【4月〜7月】オープン講座「シャドーフェミニズムズの芸術実践」講師:遠藤麻衣



私は、これまでフェミニズムに関心を持って芸術的な実践をおこなってきました。なかでも、西洋中心主義的なネオリベラリズムがとりこぼしてきた領域にあるフェミニズムに関心を持ってきました。そのフェミニズムとは、クィア理論家のジャック・ハルバースタムが指摘するような「ネガティブ」で「パッシヴ」な「シャドーフェミニズムズ」です。とはいえ、この系譜のフェミニズムと芸術実践の関連を学ぶ場が少ないとも感じてきました。

そこで、このオープン講座でそういった場を作ってみようと考えています。本講座は、遠藤がニューヨーク滞在中にオンラインで行います。レクチャーでは、シャドーフェミニズムズと芸術実践を考える上で重要な参考文献にあたりつつ、現在進行形の展覧会、ワークショップ、ジンなどの実践を扱います。

2010年代以降は、フェミニズムの第四の波として、それまでのフェミニズムに対するイメージの更新や読み直しがさかんに行われています。また、差別的な制度への関心が集まり、それが実際に是正されるといった変化を起こしています。芸術祭や展覧会の主題として目にすることも増えました。現在のフェミニズムは、人々に好まれ流行するという側面ももっています。このような波のなかにいながらも、この講座ではその波に乗るというよりは、むしろ波に溺れてみたり、波乱をもたらしたりするものとしてフェミニズムを考えてみたいです。

また、本講座は、クィアやフェミニズムの視点、ソーシャルプラクティスとしての芸術に関心を寄せる人々による、おしゃべり空間づくりも目指しています。この場からなにかが生まれても楽しいですし、そうでなくてもかまいません。情報や意見の共有過程に生じる創造性や知的な混乱を期待しています。受講者の関心や意見交流にもとづいた空間をつくりたいと考えています。

遠藤麻衣


講 師:遠藤麻衣
期 間:2022年4月〜7月(木曜日・全6回)
日 程:4月21日(木)、5月12日(木)、6月2日(木)、6月23日(木)、7月7日(木)、7月28日(木)
時 間:20:30〜22:00(延長の可能性あり)
受講料:15,000円(通し受講のみ)
定 員:20名
形 式:オンライン(ZOOM ミーティング)、アーカイブ有り
申込み:https://shadow-feminisms-endo.peatix.com

  • パソコン、タブレットなどのご使用端末やご自宅のインターネット環境でZOOMが使用できることをご確認の上お申し込みください。
  • 講義は録画して受講者限定で公開します。ご自身の画面や音声(顔や声など)が映る可能性をご了承の上ご参加ください。
  • アーカイブは各講義日の翌々日に受講者限定で公開します。公開期間は8月31日までとなります。
  • 講座初回日以降のキャンセルは承っておりません。

講座の内容と流れ


各回レクチャーとおしゃべり空間で構成します。
レクチャーでは、フェミニズム理論、遠藤が見た展覧会や参加したワークショップなど現在進行形の実践の報告を各回毎に行います。実践報告については流動的ですが、理論編では次のようなトピックを扱います。

・フェミニズム運動における「経験」って?
・フェミニズムから考える「雰囲気」や「感情」
・クィアネス:「時間の速度」と「不安定性」
・ドラァグ:「演技」と「セルフケア」
・異種共同:「ネットワーク」と「物語」

グループリサーチでは、まずは受講者の興味や関心を共有するところからはじめます。

参考文献


講座で取り上げる文献の一例です。私自身、すでに読んだものとこれから読みたいものが混ざっています。

📗 日本語(50音順)
河野真太郎「戦う姫、働く少女」堀内出版、2017年
嶋田美子「おんなのからだのつかいかた」OTA FINE ARTS、2000年
清水知子「ディズニーと動物」筑摩書房、2021年
竹村和子「境界を攪乱する――性・生・暴力」岩波書店、2013年
藤高和輝「〈トラブル〉としてのフェミニズム──『とり乱させない抑圧』に抗して」青土社、2022年
長島有里枝「『僕ら』の『女の子写真』から わたしたちのガーリーフォトへ」大福書林、2020年
「メディウム2号:特集・ダナ・ハラウェイ」『メディウム』編集委員会 、2021年

🔁 翻訳
ダナ・ハラウェイ「猿と女とサイボーグ:自然の再発明」高橋さきの訳、青土社、2000年
ダナ・ハラウェイ「伴侶種宣言: 犬と人の『重要な他者性』」永野文香訳、以文社、2013年
ベル・フックス「フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学」エトセトラブックス、2020年
サラ・バネット=ワイザー「エンパワード:ポピュラー・フェミニズムとポピュラー・ミソジニー イントロダクション」田中東子訳、『早稲田文学2020年夏号』早稲田文学会、2020年
ディネシュ・J. ワディウェル「現代思想からの動物論: 戦争・主権・生政治」井上太一訳、人文書院、2019年

📗 英語
Sara Ahmed「The Cultural Politics of Emotion」Edinburgh University Press and Routledge、2004年
Jack Halberstam「The Queer Art of Failure」Duke University Press、2011年
Jack Halberstam「In a Queer Time and Place」NYU Press、2005年
Jack Halberstam「Female Masculinity」Duke University Press、1998年
siren eun young jung「Yeosung Gukgeuk: Tradition (Un)Realized」Arko Art Center、2014年
Grada Kilomba「Plantation Memories: Episodes of Everyday Racism」Between the Lines、2021年
José Esteban Muñoz「Cruising Utopia: The Then and There of Queer Futurity Sexual Cultures」NYU Press、2009年
Jasbir K. Puar「Terrorist Assemblages: Homonationalism in Queer Times」Duke University Press、2007年

講師プロフィール


遠藤麻衣(えんどう・まい)

1984年兵庫県生まれ。俳優・美術家として、自らの身体を通じたおしゃべりやDIY、演技といった遊戯的な芸術実践を行う。近年の制作として、婚姻契約という形式を通して婚姻制度を問う《アイ・アム・ノット・フェミニスト!》(2017/2021)、理想の性器の造形からセクシュアリティを考える百瀬文との共作《Love Condition》(2020)、東アジアの海辺の地域で共有されている蛇交譚のリサーチに基づいた〈蛇に似る〉(2018-2020)など。主な展覧会に、「フェミニズムズ」金沢21世紀美術館(石川、2021)、「ルール?」21_21 DESIGN SIGHT(東京、2021年)など。2018年には、批評・キュレーターの丸山美佳とクィア・フェミニズム系アートZINE「Multiple Spirits(マルスピ)」を創刊。少女文化やクィア/フェミニズム運動の影響関係をリサーチし、展覧会「When It Waxes and Wanes」(ウィーン、2019年)を開催。2021年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程油画研究領域を修了。2022年より文化庁新進芸術家海外研修制度でニューヨークに滞在。