【アーカイブ配信終了】オープン講座「基礎教養シリーズ〜ゼロから聴きたいヴィジュアル系〜」 講師:藤谷千明 構成協力:コメカ

2023年1月22日(日)



▷対面+オンラインでの開催になりますので地方や国外在住の方もぜひお気軽にご参加ください。

放送時間:2時間59分 ※検索用楽曲タイトルリスト付き(動画の概要欄からご確認いただけます)

◎お申し込みはこちら:Peatix


毎回テーマに沿ったジャンルをがっつり掘り下げる『ゼロから聴きたい』シリーズ。
今回のテーマは”ヴィジュアル系”です。

この講座では、フリーライターである藤谷千明が、ヴィジュアル系という音楽ジャンルの黎明期から現在までの変遷を解説し、その魅力や本質に迫ります。また、講座への登壇はございませんが、構成協力としてテキストユニット「TVOD」としても活動中のライター/国分寺駅そばの古本屋「早春書店」店主のコメカ氏も参加しています。

「ヴィジュアル系のカッコ良さとは?」「ヴィジュアル系のどこを評価するのか?」など、初心者にも分かりやすい入門編として”ヴィジュアル系”をご紹介いたします。

※ゼロから聴きたいシリーズは隔月、奇数月に開催いたします。ご期待ください。

ゼロから聴きたいヴィジュアル系– 講師:藤谷千明より


「ヴィジュアル系(ロック)」という言葉、ジャンル、シーンが生まれておよそ30年が経ちました。由来は諸説ありますが、89年にリリースされたX JAPAN(当時は「X」表記)のメジャーデビューアルバム『BLUE BLOOD』のジャケットにある「PSYCEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK」が有力とされています。実際にそれ以降、当時はバンド雑誌だった「宝島」やヴィジュアル系専門誌のさきがけである「SHOXX」などの誌面に「ヴィジュアル・ロック」や「ヴィジュアル・ショック系」という言葉が踊るようになったことが、なによりも雄弁に語っているのではないでしょうか。

X、BUCK-TICK、COLOR、Gargoyle……。主に男性がメイクと「気合い」を持って自身の世界観を追求するバンドたち。まだ名前のついていなかった(「定まっていなかった」のほうが正確かもしれません)シーン、ジャンル。それが「ヴィジュアル系」という名前が与えられるとともに、そのうねりはどんどん拡大していったように感じます。LUNA SEA、黒夢、GLAY、L’Arc~en~Cielなど、その後のシーンに多大な影響を及ぼすバンドがシーンに登場。彼らの人気や、ヴィジュアル系バンドを主に取り扱う深夜番組などの影響もあり、90年代末には「ブーム」と呼べる状況まで拡大していきました。

人気バンドの解散やゴシップ報道、あるいは単に世間が「飽きた」のか、理由はさだかではありませんが世紀末の終わりとともに「ブーム」は終息を迎えます。しかしながら蒔かれた種は地下のライブハウスで着実に芽吹いており、NIGHTMARE、大日本異端芸者ガゼット(the GazettE)、シドら新世代のバンドが牽引するシーンはゼロ年代なかばに「ネオ・ヴィジュアル系」と呼ばれ、再度ヴィジュアル系が注目されるきっかけにもなりました。DIR EN GREYがヨーロッパのメタルフェスに出演したり、アメリカのビルボードチャートにランクインしたりと、海外からの人気が本格的に高まったのもゼロ年代以降です。

ゼロ年代も終盤にさしかかると、D’ERLANGER、LUNA SEA、X JAPAN、黒夢らレジェンドバンドの復活や活動再開が相次ぐ一方、「楽器を弾かないエアーバンド」ゴールデンボンバーがシーンを席巻し、2012年に「紅白歌合戦」に出演するなど、お茶の間を賑わせました。変化や進化を繰り返し、これまでおそらく何度も何度も「終わった」と言われている「ヴィジュアル系」ですが、2020年代に入ってもなお存在し続けています。

ヘヴィメタル、ハードロック、パンク、ニューウェーブ、テクノ、歌謡曲、クラシック、あるいはボーカロイド音楽に至るまで。あるいは中世ヨーロッパー、大日本帝国、ヤンキー、オタク、ストリート、インターネット、メンヘラーー。数多のサウンドとカルチャーを節操なく雑食的に取り込んできたこのジャンル。漆黒のエナメルに身を包み、非現実的なゴシックサウンドを奏でるバンドも、ダンスミュージックにのせてメンズアイドルのごとく煌めきを振りまくバンドも「ヴィジュアル系」と呼ばれます。反対に「○○はヴィジュアル系じゃない」論争もリスナーの間で定期的に勃発します。このテキストで名前を出しているバンドだって、誰かからみたら「ヴィジュアル系じゃない」かもしれませんし。

