「ドロペイ」受講生インタビュー


絵画の制作を行う「生涯ドローイングセミナー」(講師:丸亀ひろや(+OJUN+宮嶋葉一))と「ペインティング講座 – 油絵を中心として〜絵を見て、考えて、描く そして自分の絵を描く〜」(講師:長谷川繁+ゲスト)。もともと講師同士のつながりがあったことから、「ドロペイ」(ドローイング+ペインティングの意)と称し、合同で修了展を開催したこともある両講座。本稿では、ふたつの講座を受講した「ドロペイ」受講生・修了生のみなさんに、受講理由や、ふたつの講座を通して培った絵との向き合い方などについて話を聞きました。

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写真左より王蕾さん、WAKOさん、イトウコウヘイさん、宮崎武彦さん

王 蕾  Wang Lei|中国四川省成都市生まれ、神奈川県在住。2013年水彩画を中村愛氏に師事。2020年から2023年まで美学校にて「造形基礎Ⅰ」「生涯ドローイングセミナー」「ペインティング講座」の各講座に在籍。主な個展に「人煙」(Gallery Blue3143 、2024年)、「Just Around the Corner」 (美学校スタジオ、2023年)、「水彩個展」(Gallery HANA下北沢、2020年)など。Instagram @wanglei_heiheihei

WAKO|1994年生まれ。神奈川県藤野町育ち、東京在住。2021年度「生涯ドローイングセミナー」、2022〜2023年度「ペインティング講座」受講。COVID-19のパンデミックのなかで制作をはじめ、ノーリーズンに描いている。2025年1月9日〜13日に、Solo Exhibition「’taidi people」をGallery Blue 3143にて予定。Instagram @wako__47

イトウコウヘイ|愛知県出身。幼少時からなんとなく絵を描いている。置かれた物とその空間、物と見る人の間にある空間、遠景と近景、そして時間を1枚に込めたいと思って描いている。2021年二人展「反芻している」新宿眼科画廊。本業は企業ブランディング専門のデザイナー、合同会社デザイン経営代表。Instagram @koheiito.art

宮崎武彦|保険代理店 店主。2019年10月~2020年3月「中ザワヒデキ文献研究」受講。2021年10月~2024年3月「ペインティング講座」受講。2024年5月~「生涯ドローイングセミナー」受講。

美学校との出会い、受講理由

イトウ 美学校を知ったのは10年以上前です。銀座の奥野ビルという、ギャラリーがたくさん入ったビルで美学校のチラシを見て、面白そうだなと思って名前だけは覚えていました。独学で絵を描いてたんですけど、今の時代、テクニックはネットで探せば見つかるじゃないですか。美学校は面白そうな人や情報が集まっているし、カリキュラムがしっかりしたスクールとは真逆で、あれこれ言われなさそうな雰囲気がいいなと。講座を見学したり修了展を見たりして、「生涯ドローイングセミナー」の受講を決めました。

 私はカルチャーセンターのようなところで水彩画を7年ぐらい勉強していたんですが、描くのがいつも同じようなモチーフで、面白くなくなっていました。それでもう少し違うところに通いたいと思ってネットで検索していて美学校を知りました。募集要項を請求したけどなかなか返事がこなくて、商売っ気のないところだなと(笑)。事務局のスタッフからは「造形基礎Ⅰ」の受講を勧められたんですが、2講座受講のほうがお得感があるので、「造形基礎Ⅰ」と「生涯ドローイングセミナー」を受講しました。見学はしなかったですが、どちらも受講して大正解でした。

宮崎 自分は、書店で美学校の本(『美学校1969-2019:自由と実験のアカデメイア』)を見てすごく面白そうだと思ったのが、美学校を知ったきっかけです。もともと美術に興味があって、展覧会を観たり本を読んだりはしていましたが、絵を描いたことはまったくありませんでした。そんな自分も絵を描いてみたいとスタッフの方に相談したところ、「10月からはじまる講座があるから受けてみたらどうですか」と言われて、それが「ペインティング講座」でした。絵を描いたことのない自分のような人間も受け入れてもらえて、美学校の敷居の低さというか、懐の深さを感じています。

