【5/27】見世物学会 第1回若手研究会「見世物の拡張 –GG アリン(パンク)と石井輝男(映画)のグロテスク」




日本にわずかに残る見世物興行社などの見世物屋と、見世物をこよなく愛し研究する人たちが集い、「見世物」の魅力を確認し、その周辺の日本の文化とのつながりを探ろうと試みる、見世物学会。これまでに、新宿の西向天神社や花園神社、演芸場や美大を会場にして、寺山修司や土方巽、説教節やチンドン、女相撲、ストリップ、お化け屋敷・・・多種多様な「見世物」領域を考えてきました。

かつて、見世物学会の理事であった故・種村季弘(元美学校講師)は、「狼煙(のろし)」という言葉を用いて、ここに集ってきた者たちの縁を表しました。この学会は、狼煙の元に集った者達の学会であると。

(学会ホームページより https://www.misemonogakkai.com/blank-1

 

では、その狼煙(集う場所)をオルタナティブ・アートスクールの美学校に上げてみようではないか!ということで、このたび若手を中心にした発表の場として「若手研究会」を発足。美学校の共同企画イベントを開催することとなりました。

第1回目は「見世物の拡張 –GG アリン(パンク)と石井輝男(映画)のグロテスク」。後藤護氏と山田宗史氏が互いの発表(音楽・映画)をとおして、「グロテスク」をテーマに見世物の可能性を広げます。


発 表:後藤護(映画・音楽ライター、翻訳家)、山田宗史(早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文学コース博士後期課程在籍)
日 程:2018年5月27日(日)
時 間:19:00〜21:00(18:45開場)
参加費:1,000円(資料+ワンドリンク付き)
予 約:ページ下部のフォームよりお申込みください。
会 場:美学校 本校(地図
    東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル3F
主催:見世物学会

頭にマイクを叩きつける恒例のパフォーマンスで血塗れのGGアリン。

『恐怖奇形人間』の土方巽が暗黒舞踏を披露するシーンより。

発表主旨


「見世物」といって、なにも音楽や映画といった大衆向けジャンルをあらかじめその枠組みから取り除くことはない。表層を剥いでしまえば、その奥にはおどろおどろしい、めくるめ
くグロッタ(洞窟)が大口開けて待っているものだ――人、それを「UNDERGROUND」と呼ぶ。
ライヴで自傷行為や排便を繰り返した伝説のパンクロッカー・GG アリンと、「畸形見世物」に囚われた天才監督・石井輝男の二人のアーティストにフォーカスし、映画や音楽といったジャンルを食い破る「見世物性」の刻印を読み取る。

プログラム


● 挨拶:19:00-19:05
● 発表 1:19:05-19:45

「GG アリンの見世物的糞便学(スカトロジア)」後藤 護(映画・音楽ライター、翻訳家)

股間を覆うジョックストラップ一枚に身を包み、容易にその一枚も脱ぎ捨て丸裸になって糞を垂れ、そのひり出した糞を顔に塗り、糞まみれの手で客に殴りかかるこの自称「アンダーグラウンドの帝王」ほど、「見世物」を体現したパンクロッカーは他にいない。そのドラッグ過多による死に際しても、仲間たちは彼のパンツをずりおろし、その矮小な陰部を撮影したと
いう「祝祭」が伝えられている。「死」すらも見世物と化すこの稀代のミュージシャンこそ、「見世物は生きざま」(坂入尚文)を体現する者だろう。アリンの生い立ちからライヴ・パフォーマンスにまで触れつつ、「グロテスク」と「見世物」を絡めつつ論じる。

● 発表2:19:45-20:30

「石井輝男と継ぎ接ぎの時代」山田 宗史(早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文学コース博士後期課程在籍)

河童のような水掻きを備えた父親。ヤギと一体化した女。藁草を貪る男。そしてシャム双生児。石井輝男監督作品『江戸川乱歩全集恐怖奇形人間』には見世物的な「奇形人間」がさまざまに登場する。彼らはみな「普通の人間」ならざるがゆえに「奇形」と呼ばれるが、そのイメージは異なる種の融合、複数の身体の合体といった継ぎ接ぎによって作り出されている。
この継ぎ接ぎに異種混淆性を見れば、これこそがグロテスクの淵源にほかならない。そうした装置を導入した本作が、単に「グロい」という以上の深淵をのぞかせるものであったこと
を明らかにする。そして公開された1969年当時にあった、継ぎ接ぎの可能性を掘り起こしてみたい。

● 討議:20:30-21:00

登壇者プロフィール


後藤護(ごとう・まもる)
1988年生まれ。映画・音楽ライター、翻訳家。J・G・フレイザー『金枝篇』(国書刊行会)の訳文校正を担当中。主な論考に「「スペクタクル」としての畸形――及びセックス・ピストルズの闘争/逃走術」(『見世物』第6号、新宿書房)、「レアグルーヴ、平岡正明――「ジャズ的」から「ヒップホップ的」へ」(『ヱクリヲ』第7号、特集「音楽批評のオルタナティヴ」所収)、「楕円幻想としての『ラ・ラ・ランド』」、「『ラ・ラ・ランド』と青の神話学――あるいは夢みる道化のような芸術家の肖像」(ともに『ヱクリヲWEB』掲載)などがある。翻訳論考にトニー・レインズ「虚無との接触」(『アピチャッポン・ウィーラセタクン』フィルムアート社)がある。音楽サイトRe:minderにてコラム連載中。

山田宗史(やまだ・そうし)
1991年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文学コース博士後期課程在籍。専門は開高健をはじめとする戦後日本文学。論文・論考に「パラドックス・道化・相対性――開高健「太った」の境界」(『繍』第27号)、「開高健によるアドルフ・ヒトラー ――「屋根裏の独白」の方法」(『国文学研究』第181集)、「シュヴァンクマイエルのグロテスクな食のマニエラ」(『食に淫る』vol.2)、「食べられる『物語』、曖昧な『食』——藤原辰史『食べること考えること』より」(『食に淫する』vol.3)など。餅井アンナ制作のミニコミ『食に淫する』ではモデルも担当。