「ヴィジュアル系」とは一体なんなのか。男性がメイクをしたら? 疾走感のあるHR/HMサウンドをベースに歌謡曲的なメロディをのせたら? ヴィジュアル系雑誌や専門店で扱われていたら? ファンの大半がバンギャル(ヴィジュアル系のファンの総称)だったら……ヴィジュアル系? どれも正解なように思えるけれど、どうしても例外的な存在が出てくるんですよ。めんどくさいな。もはや「ヴィジュアル系」を定義することは誰にもできないのかもしれません。

男性が異性装のような出で立ちでステージに立つことをジェンダー規範へのカウンターとして見ることができる一方で、女性によるヴィジュアル系バンド(及び女性メンバー)はごく少数ということは、むしろジェンダー規範に縛られているともいえます。日陰者の音楽として愛される一方で、依然として体育会系的なファミリーツリーを保持しています。女性の眼差しが男性を消費する側面がある一方で、圧倒的な男社会でもありますよね。楽器を演奏しないできないエアバンドという存在がある一方で、超絶技巧のバンドも存在します。まったくもってアンビバレンスなジャンルです。
(※このテキストでは便宜上「男性/女性」表記を使用しており、それは社会的な性を指しています)

ヴィジュアル系シーン全体が卑下された時代もありましたが、ヴィジュアル系に誇りを持っていると公言するバンドも当たり前になりました。2次元のアニメキャラクターが「ヴィジュアル系」を名乗り、声優が歌唱することもあります。かつては「ヴィジュアル系はロックフェスに出ることができない(ハードルが高い)」と言われていましたが、今年(これを書いているのは2022年)のCOUNTDOWN JAPAN22-23・コスモステージのカウントダウンの秒読みは-真天地開闢集団-ジグザグが担当するそうです。メイクも落とさず、難解な漢字の羅列のバンド名も変えずに。ヴィジュアル系、そしてそれを取り巻く環境は常に変わり続けている。だから面白いのです。

本講座では、この不可解かつ魅力的な「ヴィジュアル系」というジャンルの歴史をたどっていきたいと思います。また、美学校の「ゼロから聴きたい」シリーズは、ゲストを迎えるトーク形式が多いようですが、今回は無理を言って私(藤谷千明)ひとりで行うことにしました。なぜなら、私はヴィジュアル系は「ひとりで聴く」音楽だと思っているからです。もちろんライブ会場で一体感を覚えたり、ヴィジュアル系縛りのクラブイベント、カラオケもあるでしょう(たのしいよね!)。けれども、本質的には孤独に、ひとりで聴くものだと思っています。狂気でも猟奇でも闇でも病みでも、誰にも打ち明けることのできない鬱屈や衝動を託すものだと思っています。30年の歴史をひとりで語ることは中々難しいことです。いってしまえば、無謀なことです。まぁ、しかしヴィジュアル系ですから、無謀上等です。いわば「無謀の昼」ですよ。2023年、1月22日13時〜。おまえら全員で、かかってきてください。

 

講義内容(予定)


1:2020年、ヴィジュアル系シーン見取り図

2:ヴィジュアル系の歴史・前夜、黎明期(1980年代末〜1996年)

3:ヴィジュアル系の歴史・ブーム期(1997年〜2000年)

4:ヴィジュアル系の歴史・ブーム収束・ネオヴィジュアル系の胎動(2001年〜2006年)

5:ヴィジュアル系の歴史・ネオヴィジュアル系の時代・海外での評価(2007年〜2010年)

6:ヴィジュアル系の歴史・レジェンドバンドの復活・「ヴィジュアル系」の再構築(2011年〜2016年)

7:ヴィジュアル系の歴史・拡散するヴィジュアル系(2017年〜現在)

詳細


講師:
藤谷千明/構成協力:コメカ

販売期間:
2023年1月25日〜2023年7月31日

視聴期限:
2023年8月31日まで

放送時間:
2時間59分

参加費:
◆アーカイブ視聴
一般・・・・1,500円
2022年度美学校在校生・・・1,000円

※アーカイブ動画ではプレイバックされた音楽部分はカットや映像の差し替えを行います。予めご了承ください。
検索用楽曲タイトルリストをお付けいたしますのでそちらからご確認ください(動画の概要欄からご確認いただけます)

申込:
こちらのPeatixのページからお申し込みください。

【キャンセルにつきまして】
視聴用のURLが送信される都合上、お客様都合によるキャンセルは承っておりません。何卒ご了承ください。

講師プロフィール


藤谷 千明(ふじたに・ちあき)

81年生、フリーライター。
ヴィジュアル系バンドを中心にインタビュー取材やライブレポート、コラムを寄稿。
共著に「すべての道はV系へ通ず。」(市川哲史氏との共著/シンコーミュージック)、「水玉自伝~アーバンギャルド・クロニクル~」(ロフトブックス)、テレビ番組『マツコの知らない世界』出演(2021年放送)や、『関ジャム 完全燃SHOW 関ジャム音楽史~ヴィジュアル系編~』監修協力(2017年放送)など。


