1969年に創立、今年2019年に50周年を迎えた美学校では「50周年プロジェクト」の一環として8月9日から25日にかけて50周年展「美学校クロニクル 1969-2019 〜51年目の現在〜」を開催しました。本ページでは写真を中心に、展覧会の様子を振り返ります。
目次
- 50周年プロジェクトとは?
- 展覧会の概要
- 展覧会の写真記録
3-1. 大教場
3-2. 中教場
3-3. 自習スペース&工房
3-4. 暗室
3-5. 小教場
3-6. 廊下 - 会期中のイベント
- 外部での展覧会
- 現役受講生によるアンデパンダン展
- お礼
50周年プロジェクトとは?
50周年という機会にどんなことができるか、事務局では2017年から準備をしてきました。様々なアイデアが挙がったのですが、プロジェクトの中心的な企画となったのが、
・書籍の出版
・50周年記念イベントの開催
・50周年展覧会の開催
という三つでした。
クラウドファンディングを通じて多くの方からご支援をいただき、8月に書籍を出版(詳細はこちら)、記念イベントは8月30日に開催(レポートが近日アップ予定)されました。そして他にも、新スペースの設立(美学校スタジオとして4月にオープン!)、教室へのエアコンの設置(5月に各教室に設置されました!)、校歌の制作(昨年12月に作詞イベントを開催し作曲・レコーディングを経て8月にレコードとして完成!)など、次なる50年に向けてスタッフもフル稼働してきました。
展覧会の概要
展覧会は外部のギャラリーや美術館で開催する案もあったのですが、開校翌年の1970年から使用している歴史ある校舎を見てもらいたいと思い、神保町の本校で開催することにしました。展示物は、70年当時からある什器や版画設備、過去の募集要項・ポスターなどを中心とした資料に加え、30名以上の美術系講座講師の作品という構成になりました。告知ページはこちら。
フライヤー
展覧会のフライヤーをデザインしてくれたのは「デザインソングブックス」修了生の岡野乃里子さん。校舎写真と1970年の教場設計図に、赤瀬川原平さんデザインの美学校ロゴを抜きで配置した素敵なデザインのフライヤーとなりました。
展覧会の写真記録
さて、展覧会の紹介に移っていきたいと思いますが、展示物が非常に多かったので写真も多くなっています。ご容赦ください。
まずは美学校をご存じない方向けに。こちらが美学校の入り口です。目立たない普通の雑居ビルなので、美学校が入っていることに気づかず通り過ぎてしまう人がたまにいます。自動ドアを入って階段を3階まで上がるとそこが美学校です。
大教場
今回の展覧会では美学校のすべての教室に展示をしました。こちらは入り口入ってすぐの大教室です。普段は美術系の講座を中心に音楽、デザイン、演劇など様々な講座が行われているほか、トークショーやワークショップなどのイベントも開催しています。
手前のテーブルには、初年度から現在までの募集チラシを並べました。机上の骸骨は中村宏教場で描かれていたモチーフです。
奥のテーブルには、会場でも販売していた50周年グラス、校歌レコード、書籍、1970年代の講義テープ、1970年に本校に移転する時に作られた計画書、1960年代の自立学校のパンフレット、校旗、初代事務局長・前代表の今泉省彦の講義録などを展示しました。
奥のホワイトボードに掲示されているのは小杉武久、松澤宥、鈴木清順らの教場の募集ポスターです。それらを取り囲むように現役講師陣の作品を配置しました。
中教場
こちらは中教場。普段は版画系の講座などが行われています。
手前の開校当時から使用している黒板の上にあるのは、松澤宥さんの講座の写真や書籍。右手のライトテーブルには70年代のスライド。
奥のテーブルでは細密画やシルクスクリーンの作業風景を再現しました。正面奥の黒板は成田秀彦さんが撮影した昔の美学校の写真。
左側の壁は銅版画の作業台です。
自習スペース&工房
中教場の奥は自習スペースと工房です。普段は版画系の受講生が作業をしています。
机に並べたのは開校時から現在までの講座のカリキュラムです。赤瀬川原平、菊畑茂久馬、松澤宥、中西夏之、中村宏、加納光於、笠井叡、小杉武久、鈴木清順、吉田克朗、小沢剛、久住昌之、会田誠、菊地成孔、伊東篤宏、OJUNなどなど、歴代講師のものがずらっと並びます。
右手のボードには「生涯ドローイングセミナー」講師のOJUNさん、宮嶋葉一さん、丸亀ひろやさんの作品。
左奥は工房スペースで、石版画(リトグラフ)のプレス機、銅版画のアクワチントボックス、シルクスクリーンの製版用の水場などがあります。
暗室
美学校の一番奥にはフィルムの現像や引き延ばしを行う暗室があります。暗室には写真工房の修了生で現講師の西村陽一郎さんの作品が展示されました。
小教場
少人数の授業を行なっている小教場です。
左の木組みは「デザインソングブックス」講師の大原大次郎さん、本多伸二さん、宮添浩司さんの3名による「わくわくカードセンター」という作品です。100円で様々なグッズが入っている紙袋を引くことができます。中央は「アートのレシピ」講師の松蔭浩之さんの映像作品。右の緑の板は大教場の入り口の扉です。普段貼ってあるポスターもそのまま展示しました。
廊下
チラシや古本が並ぶ廊下にも展示があります。
「ガロ」や「美術手帖」などの70年代からのバックナンバーが並ぶ本棚の一角は棚ガレリという常設ギャラリーになっています。50周年展に併せて、ミシェル・ザカライアスさんによる、美学校に積もった埃を用いた作品が展示されました。
会期中のイベント
会期中にはイベントも開催しました。全教室を使った展示のためスペースに余裕がなく、当初は開催予定はなかったのですが、元・現講師の方々が企画してくださり、開催の運びとなりました。
一つ目は会田誠さんによるオープニングパーティ代わりのナイトプール。展覧会初日の8月9日、屋上に大きめの家庭用プールを2つ持ち込んでゆったりと夜を楽しみました。
会田誠presents
【納涼!美学校屋上 水泳大会】
というものを開催いたします。日時は8月9日(金)19〜23時。
私財2500円を投じて購入した、U.S.A.直輸入、全長2620㎜の巨大プールで悠然と泳ぎましょう!