WAKO 私は、コロナのパンデミック中に絵を描きはじめて、友人と一度展示を企画したことをきっかけに、「絵を描く」ことをもう少しやってみたいと思ったんです。ただ、美大出身ではないので、絵を描くことの専門性をどう学ぶのか分かりませんでした。ある時、ペインターの方たちによる対談本を読んでいたら、その中のひとりに「美学校出身」と書いてあったんです。ネットで美学校を調べてみたらウィキペディアに「倒産の危機が3回あった」とか書いてあったり、立ち位置が面白いなと(笑)。O JUNさんの講座紹介文(事務局註:現在は丸亀ひろやさんの文章)に惹かれて、「生涯ドローイングセミナー」の受講を決めました。

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「生涯ドローイングセミナー」から「ペインティング講座」へ
「ペインティング講座」から「生涯ドローイングセミナー」へ

 生涯ドローイングセミナー」を修了したあと、自分の絵を「作品」にするにはどうしたらいいんだろうと迷っていました。ドローイングは線で描くので、どうしても面がないんですよね。その頃ちょうどWAKOさんともう1人のクラスメイトが「ペインティング講座」の見学に誘ってくれたんです。私はずっと水彩をやっていたので、油絵には少し抵抗があったんですけど、とりあえずついていくか、と。

WAKO 確かに、全然乗り気じゃなかったよね(笑)。

 でも、長谷川さんと話をしてみたら、それまでの私の迷いが全部解決しそうに思えました。それで「ペインティング講座」に通ってみることにしたんです。結果的に受講して本当に良かった。全部結果オーライです(笑)。

WAKO 先ほどの話と似ていますが、長谷川さんのインタビューと募集要項の文章がすごく面白くて、どんな授業なのか見てみたいという気持ちがまずありました。油絵は殆どよく分かっていなかったのですが、長谷川さんが「油絵が一番自由度があって楽しいよ」と良い顔をして言うので、やってみたいと「ペインティング講座」に申し込みました。

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イトウ 僕は王さんに「ペインティング講座」を勧められました。「イトウさんに向いてると思うよ」って。

一同 (笑)。

イトウ 実際に僕も「ペインティング講座」には興味があったので、長谷川さんに会いに行って作品を見てもらったら「光とその空間に興味があるんですね」って言われたんです。本当にその通りで、自分でも気づいてないような、自分の中にある「こういうことやりたい」という部分を汲み取ってもらったうえに、それを今後どうしていくかといった話もできたので、迷わず受講しました。

 長谷川さんは、その人自身も気づいていないような小さいつぼみでも、その人の特徴を見つけて引っ張り出してくれるんですよね。長谷川さんが声をかけてくれることによって、通り過ぎずに、もう少しフォーカスして考えてみようかなと思えます。

WAKO 生涯ドローイングセミナー」でも、みんないろんな絵を描くんですが、「ペインティング講座」はより自由度が高いというか、それぞれが本当に違う絵を描いている感じがします。見学に行ったときも、受講生の絵の幅の広さに面白いと思ったことを覚えています。

宮崎 自分は皆さんと逆で、最初に「ペインティング講座」を受講して、次に「生涯ドローイングセミナー」を受講しました。王さんがおっしゃったように、長谷川さんは一人ひとり教え方が違うんですね。自分の場合、油絵はまだ早いと思われたのか、最初の半年間は鏡を見て自分の顔を描きなさいと言われました。それも油絵ではなく鉛筆で、です。その次は、外に行って木を描いてきなさいと言われ、描いていて面白いなという感覚がつかめはじめた頃に、じゃあ今度はこれを油で描いてみたら……という感じで進んでいきました。

ペインティング講座」での3時間は至福の時間でしたね。仕事や嫌なことを忘れて集中できました。ただ、自分は忙しすぎるのかズボラなのか、授業以外では絵を描いていなかったんです。それが「生涯ドローイングセミナー」を受講してから、より気軽に描けるようになって、自分の中でも変化が生まれてきたのかなと思います。

