美學校「松蔭浩之のアートのレシピ/三田村光土里のよろめきアートサロン」
第7期生修了展「ア ル プ ス」
フィクションの中で描かれたドラマはいま、リアルに大きく引き離され、目まぐるしく飛び込んでくる日々のニュースに私たちはもはや驚くことがなくなりました。
そんな中で、神保町の古い雑居ビルに年齢もバックグラウンドも多様な12人が偶然にも集まったという出来事もまた、いまどきめずらしい小さな事件と言えるのではないでしょうか。
文脈は崩壊し、クライマックスの連続の中で、私たちは一度立ち止まり、それぞれを小さな山に見立て聳(そび)え共鳴し合います。文脈から山脈へ。
美学校「アートのレシピ」は《山脈》である。
講師・松蔭浩之は現代美術家で写真家であるが、氏が教える「レシピ」は、そのクラス名に反して、決して簡略化されたマニュアルや技術論ではない。もちろんカリキュラムは存在するが、むしろ授業の本質は、氏がいちアーティストとして生徒各々と美学的に向き合う、その動態にこそある。だから、氏もまたひとつの山に過ぎない。逆に言えば、受講生は、個々の山を打ち立て、登頂を試みる必要がある。美学校という活断層から、「アートのレシピ」という力学を媒介に、生徒=作家ひとりひとりの山が隆起する。それらの連なった山々が、この講座の全体性を構成しているのだ。
その意味で、7期を迎える「アートのレシピ」は、ようやくひとつの《山脈》を形成しつつあると言える。その突端に現れる7期生の修了展タイトルが、「アルプス」なのも然もありなんだ。DMに見られるように、彼・彼女らがこの一年で積み上げてきた酒瓶の山が、議論と実践の質量・密度を物語っている。とはいえ、標高から土壌、環境、色彩まで、まるで異なる独自12の山々が、しかし「アルプス」と言い得るほどのパノラマを獲得できるか、否か? それは当日、展覧会場「第2富士ビル」山麓からの眺望に依るだろう。
アートのレシピ第1期修了生 中島晴矢 [現代美術家 / ラッパー(Stag Beat)]
出展作家:内田愛里、加藤さやか、かみむらみどり、香田亜弓、篠田麻衣、杉野晋平、チキン・コルマ、原多果林、間庭裕基、三原 回、吉田 博、若榮沙耶
会 期:2017年5月3日(水・祝)/4日(木・祝)/5日(金・祝)
時 間:13:00〜20:00
会 場:美学校 本校(地図)
東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル3F
※初日3日(水・祝)は講評会準備のため17:30に一旦クローズします。18:00より担当講師の松蔭浩之、三田村光土里、そして会田誠さんをゲスト講師にお招きして「毎年恒例好評公開講評会」を実施。20:00よりオープニングパーティーを開催します。
▷授業日:毎週土曜日 13:00〜17:00
俗にいう「現代アート」に限らず、音楽、映画、サブカルもアングラも含めた文化全般を視野に入れた講義、ワークショップを実施します。かならずしもアーティストを養成することが目的ではないですが、節々でアートの実践を体験してもらうことで、クリエイティビティー(=創意工夫)の本質を知ることを目指します。