今年は戦後70年の節目に合わせ、各地の美術館では「戦争と美術」を検証する展覧会が相次ぎました。当時は絵具などの画材は配給制となり、陸軍による「作戦記録画(いわゆる戦争画)」制作に携わる画家ちに優先的に支給されていたと聞きます。特に洋画(油絵)の画材、その大半は輸入品であり、原料が配給制となるなかで、国内生産はごく僅かでした。
その一方で、日本画の画材はどうだったのでしょうか。
今回はそのひとつ、「和膠」に焦点を絞ってお話します。「和膠」とは、日本の伝統的な手作業の技術によって製造された、膠製品の呼称であり、明治期から導入された西洋の機械技術で製造された「洋膠」に比較されます。この「和膠」から「洋膠」に移行する時代、そこには戦争による軍需産業が深い関わり方をしています。そして、画家たちの絵画制作にも。実際、当時使用された膠製品、画家たちの小作品、スケッチを参考資料としながら読み解きます。
なお実習として、昭和初期まで製造されていたと思われる「鰾膠(ニベ)」を即席で作り、その使用感を確かめようと思います。この膠製品は、固形墨の接着剤に使用されており、書を嗜む文人たちは膠の品質を随筆に書き残しています。この作業と並行して、伝統的な膠づくりを紹介する映像や資料などを見ていきたいと思います。
ゲスト講師:後藤秀聖
日 程:2015年10月24日(土)
時 間:18:30〜21:00
参加費:1500円(学生は1000円)
会 場:美学校 本校(地図)
東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル3F
※予約・お申込みは不要です。
※公開講座はどなたでもご参加可能です。お気軽にご参加ください。
ゲスト 講師プロフィール
後藤秀聖
1985年福島県生まれ。文星芸術大学大学院後期博士過程修了。絵画制作に従事しながら、サイドワークとして伝統的な膠づくりを研究。その活動内容はフェイスブックWeb「膠の研究・製作室 Nibe Lab」で紹介。
▷授業日:毎週土曜日18:30〜21:30(毎月第三週は日曜日13:00〜17:00)
本講座では自立した作家として歩み出せるように、制作実践のための可能性を探究し続けます。内容は基礎素材論に始まり、絵画制作に必要な準備の方法を習得するために、古典から現代までの作品研究等をゼミ形式で随時開催します。