1969年に創立、今年2019年に50周年を迎えた美学校。2019年8月31日に渋谷O-nestにて50周年を祝うパーティが開催されました。美学校ゆかりのアーティストやDJによるパフォーマンスの模様をフォトレポートでお送りします。
この日はラウンジとメインフロアが同時並行で合計20組のアーティストがパフォーマンスを繰り広げました。
出演者はいずれも美学校ゆかりのアーティストたちですが、美学校という多様性の塊のような場においては、そのゆかりの方々を集めるだけでも非常にバラエティに富んだラインナップになります。2~3日に分けてフェス形式での開催も可能なくらいのボリュームを、今回は1日にぐっと圧縮。タイムテーブルいっぱいのボリューム感でライブやDJ、パフォーマンスなど、様々な催しが行われました。
お客さんは思い思いにフロアを行き来したり、時には踊り場で談笑したりと、美学校らしい雑多な空間となりました。
会場を見渡すと、会田誠さんが最前列でお酒を飲んでいたり、カッパのコスプレ(※出演者です笑)が歩いていたり、年齢も属性もバラバラなお客さんたちがライブやDJで踊っていたり…多様なお客さんの顔ぶれを眺めるだけでも楽しいものがあります。
美学校関係者、受講生/卒業生のみならず一般のお客さんも多く来場いただき、決して『排他的な仲間内のイベント』という雰囲気ではありませんでした。(そもそも美学校自体が文化混合の場なので、関係者だけを集めたとしてても”仲間内”のみにはなりにくいのですが)
近年の音楽イベントにおいて過剰な多様性は集客やイベントのクオリティにとって必ずしもプラスにならないことも多く、こうした「なんでもあり」の雰囲気は都内では少なくなっているような気がします。
雑多さや懐の広さは美学校という場の個性の一つでもあると感じているので、時代に逆行してもこうした場作りにはトライしていきたいものです。
ライブ&パフォーマンスレポート:ラウンジ編
ここからは各出演者を紹介していきます。
岸野雄一
ラウンジにてイベントのトップを飾っていただいたのはスタディストの岸野雄一さん。美学校では「映画を聴く」「イベントプロデュース講座」などで教鞭を執っています。歌謡曲からプログレまで独特の選曲で盛り上げてくれました。
横川理彦
4-D、P-Model、After Dinner、Metrofarce、Meatopia等の活動でも知られる作編曲・演奏家の横川理彦さん。美学校では「サウンドプロダクション・ゼミ」の講師を務めています。緻密に構築されたビートの上に攻撃的なバイオリンが奏でられ、フロアは一気にヒートアップしていました。
Joshunend
「魁!打ち込み道場」修了生のビートメイカー、Joshunendさん。LAのビートシーンや往年のWARP直径のエレクトロニックミュージックなどからの影響を感じさせる楽曲を展開。電子音のみならずジャズ、ヒップホップ、ファンクといった要素も飲み込み、幅広いサウンドを聴かせてくれました。
Stag Beat
Stag Beatは現代美術家でラッパーの中島晴矢さん(DOPE MEN)とビートメイカーのMolphobiaさんからなるヒップホップユニット。Molphobiaさんのビートに合わせて中島さんがラップを披露。中島さんは絵画表現研究室とアートのレシピの修了生で、来年からは新講座「現代アートの勝手口」の講師を担当します。
特任教官
関西から駆けつけてくれた「アートのレシピ」修了生の宮﨑浩さん扮する特任教官。「フルメタルジャケット」のハートマン軍曹よろしく、50周年で盛り上がる人々に芸術家たるべく厳しい”訓示”を与えてくれました。
田中偉一郎
乾杯の音頭を取ってくれたのは現代美術家で芸術漂流教室の講師を務める田中偉一郎さん。会場に美術系の人が少ない中で、音楽が中心のイベントということもあり、「美術は音楽に乾杯!」で乾杯しました。
天歌布武信長
過去数年にわたって美学校を拠点に天下統一プロジェクトを遂行していた武将芸術家の天歌布武信長さん。現在は香川を拠点に天下統一中とのことで、美学校のテーマソングを作ってビデオレターにして送ってくれました。
山田参助&sei
美学校50周年記念校歌を歌うは魅惑のデュオ、ju seiでご活躍中のseiさんと第23回手塚治虫文化賞新生賞受
玉名ラーメン
「魁!
