文・写真=皆藤将
外道的な表現をリサーチし実践する現代美術講座「外道ノスゝメ」。その中間展が11月11,12,13日の三日間に美学校の屋上で開催されました。5月から開講して早半年。この半年間で受講生は何を学び、どんな作品を発表したのか、簡単に振り返ってみたいと思います。
半年間どんな授業をやってきたの?
そもそも「外道ノスゝメ」ではどんな授業が行われているのでしょうか。中間展で発表された作品は授業の内容が色濃く反映されていたので、まずはこの半年間どんなことをやってきたのかを見ていきたいと思います。通常授業は美学校の教室で行っているのですが、今期は恐らく2回に1回ぐらいの頻度で、外部の授業を行っていたと思います。
・歌舞伎町の24時間を配信する「TOCACOCAN」
2015年秋から一年限定でオープンした歌舞伎町の配信スタジオ「TOCACOCAN」。固定カメラで歌舞伎町の街角を24時間配信しながら、様々な企画の番組を放映するスタジオです。「外道ノスゝメ」は、そのTACACOCANに番組を持っており、二週間に1回の頻度で、ゲストを呼んだり、受講生が出演する番組「出張!外道ノスゝメ」を配信してきました。
今期は下記の方々にゲスト出演をしていただきました。
・匿名さん(エロ同人作家)
・メガネ(発電ポールダンサー、衣装作家)
・中島晴矢(現代美術家、ラッパー)
・林靖高(Chim↑Pom)、水野俊紀(Chim↑Pom)
・瀬戸山美咲(劇作家、脚本家、劇団ミナモザ主宰)
受講生は一人1回ずつ番組に出演し、パフォーマンス、プレゼン、トークなどを行いました。番組はYouTubeで見ることができるので是非チェックしてみたください。
といってもリンクをクリックする人は少ないと思うので、今期の受講生の関優花さんの出演回を貼っておきます。内容は、絶対にオリンピックのマラソンコースにならない街・歌舞伎町を42.195km走ったり、スポーツ撲滅についての街頭インタビューを行うというものでした。
・イベント「MONKEY MAGIC」
5月から6月にかけてChim↑Pomによるキュレーションで開催された涌井智仁さんの個展「Long,Long,Long」。(あ、涌井さんは実は卒業生です)。その会期の最後の2日間に様々なゲストを集めたクロージングイベント「MONKEY MAGIC」が開催されました。外道講師の古藤さんがそのイベントの総合ディレクターを務めたため、受講生もスタッフとして参加。30年間放置された地下の元ジャズバーが会場というカオス過ぎるイベントを内側から体験するという授業?となりました。
イベントのタイムテーブルはこんな感じ↓ (Chim↑PomのTweetから)
タイムテーブルには、園子温、花代、会田誠、NATURE DANGER GANG、LLLL、河村康輔、上妻世海らが名を連ねます。
『MONKEY MAGIC』本日のタイムテーブル とお知らせ。ハシゴでの登り降りです! pic.twitter.com/zO3IY6JRmb
— Chim↑Pom2016 (@chimpomworks) 2016年6月4日
本日のタイムテーブル pic.twitter.com/loqlLr8l1Y
— Chim↑Pom2016 (@chimpomworks) 2016年6月5日
▼イベントの様子
— Chim↑Pom2016 (@chimpomworks) 2016年6月5日
▼そして外道受講生
・Chim↑Pom個展『また明日も観てくれるかな?』
歌舞伎町の解体前のビル一棟を使って大規模に開催されたChim↑Pomの個展『また明日も観てくれるかな?』。こちらも講師の古藤さんがオープニング&クロージングイベントのディレクターを務めていたため、外道受講生もこのイベントにどっぷり浸かり(つまりスタッフとして動員)ました。
フロアの床をぶち抜いてビル一棟をまるまる作品化するという未曾有な展覧会に関わり、Chim↑Pomの仕事を間近で見ることができたのは相当な経験になったのではないでしょうか。
で、展示は?