コメカ

84年生、ライター/国分寺駅そばの古本屋「早春書店」店主。
文芸・音楽・映画・漫画・お笑いなど、ポップカルチャー/サブカルチャーに関する批評を各種メディアで執筆。
ライター/DJのパンスとのテキストユニット「TVOD」としても活動。TVODとしての著書に『ポスト・サブカル 焼け跡派』(百万年書房)、『政治家失言クロニクル』(P-VINE)がある。


「感染症対策」についてのご案内
・マスクの着用とアルコール消毒のご協力をお願いいたします。
・本イベントは距離を保てる人数で実施し、会場内は換気を行います。
・体調が優れない場合は参加をお控えください。

〈配信中のオンライン講座〉


〜ゼロから聴きたい実験音楽の前史〜

◆講師:講師:佐藤実 -m/s 山本和智
▷放送時間:3時間25分
本講座では、アーティストである佐藤実 -m/sと作曲家の山本和智が、実験音楽に至るまでの歴史を振り返りながら、受け継がれていった芸術の背景について、19世紀後半から20世紀前半の流れを汲みつつ思いつくままにお話します。 「実験音楽の”実験”って?」「実験音楽はどこから来たの?」など、初心者にも分かりやすい入門編として”実験音楽の前史”をご紹介いたします。


〜ゼロから聴きたい日本の土着音楽〜

◆講師:講師:輪島裕介 ゲスト:大谷能生 炎上寺ルイコ 岸野雄一
▷放送時間:3時間52分 ※講師陣によるレジュメ付き
本講座では、学校と軍隊を通じて普及した「洋楽」系の流れとは異なる、庶民的な実践の系譜を浮かび上がらせることを目指します。「音楽」「(歌舞)音曲」「洋楽」「邦楽」「民謡」「民族音楽」といった概念の来歴についても批判的に検討します。
ゲストとして、近代日本の音楽教育や音楽批評の大きな流れをみごとに提示する貴重なお仕事を次々に送り出し、「ポピュラー邦楽」という魅力的な概念を提起されている大谷能生さんをお迎えします。さらに、美的かつ政治的にオルタナティヴな音曲実践を進めている炎上寺ルイコさん、該博な音楽知識に基づいて地域に密着した盆踊りの現代的再編に取り組む岸野雄一さんも交えて、未だその全貌を現してはいない近代日本の土着音楽の姿を探究してみたいと思います。


〜ゼロから聴きたい日本のヒップホップ〜
◆講師:吉田雅史 ゲスト:韻踏み夫 荘子it
▷放送時間:3時間57分+補足動画2時間10分 ※検索用楽曲リスト付き
2010年代終盤に囁かれた「日本語ラップブーム」を通過し、日本語ラップはかつてなかったほど豊かなフェーズへ突入しているように見えます。 そしてその豊かさはもちろん、1980年代からの30年以上にわたる日本語ラップの歴史と作品群によってもたらされたものです。しかし一方で、ラップという表現方法があまりにも一般的になったために、日本語ラップの世界はあまりにも多様で、外からみれば、つかみどころのない広大な世界が広がっているように見えるかもしれません。日本語ラップの世界に導かれる導線は、フリースタイルバトルのみならず、アイドルやお笑い、アニメなど様々な世界に張り巡らされています。日本語ラップを楽しむ軸も実に多様です。ラップが好き、ビートが好き、ラッパーのキャラが好き、ファッションが好き、ラップのメッセージ性が好き、リリックがリアルなところが好き・・・ そこで本講座では「日本語ラップのなにがカッコいいのか」「日本語ラップのどこを評価するのか」という点について、考えてみたいと思います。


〜ゼロというか、マイナス5くらいから聴きたいジャニーズの文化と音楽〜
◆講師:大谷能生 矢野利裕
▷放送時間:3時間22分 ※検索用楽曲リスト付き
ジャニーズを「ゼロ」から聴くとは、ニッポンの、戦後の、芸能の、その音楽の、その作品を聴くための「ゼロ」地点って、いったいドコ? ってところから考えなくちゃならない。ジャニーズ事務所が内包している「メジャー」と「マイナー」の複雑な関係は、わたしたちにそのように考えさせます。 ということで、ゼロよりもそのちょっと手前の、だいたい「−5」くらいの位置から、つまり、ジャニーさん・戦後ニッポン・芸能界、その三者の「個性と発展」を確認するところからはじめて、その成果が映り込んでいるステージの映像なんか具体的に見ちゃったりして、なんとかかんとか、素晴らしい成長を見せている2010’sのジャニーズ・グループの活動の紹介にまで辿り着ければ……と思っております。