【レポート】「会田誠の月イチぼったくりBAR」第8夜 ゲスト:久松知子


文=木村奈緒 写真=皆藤将


「会田誠お手製謎のつまみ」を食べながら、若手芸術家たちのトークを聞く「会田誠の月イチぼったくりBAR」。2015年10月〜2016年3月に開催した1stシーズン終了後、半年間の休息期間を経てはじまった2ndシーズン。第8回目の今回は、東北芸術工科大学博士課程に在籍中の美術家・久松知子さんをゲストにお迎え。当日は、山形から駆けつけてくれた久松さんに会いに、多くのお客さんがご来場くださいました。簡単にではありますが、イベントの模様をレポートいたします。

久松さんと“東北”


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「東北画は可能か?」展や、「喜多方酒樽絵画」などの作品から、“東北”の印象が強い(と思われる)久松さんですが、出身は三重県。院展や京都画壇の画が好きで美大を受験したものの、東北芸術工科大学は第一志望ではなく、入試も東京で受けたため、入学するまで大学を訪れたことはなかったそう。ちなみに、入学当時は「現代美術はほとんど観たことがなかった」(久松)とのこと。

そんな大学1年生の頃の作品から、近作までのスライドを用意してきてくれた久松さん。現在までの歩みを辿りながらトークが進みます。大学2年生になる直前に東日本大震災があり、大学2〜3年の頃に会田さんの著書『カリコリせんとや生まれけむ』や、赤瀬川原平さんの『東京ミキサー計画:ハイレッド・センター直接行動の記録』などを読んで「急に前衛美術や現代美術が好きになった」(久松)そう。

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絵画から一転、インスタレーションに作品も変化。いずれも学部生時代の作品。

美術史、岡本太郎現代芸術賞、地域アート


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大学3年時には、「五百羅漢図」制作に参加する学生を募るために芸工大を訪れた村上隆さんの特別講義を聞いて、美術史を学ぶ重要性を感じたという久松さん。卒業制作では、ギュスターヴ・クールベの「オルナンの埋葬」を参照した「日本の美術を埋葬する」を制作。日本の現代美術のプレイヤーたちが描かれた本作には、もちろん会田さんの姿も。この時、手紙を出した批評家・浅田彰さんから「『オルナンの埋葬』を描いたら、次は『画家のアトリエ』ですか」と返事をもらい、「日本画家のアトリエ」を制作したそう。この2作で構成された「レペゼン 日本の美術」が、第18回岡本太郎現代芸術賞 岡本敏子賞を受賞したのは、記憶に新しいです。

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その後も、東京都美術館での「東北画は可能か?ー地方之国構想博物館ー」で共同キュレーションを務めたり、日本橋三越で作品を展示販売したり(「日本の美術を埋葬する」が某法人コレクションに加わったそう)、豊橋市美術館「NIHON画ー新たな地平を求めてー」展で新世代の描き手として紹介されるなど、快進撃を続けています。

一方で、「山形」の土地に根ざしたアートも紹介してくれた久松さん。芸工大と山形県大蔵村の肘折温泉が2007年から続ける灯籠絵展示会「ひじおりの灯」や、芸工大が主催する「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」、山形で活動する若手作家について(詳しくは、美術手帖2016年12月号 特集「あなたの知らないニューカマーアーティスト100」をご覧ください)など。瀬戸内国際芸術祭に参加していた会田さんとの「地域アート」トークも弾みます。

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そんな久松さんの作品を見てきた会田さんは、「20年くらい前に行って以来行ってないけど、聖徳記念絵画館の、ちょっと下手だけど素朴で、明治天皇を敬愛している絵描きたちが謙虚な気持ちで描いたあのタッチって、久松さんを連想させるよね。オリンピックのときに、聖徳記念絵画館で個展やったら?久松さんの個展を外国人のプレスが競技の合間に見に行く。俺、プロデュースしようかな…」とコメント。会田さん曰く「だいぶお酒が回った」うえでの発言とのことですが、2020年、五輪に湧く東京で久松さんの個展が開催……されるでしょうか。実現したら、とても嬉しいですが。

次回は12/13(火)開催予定!


ということで、将来の個展のプランも持ち上がった(?)ところで、盛況のうちにイベントは終了。久松さんは、その日の夜行バスで山形に帰ってゆかれました。あらためまして、遠方から駆けつけてくださった(しかも地酒を携えて)久松さん、本当にありがとうございました!

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この日の「会田誠お手製謎のつまみ」は、「魚のあら汁みたいなもの」でした。身も心も温まりました。

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最後に記念写真を。久松さんの手には、山形の出羽桜酒造のお酒。

さて、気になる次回は12/13(火)開催予定です。詳細は追って美学校のサイトやSNSで告知しますので、引き続きチェックしていただけますと幸いです。2016年の締めくくりは「会田誠の月イチぼったくりBAR」で。ご来場お待ちしております!