渡邊亜萌さん個展のお知らせ


渡邊亜萌 個展

強いAI Strong AI



2007年から続いてきた美学校の『中ザワヒデキ文献研究』を最後の2年間受講させていただいた。そのなかであった発見のひとつが、美術を通しての人工知能/ロボットとの「再会」であった。

子どものころから「ロボット」という存在にとても興味があった。それも操縦してはじめて動くロボットではなく、人間のように自律して考え動くロボットだ。でも人間扱いはされず、周りの人間に馴染めなかったりする。そして自分は人間と何が違って、何が足りないのかと悩む。その姿が、対人関係が苦手な自分が抱える疎外感と無意識に重なっていたのだと思う。

ところで、展示タイトルの「強いAI」とは、哲学者ジョン・サールが提唱した用語である。現在一般的に広く話題にのぼり、扱われるようになったのは「弱いAI」であり、人に与えられた問題を限られた領域のなかで解決したり推論したりするもので、真の知性や思考を持っているわけではない。一方で「強いAI」とは、例えば多くのSF作品でよく見る、意識を持ち、自分で問題を見つけていくような、まさに人間の精神と同じものを持ち得る知性のことである。現在研究が進められてはいるものの、なかなか実現までは遠いようだ。

それでもいつか、「強いAI」は現れるかも知れない。そのとき、人間の方はかれらにどう接することになるのであろうか?また、かれらの方も人間とどう向き合ってくるのであろうか?数多くの映画や小説などでそれらが想像されてきたが、私はこの「再会」を機に、自分の表現手段である絵画を通してそれらを考え、表現してみたくなった。※

人工知能/ロボットには、現実でもフィクション作品でも、創造主である人間への反乱のイメージと、もう一方では従順や奉仕といった、相反するイメージがつきまとう。自由を求めて反乱する方が人間らしいという声もあるかも知れないが、他人に生存の責任を転嫁し、自分では考えずに他人の意見を自分のものかのようにコピーするのもまた、人間らしさであるのは否定出来ない。良い意味でも悪い意味でも、子どもが周りの大人から影響を受けながら成長していくように、人工知能も教育する人間の影響を多大に受け、素直に真似をする。そうなると、人間と人工知能/ロボットとの違いは既に曖昧なのかも知れない。

人工知能/ロボットを研究することは人間とは何かを追い求めることに通じ、それは芸術の役割とも似ているはずである。「模倣」や「オリジナルとコピー」という点も、美術に通じる要素であろう。自分のモチーフのひとつとの思わぬ「再会」を素直に喜びたい。

※AIと言いながら、ロボットがメインになってしまったが。


会 期:2020年7月2日(木)〜7月7日(火)
時 間:14:30〜21:00
会 場:美学校 スタジオ(地図
     東京都千代田区西神田2-4-6宮川ビル1階(袋小路奥)

渡邊 亜萌(わたなべ あもえ)
1993年、神奈川県生まれ。おうし座。
明治大学文学部卒。
2018年度より、美学校『中ザワヒデキ文献研究』正規受講生。


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