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【レポート】2020年度「特殊漫画家-前衛の道」修了展「SOUL OLYMPIC」

【レポート】2020年度「特殊漫画家-前衛の道」修了展「SOUL OLYMPIC」


文=木村奈緒、写真=皆藤将、木村奈緒


2021年4月17日〜21日に「特殊漫画家-前衛の道〜商業漫画と特殊漫画-そのあいだ〜」2020年度修了展
SOUL OLYMPIC」が開催されました。受講生の作品が所狭しと並んだ圧巻の展示の模様をレポートします(展示写真はスライドショーです。写真中央にカーソルをあわせると再生マークが表示されます)。

美学校本校の中教場で開かれた本展。受講生の松田光市さんによる等身大のひとがたがインパクト大。入口からしてすでに溢れ出るカオスを感じます。

展示全景。ほとばしるエネルギーがすごい。ド◯・キホーテの圧縮陳列にも負けません。

リキヤ( @93bWweEJLJhuppq )さんの作品。めちゃくちゃかっこいい。「しみ」から展開していく漫画も面白い。

中田真生央( @ushirogami )さんの作品。すべて手描きとのことで圧巻。コラージュと写真もめちゃくちゃいい。

田中紀衣( @Kie_dahuman )さんの作品。今描くのにハマっているというレコジャケ、講座で描いた漫画、スケッチブックを展示。同人誌の販売も。絵の上手さに感嘆。様々なタッチの絵で、見応えがある。

漫画雑誌アックスで連載を持つ松田光市さん( @ttu_ko )さんの作品。松田ワールドがたまりません。モノクロもカラーもかっこいい。

出川ケイスケさんの作品。3枚並んだキャンバス作品は存在感があり、異彩を放っている。

 

講座は「しのぎ」がテーマ


驚きなのは、これだけの作品が並んでいながら、受講生が以前から漫画を描いていたわけではないこと。むしろ受講して初めて漫画を描いた人のほうが多いそう。こんなに漫画を描けるようになるものですか?という質問に対して、根本さんは「描けるようになるんだよね」との答え。

といっても、講座では漫画の描き方を教えるわけではなく、カリキュラムもない。「(講座は)落語みたいなもんで、サゲはある程度決まってて。俺が授業に行くまでに見たり聞いたりした出来事を枕にして、それでだんだん話に入っていくみたいな」「『特殊漫画家─前衛の道』ですから、普通に漫画を描くんじゃなくて、例えば蛭子能収さんの漫画を持ってきて、蛭子さんのネーム(セリフ)を全部はずした状態で、みんなでそれぞれネーム(セリフ)を入れて物語を完結させて、なおかつそれに扉をつけるっていう授業もあったよね」(根本)

講師の根本敬さん

子ども用品を扱うお店で絵本を購入した後、神保町の古書店でエロ本を買い、絵本とエロ本で作品を作る「絵本とエロ本のあいだ」という授業もあれば、「じゃあ、ここで一曲」とYouTubeで曲を流すことも。最近、根本さんがブラウン管のテレビデオ(ビデオ内蔵型テレビ)を購入したので、今後の授業ではVHSが活躍する予定だ。

外部スペースでの展示や、美学校屋上での「神保町ルーフトップ芸術まつり」、タコシェでの「レコジャケ展」など、発表も精力的に行う。「基本は現場主義だからね。毎回必ずいろんな人に声をかけてゲストを呼ぶ。今回のレコジャケ展だったら伊藤桂司さんとか東陽片岡さんとか、そういう人たちと一緒に展示をやるほうが刺激になると思って。どうやったら自分の好きなことでしのいでいけるか、しのぎがテーマですから」(根本)

レコジャケ展での伊藤桂司さんと根本敬さんのインタビュー

 

講座を受講して


漫画に興味はあったものの、フィーリングで受講を決めたという修了生のりゅうみさんは「2週間に1回、無理やりでも生み出そうと思って1年間やったのは楽しかったし、でもまだ全然力が足りないからこれからも頑張ろうって思えた1年間でした。すごいアグレッシブな空間のなかにいたことで、勉強になりました」と振り返る。今後は自分のペースで絵を描いていきたいというりゅうみさん。バンドのジャケットイラストも手掛けている(中華戦争「PESTPOOM」)。

りゅうみさん

今やアックスで連載を持つ松田光市さんも、漫画を描き始めたのは講座を受講してから。根本さん曰く、松田さんは宿題に対して想定の3倍、4倍もの量を描いてきたそう。「受講1年目と2年目では、見え方も変わってきて。新しいモノの見方を、制作だけじゃなくて、人としゃべるときとかにも生かせて面白いです」(松田)
「漫画には生かせるよね。対応の悪い定食屋に入って普通だったら怒るんだけど、逆に得したってなってくるんだよね。ネタいただいたってさ。それは大きいよね」(根本)

左から松田さん、根本さん、りゅうみさん

アニメーションを専攻していたニューヨークの大学を退学し、鬱々としていたときに山田花子の漫画に出会い、そこから根本さんを知って講座を受講した田中紀衣さんも、受講して初めて漫画を描いたそう。「むしゃくしゃした気持ちや、八つ当たりみたいな気持ちを漫画にして細かく描き込むことで自分の気持ちを発散して、根本さんたちに見てもらって供養させるみたいな。だから、気持ち的にはだいぶすっきりしています」(田中)。70年代アメリカのアンダーグラウンドコミックスが好きだという田中さん。講座は、自分が本当にやりたいことを考えるきっかけになったという。

自作の前でポーズをとる田中紀衣さん

 

「特殊漫画家-前衛の道」


根本さんは、講座について「普通に漫画家になりたい人には向いていない」と言う。「だってはっきり言うと『絵本とエロ本のあいだ』ってダジャレだよね(笑)。普通に大真面目に『漫画家になりたいんです!』みたいな人は『絵本とエロ本のあいだ』とかやろうとしたら描けないよ」(根本)

負の感情や出来事をもネタにして、好きなことで「しのぐ」術を身につける本講座。授業見学も受け付けていますので、講座のカオティックなエネルギーを体感したい方は、お気軽にお問い合わせください!

 


特殊漫画家-前衛の道〜商業漫画と特殊漫画-そのあいだ〜  根本敬 Nemoto Takashi

▷授業日:隔週月曜日 19:00〜22:00
「特殊漫画家」として、今日まで「何故食べてこられたか」その意識無意識のあいだを受講生の皆さんに語り、時に問いかけ、しばしば即興的に皆さんとラフに漫画を描きながら探っていきたいと思います。