
6月19日(金)より日暮里にあるHIGURE 17-15 casにて利部志穂氏の個展を開催いたします。是非ご来場ください。
彫刻を考え始めて作品発表を始めた当初から、私は水や川を度々モチーフにしてきました。
古来から日本人の持つ自然観。人間の身体も森羅万象の一部であるという自然(じねん)。大気や身体の中にある水、目に見えないが存在している雰囲気(atmosphere)や環境(environment)、私はその中で起きる現象や偶発的な事物とのやり取りによって作品制作をしてきました。
空間を従える上で、その場を行き来する人や、偶然性や時間、オブジェクト、事物としての作品制作を続ける中で、更に、その周りの継続的な関係性の構築にも関心を持ってきました。
食や文化を通して見る地形から、実際にパフォーマンスやクラスや教育やワークショップやパーティーなどを行う中で、人々とのやりとりもまた、その環境を扱い動かすために耕し、どのようなサイクルやシステムをつくり、やり取りが行われるべきかということを長年試行錯誤してきました。
タイトルである「Symbiotic 亀の涙を飲む蝶」のSymbioticは、「相利共生的な」という形容詞を用いることで、変化の一部であることや変動の過程であることを意識しています。共生の中には依存関係や片利共生といった様々な関係も含まれます。人間社会での多様な人種や性や文化や宗教などを超えた本来の合理的な関係は理想的概念のように思われますが、その関係性は実現可能です。人間や事物のもつエネルギーは希望を持ち、想像やイメージをつくり、創造することによって、その共生のあり方を現実にかたちにできるのではないかと考えます。
アマゾン川で見られる現象の一つに亀と蝶の姿があります。亀の目からミネラルを摂取する蝶と、目の表面から汚れを分泌する亀の姿はとても幻想的で、世界中で信仰の対象や縁起物として愛されてきたモチーフです。その亀の産卵の涙に、我が子との別れのシーンを感傷的にとらえる人々もいます。
偶発性と現象、時間と物理的なプロセスに粘り強く取り組むことで、物と私の身体によるやりとりに詩的な解釈を乗せる。そうしたささやかなことから、人間に本来存在する力を押し拡げるように、大河を流れる一つの砂や、葉の揺らぎに見る大きな美しいサイクルを認識し、関係性を取り戻すきっかけとなることを望んでいます。
新作の映像の中には私が訪れた世界的な大河のメコン川があります。幾つもの国を超えて流れるメコン川を通じてアジアの中の日本が意識されました。インスタレーション彫刻の中には、メコン川流域で収穫されたコットンから紡がれた糸を使用した作品があります。私が海で遭遇して共に泳いだ亀との出来事や、草花とブルーバタフライとの触れ合いの体験などから、空間全体でSymbioticを表します。
涙を流す亀も、それを慰める蝶もいない。
ただ渇いた体に塩分を貪欲に取り込み、その事で余分な汚れを落とすように、無理のない継続的な関係やシステムを構築することができれば、誰かの涙が止まり飲み込み、また自身も色鮮やかな花々の蜜を食べる朝を迎えるだろう。
2026.05.30 利部志穂
利部志穂 個展「Symbiotic 亀の涙を飲む蝶 A butterfly sipping the tears of a turtle」
会期:2026年6月19日(金)〜6月30日(火)
時間:13:00〜19:00
会場:HIGURE 17-15 cas(東京都荒川区西日暮里3-17-15)
協力:HIGURE 17-15 cas
企画:美学校
レセプション:6月19日(金)18:00〜20:00
▷授業日:毎週火曜日 13:00〜17:00
この講座では立体や、空間的な制作表現について学びます。作品制作、作品鑑賞体験、美術を考えることは勿論、それぞれの特性や関心がどのようなところにあり、どのように展開していくのか。どのような手段で制作や思考が進められるのかを、実践的に取り組んでいきます。