更衣室は便所になりますので、予め水着着用をお勧めします。
飲食持ち込み自由。椅子とかありません pic.twitter.com/pNSRKOShGM— 会田誠 (@makotoaida) August 4, 2019
今晩の水泳大会は美学校の歴史的資料と現在の講師陣の作品を合わせた展覧会のオープニングパーティみたいなものです。さっき見ましたが、かなり濃密な展示でしたので、そちらもぜひ。18時まで。https://t.co/GLZ965P1U7
— 会田誠 (@makotoaida) August 9, 2019
もう一つは、8月16日に開催された「わくわくハイボールセンター」。「デザインソングブックス」講師の大原大次郎さん、本多伸二さん、宮添浩司さんの展示ブースである「わくわくカードセンター」を屋台に仕立ててハイボールやおつまみが振舞われました。
8月16日(金)19時から「わくわくハイボールセンター」なるものやるそうです。
詳細はわかりませんが、カレンダーに「わくハイ」って書いといてください。 pic.twitter.com/Wt6yQCbjxR— 美学校(創立50周年!) (@bigakko) August 4, 2019
外部での展覧会
ここからは、同時期に開催された美学校に関連するいくつかの展覧会をご紹介します。
足利市立美術館
足利市立美術館では8月3日から10月20日に「浅川コレクションの世界−創造へともなう眼」を開催。画商・浅川邦夫氏のコレクション700点が足利市立美術館に寄贈されたことを機に企画された、浅川氏のコレクション約100点からなる展覧会です。
浅川氏は1968年から2003年まで画廊春秋を経営しており、美学校の講師を務めた中西夏之、中村宏、菊畑茂久馬らとのつながりから、80〜90年代に美学校関係者の展覧会を数多く開催してきました。今回の展覧会でも前述の講師陣の作品に加え、現講師の鍋田庸男さん、佐々木良枝さんらをはじめとする美学校に関わりのある作家の作品が展示されました。
また、コレクション展とは別に、美学校の資料展も併せて開催され、ポスターや募集要項などが展示されました。
太田市美術館・図書館
足利市立美術館からほど近い太田市美術館・図書館では、6月29日から10月20日まで、卒業生で現講師の佐藤直樹さんの展覧会「佐藤直樹展:紙面・壁画・循環」が開催されました。アートディレクターとしてのキャリアを築きながら、近年は木炭壁画の制作に重心を移している佐藤さんのエディトリアルデザインと絵画作品の両方を見せる展覧会です。
吉祥寺美術館
吉祥寺美術館では、7月20日から9月8日まで「小畠廣志 木に呼ばれる」を開催。小畠さんは1969年から79年まで美学校で木彫刻を教えており、80年には「KOBATAKE彫刻工房IRUMA」として独立し、後進の育成に力を注ぎました。展覧会場には木彫だけでなく、リトグラフやブロンズの作品も。会場が撮影不可だったのでチラシとポスターの写真だけご紹介します。
現役受講生によるアンデパンダン展
50周年展と同じ会期で現役受講生の展覧会「Artrans Gigmenta 2019〜美学校 第51期生 アンデパンダン展〜」も開催しました。参加者は美学校の50周年という年にたまたま受講した、美学校のこともまだよく知らない50名以上の現役受講生。絵を描き始めたばかりという人もいましたが、現在の美学校にはどんな受講生がいて、どんな作品を作っているのかを見て欲しくて企画しました。もちろん現役受講生にも50周年という一期一会を楽しんでもらうためにも。会場は本校から徒歩3分の、今年5月にオープンしたばかりの美学校スタジオです。
アンデパンダン展だったので、作品形態、サイズ、点数、すべて無審査自由で、著しく大きいor点数が多い場合は応相談として募集したのですが(当初の参加者は20名程度を予想)、結果的にすべての作品がバランスよく収まり見応えのある展覧会になりました。
お礼
美学校全体を使って校舎そのものの歴史を見せることを試みた50周年展。多くの方々のおかげで無事終了しました。ご来場、ご出展、ご協力いただいたみなさま、そしてクラウドファンディングでご支援いただいたみなさま、改めて感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
そして、展覧会を見逃してしまった!美学校に行ってみたかったのに!という方も、きっといらっしゃると思います。授業見学は随時受け付けていますし、出入り自由の校内開放日も定期的に開催していますので、どうぞお気軽にお越しください。
これからも美学校をどうぞよろしくお願いいたします。