前置きが長くなりましたが、中間展について見ていきたいと思います。
会場は、美学校の屋上にあるプレハブ、通称island ラピュタ。
プレハブの入口には、手書きのサインが。
入ると左右の壁いっぱいに映し出された映像作品が二つ。
参加受講生は計4人なので他の二人は?と、ハンドアウトを見ると、作品タイトルはなく名前のみ記載が。
実はこれ、田中さんと加藤さんの二人は最初から出展しない予定だったので、じゃあその二人の作品を勝手に作って勝手に発表してしまおうというというアイデアの名残り。結局二人の作品は作らず、名前のみハンドアウトに記載という形になりました。
なので、今回の実質の出展者は関さんと野呂さんの二人。
まずは関優花さんの作品「24Hマラソン_歌舞伎町」から。
今回の出展作は、上述のTOCACOCANで発表した歌舞伎町マラソンを発展させた映像作品。TACACOCANの時に走った距離は42.195kmでしたが、今回は24時間に渡って歌舞伎町を走り続けるというもの。
なぜ24時間かというと、某テレビ局の24時間テレビが放映された時に、それに対抗(もしくは乗じて)TOCACOCANでも24時間テレビが企画されました。様々なトークや24時間企画が放送されたのですが、その中の企画の一つとして、関さんの24時間歌舞伎町マラソンが行われました。今回の作品は、その時の映像を短く編集したものだそうです。
▼作品解説。24時間でおよそ100km走ったとのこと。
▼実際に走ったコース。1周2kmのコースを49周走破。路上のホストたちに顔を覚えられ、応援されたとか。
▼こちらは、野呂昭仁さんの映像作品「sleeping effect」。
24時間眠らない街・歌舞伎町で、24時間眠るという映像作品。寝息のサウンドとともに早回しで10分程度にまとめられています。普段、不眠症だという野呂さんが睡眠薬を飲み寝続けます。
▼映像の横にはパフォーマンスの経過が写真で展示されています。
歌舞伎町、24時間と、キーワードを同じくする映像作品が並びましたが、事前にテーマを決めていたわけでも、示し合わせたわけではなく、たまたま重なったとのこと。良くも悪くも、半年間の歌舞伎町での経験が色濃く反映された展覧会になったのではと思います。
講評会
中日の12日には講師の松田修さんと古藤寛也さんによる講評が行われました。講評には、美学校の卒業生でアーティストの中島晴矢さんや毒山凡太朗さんに加えゲストも講評に参加。今回の中間展は、講師は展示ついて事前にアドバイスや指示はしないということになっていたので、(と言いながらところどころでサジェスチョンは入っていましたが)改めて講師の二人から作品と展覧会全体についての話しがされます。
なぜ歌舞伎町なのか?場所を変えても強度はあるのか?Chim↑Pomに影響されすぎなのでは?映像というメディアは合ってるのか?作品ではなく記録映像になってない?展覧会タイトルは「おもいやり」で本当によかったの?映像として奇麗にまとめすぎていない?などなど
作品制作&発表が初めての二人に、厳しくもやさしい言葉の数々が向けられます。今回は、やってみないとわからないことを経験し、失敗をしてみるという裏テーマがあったので、次回に繋がる展覧会&講評会になったのではと思います。
講評会後は打ち上げに。
様々なアーティストに加え校長も参加。Chim↑Pomメンバーの姿も。
▼講師の松田修さん。(外道だからアホッぽい写真も上げておいてという松田さんのリクエストにお応えし)
▼左右が講師の松田さんと古藤さん、中央が受講生の関さん。
という感じで、中間展が終了。今後、受講生の作品はどのように変化していくのでしょうか。来年開催される修了展をご期待ください。
▷授業日:毎週土曜日 19:30〜22:30
現代を様々な角度から考証し、ハミダシ者として表現を創造していくことを目的に授業を進めていきます。キーワードとして、「サーチ&デストロイ」を強く意識していき、学校教育では教えられないことを存分に取り入れながら、強い表現とはなにか?を考え実践していきます。