RGL
「レコーディングコース・
「サウンドプロダクション・ゼミ」を数年に渡って受講し、「テクノウチのテクノゼミナール」では講師も担当したDJ TECNORCHさん。体調不良のため長期に渡りレーベル運営・
メガネ
「バラバラアートクラス」修了生のメガネさんは、自作のオリジナルコスチュームに身を包み発電ポールダンスを披露してくれました。会場の中央にポールを立てて、ポールを回すとその摩擦で発電され隣の照明が光るという仕組み。アクロバティックなポールダンスで会場を湧かせてくれました。
Yasuhiro Mori
エチオピア/
アーの人
ラウンジからメインフロアへと繋がる階段の踊り場で「アー」と言い続けるパフォーマンスを披露してくれたのは「アーの人」。オープンからクローズまで、チューナーアプリの画面を確認しながら、442ヘルツのAの声を休憩なしで出し続けました。このパフォーマンスは大なり小なり社会規範にチューニングしながら現代社会を生きる私たちにフォーカスされた作品で、普段は一般的な労働時間である8時間「アー」と言い続けるそうです。アーの人は未来美術専門学校アート科の修了生で、現在は阿野一人名義でミュージカルの舞台に出演されています。
かっぱ師匠
大トリを飾ってくれたのは、未来美術家で未来美術専門学校講師の遠藤一郎さん扮するかっぱ師匠。ノリノリのMCで無音の曲であるジョン・ケージの4’33″をかけたり、90年代のJPOPやRAPを中心にカラオケで歌ってくれりたり。そのカラオケの曲が盛り上がってきて、いざサビに入るというところで音源を落としてアカペラで歌って会場のノリを逆に落としたり。そして最後はラウンジ全員で大合唱して大盛り上がりの中終了しました。
ライブ&パフォーマンスレポート:メインフロア編
世武裕子
メインフロアのトップバッターは劇伴作家/シンガーソングライターとして活躍中の世武裕子さん。本校では2018年度「映画音楽をつくる」講師としてお世話になりました。80sからの影響を現代的に昇華した洗練された和音とサウンドに魅力的な歌が自由に絡み、美しい世界観を繰り広げました。
TypogRAPy
蓮沼執太さん、イルリメさん、そしてデザインソングブック」講師・大原大次郎さんの3名によるユニット「TypogRAPy」は数年ぶりの復活となりました。客席を巻き込んだワークショップ的な形でライブがスタート。お客さん有志2名がステージに上がり、赤瀬川原平さんのテキスト朗読をリレーしていきます。
様々な節回しによって変形された言葉が聴覚から入ってくることで、視聴覚の相互作用によるイマジネーションのタイポグラフィーを展開しました。
rowbai
「映画音楽をつくる」修了生のMayu Inabaさんによるソロプロジェクトであるrowbai。この日はドラムとギターを交えたバンドセットによるライブを見せてくれました。先生である世武裕子さんにも負けない華のあるパフォーマンスに会場も盛り上がりました。
テンテンコ
90年代からの日本のインディー精神をアイドルとして体現するテンテンコさんは、過去に何度か美学校イベントにてご一緒した縁で今回出演ご快諾頂きました。可愛らしいルックスから繰り出されるバキバキのライブセットのギャップ!『プロフェッショナルとしてのインディー精神』を存分に感じることができました。
Jazz Dommunisters
菊地成孔さんと大谷能生さんのコンビによるHipHopプロジェクト「Jazz Dommunisters」は満員となったフロアを大いに沸かせました。美学校でのお二人の講義さながらに繰り出される言葉がビートの上で自由自在にフロウしていきます。まさにリズムのスペシャリストであるジャズミュージシャンならではのアプローチで言葉とリズムを構築していました。
numb with 100take a.k.a Leaser Modular
メインフロアのトリを務めるのは「魁!打ち込み道場」講師のnumbさん。この日はLeaser Modularこと100takeさんによるライティングをフィーチャーしての登場となります。モジュラーシンセによるnumbさんの強力な出音は有無を言わさぬ圧で、100takeさんの光の演出と共にフロアを陶酔させてくれました。
イベント後記
美学校50周年企画の締め括りとして開催されたこちらのパーティ。素晴らしい出演者の皆様のお力添えで記念に残るイベントとなりました。
美学校の音楽クラスは学びのための講座やワークショップといった場の提供が本分で、こうした音楽イベントの開催というのは実はレアケースだったりします。今回様々な美学校関係者の方にオファーさせていただき、その人材の多彩さを改めて感じることができました。
今後もこうした多様性を生かした豊かな学びの場を提供していければと考えています。
美学校は授業見学は随時受け付けていますし、出入り自由の校内開放日も定期的に開催していますので、どうぞお気軽にお越しください。
これからも美学校をどうぞよろしくお願いいたします。
文章:事務局