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絵を見るのも描くのも面白くなる「ペインティング講座」

WAKO 長谷川さんは、王さんが言ってくれたとおり、その人の面白そうなところを絶対に見過ごさない目の鋭さがあるよね。

 自分が自信満々なところは、長谷川さんはあまり評価しません(笑)。逆に自信がないところを面白いんじゃないですかって言ってくれます。そのうえで、似たようなスタイルの作家を教えてくれるので、視野を広げることができました。

WAKO 自分以外の受講生と長谷川さんとのやり取りも、聞いていて面白いんです。2年継続して受講する方も多いので、色んな方の2年後までの作品の変化を見れるんですが、自分とは方向性が全然違う絵でも、たくさん発見があります。

王 みんな大体絵が変わりますよね。

WAKO 私は「ペインティング講座」を受講してから、とにかくたくさん絵を見に行くようになりました。行けば行くほど、絵が見えてきて面白いし、描き方のコレクションが自分の中に溜まっていくんですよね。「ペインティング講座」を受講したことで、絵を見るのも描くのも、どちらもどんどん面白くなりました。

イトウ 授業では、毎週30分ぐらいマンツーマンで長谷川さんと絵について話すんですけど、やっぱり絵を描いてこないことには話しても意味がないというか、描けば描いただけ長谷川さんも返してくれるんですよね。この間、一生懸命描けた絵があって、これは結構いいんじゃないかと思って持っていったら「これはちょっと描きすぎたね」と言われて。そう言われると、確かに絵が止まっちゃってる感じだったんです。講師が必ず正しいと言うつもりはないですが、長谷川さんや受講生に見てもらうことで、自分も他人の目線で絵を見られるようになる感じがあります。

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描きたいものを明確にする「生涯ドローイングセミナー」

イトウ  対して「生涯ドローイングセミナー」での授業は、描きたいものを見つけたり明確にする作業という感じがありました。これは丸亀さんに言われてつくったものなんですけど、自分が興味のあるものや惹かれるものを集めてスクラップしているんです。そうして自分の“レファレンス”をつくるんですね。これは3年くらい前のものですけど、今見るとドンピシャなんですよ。僕の場合は人間が出てこない。自分は人間じゃなくてビルとマグカップを描きたいんだということが、レファレンスをつくることによって明確にわかりました。

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イトウさんのレファレンス

イトウ ドローイングは作品を作るためではなく、自分が発見するために描いているので、今も油絵を描いていて、自分が何を描きたいのか見失いそうなときには、ドローイングに戻って何を描きたかったのか思い出す作業をします。逆に言うと、ドローイングは完成させちゃダメという感じがあるので、それはそれで苦しさもありました。ペインティングは、1枚の絵を仕上げるからスッキリするんですが。

宮崎 自分の場合は受講の順番がイトウさんとは逆なので、そのあたりの感覚が違うかもしれないですね。ペインティングは1枚の絵にすごく時間かけるから、それだけをやっているとどうしても幅が狭くなってくるんですよ。ただ、ドローイングをやり始めてから、自分のやりたいものがどんどん出てきて、確実に幅が広がりました。

WAKO すごくわかります。受講の順番はどちらでもいいと思いますが、ドローイングとペインティングは、私の中で立場が異なります。ペインティングで煮詰まってうまくいかない絵ばかり生まれる時に突破口になるのはドローイングなんです。一度小さいサイズと軽さに戻ってエスキース的に描きだすと、描きたいものが色々あるじゃんって、シンプルな動機に戻れるんです。ライトにたくさん描くリズムが体内にあるのは、すごくありがたいです。

 良いペインティング作品をつくるために、小さい紙でもオイルパステルで描くようにしているんですけど、そうすると画面が満杯で、線だけのときの軽やかさが失われているんですよね。線で描いていたときのほうが自由で生き生きしているんですよ。ドローイングの良さをペインティングでどう生かすのかが課題です。

