽家として活躍する有田尚史さん。
ネット上で賛否を引き起こした『先生を流産させる会』や、夏帆が主演を務める『パズル』など、ショッキングな話題作を多く手がける気鋭の映画監督・内藤瑛亮とがっちりタッグを組み、ほぼすべての音楽を手がけています。
映画音楽はなによりもまず映像ありき。自分のための音楽ではなく、映画のため、監督のための音楽を作らなければなりません。
元々はバンド活動などで自分のための音楽を作っていた有田さんですが、
『監督の頭の中で鳴っている音を如何に具現化するか?』
という映画音楽ならではの面白さに気付いたとのこと。
映画音楽に限らず、クライアントワークにおいて人間性やコミュニケーション能力は非常に重要。その点で有田さんのおおらかな人柄は、クライアントから「この人なら頼みやすいな」と思わせるものがあります。
ナイン・インチ・ネイルズやWARP系の電子音楽などを好む有田さんは、ロック色の強いダークなエレクトロニック・ミュージックが最も得意な分野。そうした強みはそれとして生かしつつも、何でも作らなければいけない映画音楽においては、様々な音楽的挑戦が求められます。
古屋兎丸原作の最新作『ライチ☆光クラブ』においては、美しいパイプオルガンによる賛美歌なども手がけています。
映画音楽においては『引き算』が非常に重要。音楽だけで聴いて良いものでも、映像に対してうるさ過ぎるというケースも往々にして起こります。そうした場合は惜しまずにばっさりカットしていくそうで、カット前後の音楽を比較しながら、どのように削っていったかを解説をして頂きました。
また、映像が持つスピードに音楽のテンポ感を併せていくことも必要です。人物の動き、ゆっくりパンしていくカメラの動きなどなど、画面の中に溢れる様々な情報から『映像のBPM』を読み取ること。それに対して適切な回答を具体的な音楽でしめしていくこと。映画音楽家としての腕の見せ所のひとつと言えるでしょう。
この日の料理はこんな感じ。事務局・皆藤さんによる小料理屋顔負けの品々にお酒が進みます。
個性的な講師陣に加え、好きな音楽も年齢も違う様々な受講生との出会いが美学校の大きな魅力だと語る有田さん。有田さん自身、受講していた頃の同期とは今でも音楽関連やプライベートでも付き合いが続いており、音楽と生涯関わっていく上での財産となっています。(私も有田さん達とは在校時代によく朝まで飲みに行っていました笑)
現在、有田さんは美学校・音楽講座のいくつかのクラスにてアシスタントスタッフとしてお手伝い頂いているほか、本校講師・横川理彦さんの元で弦楽のアレンジなどを勉強しています。彼の作品に興味を持った方は、お気軽に美学校にいらしてください。お酒好きの有田さんと授業後に飲みに行きましょう。