50周年アーカイブ 第2回:オリジナル校歌の制作



50周年アーカイブの第2回は校歌です。学校といえば校歌。なのに美学校には創立以来、校歌がありませんでした。いや、なんでもありの美学校なのでもしかしたらどこぞの誰かが非公式で作ったりしているかもしれませんが、なにせ50年も歴史があるので確認できず。(あ、そういえば、「外道ノススメ」の公開イベントでどついたるねんが制作してくれた「美學校ラップ」なるものならありました。)

美学校では音楽講座も開講しているので、どうせなら自前でオリジナルの校歌を作ろうということで早い段階から企画が立ち上がり、最終的に校歌のレコード盤まで出来上がりました。

ジャケットデザインは「絵と美と画と術」講師の小田島等さんです。小田島さんはくるり、サニーデイサービス、シャムキャッツなど、多くのミュージシャンたちのジャケットデザインを手がけられています。美学校のロゴは、かつて本校で考現学・トマソンの講座を持たれていた赤瀬川原平さんの作成されたロゴをそのまま使わせて頂きました。裏面の歌詞は「銅版画工房」講師の上原修一さんの手書きです。

作詞編

それでは校歌ができるまでを振り返っていきたいと思います。校歌はまず歌詞制作からスタートしました。50年の歴史を持つ美学校の校歌にはどんな歌詞が相応しいのか、様々な人の意見を取り入れるべく参加者を募ってイベント化し公開で作詞を行いました。

イベントの講師として作詞をリードしてくれたのは細馬宏通さんと岸野雄一さんのお二人。細馬さんは人間行動学者でかえる目では作詞作曲を担当されています。過去には美学校で「うたをつくる」という講座の講師をしていただいていました。岸野さんは、スタディストとして当校の音楽系講座のコーディネートをしていただいていて、校歌プロジェクト全体のプロデューサーでもあります。

(2018年9月30日に開催されるはずが、台風のため延期となり12月開催に。)

イベントは数の子ミュージックメイトさんによる校歌DJからスタートしました。数の子ミュージックメイトさんは、古今東西の身内レコード(自主制作などで内々に作ったレコード)を収集されており、Dommuneなどでも当句集番組やDJで登場されています。この日は「ルパン三世」の山下毅雄さんや、作曲家の宅孝二さんの手がけた校歌など、珍しいものをたくさんプレイしていただきました。

DJの後は公開作詞がスタート。まずは校歌の歌詞はどのように作られているのか、DJで流された校歌を例に類型化し構造を分析していきます。そして細馬さんの指導のもと、美学校にマッチするキーワードを挙げながら、参加者全員で歌詞を考えていきます。

そしてイベント後に整えて完成した歌詞がこちら

美学校 校歌 2019

神田の流れ 水清く
第二の富士の立つところ
技芸の道も 一歩から
長い階段 踏みしめて
実のなる樹だけが 樹ではない
利を求めず 技を磨く
なんとかを なんとかする 美学校

神保の町に 古書香る
愛全地蔵のたたずまい
戦火しりぞける 知の力
その尊さを 受け継ぎて
描け 刷れ 打ち込め 写し撮れ
ただ楽しみ 友を愛せ
いろいろを いろいろする 美学校

インクは果てて 糸切れて
師の教えにも 心折れ
思考の限り 尽くしても
表しきれぬ 美しさ
わからぬことを わからぬまま
集うわれらに ある希望
これからを これからする 美学校

ただそこに ただそこにある 美学校

歌詞には、美学校の所在地である神田(神田川・お茶の水)、神保町の古書店街、美学校が入居している第二富士ビル、美学校の向かいにある愛全地蔵尊など土地に関連する言葉をちりばめつつ、絵画や版画など様々な講座の制作ワードも入れられました。

真面目な歌詞に見せつつ最後に「なんとかを なんとかする 美学校」で落としていますが、ここはイベント中に細馬さんが例えば「なんとかを なんとかする 美学校」として「なんとか」に当てはまる部分をみんなで考えてはどうでしょう。と、会場に振ったところ、「なんとかを なんとかする」のままがむしろ美学校っぽくて良いのではとなり、そのまま採用されたのでした。

作曲&レコーディング 編

歌詞ができたら次は曲です。作曲は岸野雄一さんと昔から親交のある音楽家の岡村みどりさんにお願いしました。誰が聞いてもザ・校歌と言わんばかりの素晴らしい曲を作っていただきました。編曲ももちろん岡村みどりさん。ミックスには本校でレコーディングコース・プレミアムの講師である中村公輔さんが手がけました。ヴォーカル・パートの録音も中村さんのスタジオで行われました。

歌唱は男女二人。女性ボーカルは、毎年美学校の開講式で司会をお願いしている音楽家のseiさん(ju sei)に、男性ボーカルは漫画家で音楽家でもある山田参助さんにお願いしました。1番はseiさん、2番は山田さん、3番は二人で歌います。

ちなみに、B面にはレコーディングして完成した校歌をHercelotさんにリミックスしてもらった曲が入っています。

HercelotさんはMaltine Recordなどから作品をリリースしておりインターネット発のモダンなダンスミュージックを得意としながら、岸野雄一さん周辺の80年代の活動にも造詣が深く、非常に懐の広いトラックメーカー。
本作の文脈をしっかり把握した上で、親しみやすくオシャレなダンスミュージックにリミックスしてくれました。

写真は左から、中村公輔さん、山田参助さん、seiさん(中央上)、岸野雄一さん(中央下)、岡村みどりさんです。

お披露目ライブ

完成した校歌は2019年8月31日に渋谷O-NESTにて開催された美学校50周年のアニバーサリーライブ「Sound of Gigmenta 2019」でお披露目されました。ライブでは天歌布武信長さんによる美学校のテーマソングも発表されたので、美学校に関する曲はこれで三つ!に。

開講式

せっかくできた素晴らしい校歌も歌わなければ意味はなし。毎年5月に開催している開講式で初の実践歌唱となるはずだったのですが、コロナによる緊急事態宣言で開講式自体が中止に。残念ながら次回に持ち越しとなりました。来年は歌える状況になっていると良いのですが。

お礼

本当に多くの方のご協力で50周年を飾る校歌を作ることができました。この場を借りて改めて感謝します。ありがとうございました。