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何をどう描くか/コントロールできるのは50%でいい

生涯ドローイングセミナー」も「ペインティング講座」も、何を描くかは自分で探すんですよ。

WAKO 長谷川さんは、絵には「何を描くか」と「どう描くか」の2種類しかないとよく言っていて、「何を描くか」には一切言及しないんです。 否定もしなければ肯定もしないというノンジャッジな態度です。それは受講生一人ひとりを作家としてリスペクトしているからでもあるだろうし、絵を描く以上、そこは自分でやってくださいという、いい意味での手放しでもあると思います。

 長谷川さんは、油絵を描くにあたって必要な材料や、キャンバスの張り方は教えてくれますが、あとはもうどうぞ好きなように、という感じです。何をどう描くか自分で探すしかないから困ってます(笑)。でも、何をどう描くかを長谷川さんが言ったら、それは長谷川さんの作品になってしまうし、自分で自分の絵を探したほうが印象深いものになるんですよね。

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「生涯ドローイングセミナー」「ペインティング講座」2022年度合同修了展での王さんの作品

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「ペインティング講座」2023年度修了展「十二景」でのWAKOさんの作品

イトウ 丸亀さんは、授業中に結構良いことを言うんですよ。

一同 (笑)。

イトウ そのうちのひとつに「コントロールできるのは50%でいい」という言葉があって、自分が100%完璧にコントロールできたら面白くないし発展もないというような意味なんですけど、それはペインティングを描くときにも意識しますね。自分の性格的に、本当はもっときっちり写実的に描きたいと思うときも、あえてそういうことをしないで余白を残すとか。まさにコントロールしすぎないという感じです。

WAKO 丸亀さんが「ドローイング自体が考える行為だ」って言っていたことは、ずっと鮮明に残っています。考えてから描くんじゃなくて、描くことそのものが考えることだと。

イトウ 「視覚的にただ美しいのか、その奥に何かあるのか」もよく言っていましたね。「網膜的な快楽」とも言ってましたが、視覚的にただ美しいということであれば、その中で楽しむこともできるけど、何か表現したいことがあるのであれば、その次のレベルを目指さないといけないよねと。僕は最初、抽象画を描いてたんですけど、「ひとまず抽象画をやめた方がいいよ」と言われたんです。抽象をやるにしても、取っかかりとして具象を持っておいた方がいいと。そのことも「視覚的にただ美しいのか、その奥に何かあるのか」の話につながるんですね。

宮崎 自分の場合、ペインティングの癖がついているのか、絵を描き込んでしまって、丸亀さんに「そこまでしなくていいよ」と言われることがあります。イトウさんがおっしゃったような、自分でコントロールできないものをつくる面白さは、「生涯ドローイングセミナー」を受講するなかで感じるようになってきました。

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「生涯ドローイングセミナー」「ペインティング講座」2022年度合同修了展でのイトウさんの作品

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「ペインティング講座」2023年度修了展「十二景」での宮崎さんの作品

これからの課題

宮崎 自分は自転車をずっとやっていて、今年の5月、講座がはじまる前に茨城県の鹿島から青森県の八戸まで自転車で800キロ走ったんです。その時の様子を動画で撮っているんですけど、これを絵画的に表現できないかなと思って丸亀さんに相談しています。小さい紙では難しいと思うので、自分が踊れるぐらいの大きさの画面で、自転車に乗っているときに感じた風の感覚や動きの感覚をドローイングで表現してみたいなと。それがこれからの課題です。

WAKO 面白そうですね。私は、仕事の片手間で絵を描くところから始まったんですが、やればやるほど絵が面白くなってきて、今は絵が自分の真ん中にあります。今月からアーツカウンシルの支援を受けて、初めてのスタジオを借りられることになったので、制作に没頭できることがとても楽しみです。なんというか、美学校に来て描くのは楽なんです。自宅で描くと、つい違うことをしたり、メールの返事を書いたりしてしまうけど、ここだと没頭して制作できるし、講師からフィードバックがもらえます。でも、自分の絵なんだから、やっぱり自分で気づかなくちゃいけないなって。

