【レポート】「FUSION〜間島秀徳 Kinesis/水の宇宙&大倉コレクション〜」展


文=木村奈緒 写真=皆藤将


ホテルオークラに隣接し、サントリーホールや虎ノ門ヒルズからもほど近い大倉集古館。現在、同館で「FUSION〜間島秀徳 Kinesis/水の宇宙&大倉コレクション〜」展が開催されています(〜2021年8月15日)。展示されているのは、当校「超・日本画ゼミ」講師・間島秀徳氏の作品と、大倉集古館のコレクション。間島氏が「水の変成」をテーマに描き続けてきた《Kinesis》連作を中心とした近作と、中世から近代の古典美術を併置する異色の試みです。

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同館は、明治から大正時代にかけて活躍した実業家・大倉喜八郎(1837〜1928)が大正6年(1917)に設立。日本で最初の財団法人の私立美術館で、「喜八郎が生涯をかけて蒐集した日本・東洋各地域の古美術品と、跡を継いだ嫡子喜七郎(1882~1963)が蒐集した日本の近代絵画などを中心として、国宝3件、重要文化財13件及び重要美術品44件を含む美術品約2500件を収蔵」しています(公式サイトより)。

中国古典様式の建築が存在感を放つ同館。平安神宮や築地本願寺などを手掛けた東京帝国大学教授・伊東忠太博士による設計で、国の登録有形文化財に指定されています。2019年には、約5年半かけた改修工事を経てリニューアルオープン。東京の中心地であることを忘れるような建築も見どころのひとつです。

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大倉集古館外観

展示内容

地下1階、地上2階の全館を使った本展示。1階には間島氏の《震災後三部作》が一堂に。常設展示の如来立像(重要文化財)を中心とした構成は、鎮魂の空間のようでもあります。間島氏の作品と並ぶのは、川合玉堂《奔潭》、横山大観《瀟湘八景》などの名品コレクション。

こうして同じ空間で見ると、間島氏と玉堂らの作品に不思議と連関が感じられ、古美術が息を吹き返したように生き生きと目に映ります。展示を担当された同館の田中知佐子主任学芸員は、当初、革新的で鮮烈な印象の間島氏の作品に囲まれて、古美術が埋もれてしまうのではと心配したものの、互いに引けを取ることなく並んだ作品を見て、間島氏の作品も日本画の系譜につらなるものだと確信したとのこと。間島氏も、これまでことさらに日本画を意識してこなかったぶん、本展では発見が多かったと振り返ります。

間島秀徳《Kinesis No.511(requiem)》

如来立像を挟んで展示された間島氏の作品

川合玉堂、横山大観の作品と間島氏の作品が並ぶ

続く2階では、間島氏をはじめ、多くの美大生が模写をしてきた国宝《随身庭騎絵巻》、墨の表現が見事な伊藤若冲《乗興舟》や、本展にあわせて描かれた間島氏の新作《Kinesis No.749(sansui)》などを展示。蟹やカマキリを模した江戸時代の《自在置物》を間島氏の作品に配置した、コラボレーションならではの楽しい展示も。地下は間島氏の作品を中心に構成され、不定期で間島氏が公開制作を行っています(在廊日は本展公式Twitterで発信されています)。

曽我二直庵《龍虎図》を挟む
間島秀徳《Kinesis No.719 (mount yun)》《Kinesis No.720 (vortex)》

伊藤若冲《乗興舟》

間島秀徳《Kinesis No.699 (cosmic flow)》
伊藤若冲《乗興舟》から流れが続いているようにも見える

写真右より鈴木其一《山水図》、谷文晁《夏景山水図》と、
これらの作品に着想を得た間島氏の新作《Kinesis No.749(sansui)》
普段とは手法を変えて、木炭で山水風に描きはじめた

《自在置物 蟹》と《Kinesis No.697 (cosmic cuboid)》

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《籬に葡萄図》(江戸時代)
6曲1双屏風。葡萄の実や葉の部分は、塗り重ねて盛り上げた胡粉に金箔を貼る「盛り金箔」の技法が用いられている

地下1階の展示
中央が公開制作中の作品

間島氏が一貫して取り組んできた《Kinesis》シリーズと、古美術の名品を組み合わせることで、「日本画」を過去から現在に連なるものとして捉え直すことのできる本展。心を和ます対象でもあり、ときに驚異として圧倒的な力を持つ自然を画家がどう捉えてきたのかを考える契機にもなる、意欲的な企画です。今夏、ぜひお出かけください。

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間島秀徳氏

展覧会情報

会  期|2021年6月15日(火)~8月15日(日)
       ※ 一部作品の展示替を行います
    【前期】6/15(火)~7/18(日)【後期】7/20(火)~8/15(日)
開館時間|10:00~17:00(入館は16:30まで)
休  館  日|毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日) 
入  館  料|一般:1,300円/大学生・高校生:1,000円/中学生以下無料 
                   ※ 武蔵野美術大学の在学生は、学生証の提示により500円
主  催  等|【主催】公益財団法人 大倉文化財団・大倉集古館
     【後援】武蔵野美術大学
     【協力】(株)ホテルオークラ、大成建設(株)
詳  細https://www.shukokan.org/exhibition/


超・日本画ゼミ(実践と探求) 間島秀徳+小金沢智 Majima Hidenori

▷授業日:毎週土曜日18:30〜21:30(毎月第三週は日曜日13:00〜17:00)
本講座では自立した作家として歩み出せるように、制作実践のための可能性を探究し続けます。内容は基礎素材論に始まり、絵画制作に必要な準備の方法を習得するために、古典から現代までの作品研究等をゼミ形式で随時開催します。