イトウ 僕はこれからずっと絵を描いていくことは自分の中で決まってるんですけど、今年修了したらどうしようかなって。家では油絵が描けないんですよね。手元で描くだけじゃなくて、離れて見たりもしたいし。今のWAKOさんの力強い言葉を聞いたらやっぱりアトリエが必要……。

WAKO でも、私も(受講生向けに開講している)ヌードデッサン会に参加する予定だし、今後も年に何回かは作品を持って授業にお邪魔しようかなとも思っています。自分が受講生だったときも、そうやって作品を持ってきてくれる修了生のおかげでいろんな作品を見られたし、いきなりさようならじゃなくて、時々戻ってこれるゆるさもありがたいです。

 私は考えることがあまり得意じゃないんですけど、これからは自分が何を表現したいのか、もう少し深く考えて勉強したいと思っています。去年1年間、講座を受けていない間もモチベーションを保つために個展を開催して、そのときも本当に長谷川さんにお世話になりました。でも、WAKOさんが話していたように、自分の絵なんだから、いつまでも長谷川さんや丸亀さんにおんぶに抱っこではダメで、自分の目で判断できるようにならないといけない。そのためにも、もっと勉強しないといけないと思っています。

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受講を検討している人へ

イトウ  生涯ドローイングセミナー」と「ペインティング講座」を受講して良かったことはたくさんありますが、ひとつ挙げるとしたら、いい意味でエゴイストになれたことですかね。他人の反応がまったく気にならないことはないけど、まずは自分が描きたい絵を描くために頑張ろうと思えるようになりました。どこかに答えがあるんじゃないかとか、権威的なものに認められるという考えはなくなりましたね。無責任にいっぱい描いて、あとは死ぬだけです。

WAKO めっちゃいいですね。講座を受講して、私は長期的に絵と向き合えるようになってきたかもしれないです。絵を描くことそのものと純粋に向き合えるというか。美学校は本当に多様なキャリアやバックグラウンドの方がいて、それゆえの心地よさがあって、もっといい絵を描きたいなと思わされます。

 私は講座を受講して、寛容的になったと思います。カルチャーセンターで習っていたときは、美しいとされるものが限られていたけど、美学校に来たら、いろんな可能性が見えるんです。自分が好きかどうかは別として、多様な価値観に抵抗がなくなって受け入れられるようになりました。それはすごく良かったと思います。

宮崎 自分は美学校に来るまで、言葉と数字の世界でずっと生きてきたと感じています。仕事はまさに言葉と数字の世界です。だけど、年をとるとそれに限界を感じるんですね。一方で、絵や自分の心といった部分は、老化を感じる必要のない世界なのかなと思うんです。だから、絵を描くときは、なるべく言葉や数字といった嘘くさいものを使わずに表現したい。それが今の自分の課題ですね。ビジネス社会も今でこそ多様性と言っていますけど、あるひとつの目標に向かっていくという意味では、言葉で言っているほど多様じゃないんですよ。こういう場所に来てみてこそ多様性の本質がわかると思いますし、大上段に言わせてもらえば、自ら創造することによって人生がもっと豊かになると思うので、ぜひ多くの人に入ってきてほしいです。

2024年10月2日収録
取材・構成=木村奈緒 写真=皆藤将


生涯ドローイングセミナー 丸亀ひろや(+OJUN+宮嶋葉一) Miyajima Yoichi

▷授業日:毎週木曜日 18:30〜21:30
Drawing「線を引く。図面」などを意味します。美術の世界では、紙などに鉛筆やペン、水彩などで描かれた表現形式を言います。描ける材料ならどのような画材でも持参してください。毎回ドローイングの制作を行います。


ペインティング講座 – 油絵を中心として 長谷川繁

▷授業日: 昼枠 毎週木曜日13:00〜17:00/夜枠 毎週木曜日18:00〜21:00
油絵を中心としながらも、アクリル絵の具、水彩なども含めて幅の広い表現を試みていきながら素材自体も自分で選んで絵を描いていきます。絵を描くのと同時に「私は何故絵を描くのか?」と「どのような絵を描きたいのか?」の両方を考えながら絵に向かっていきましょう。