文・写真=皆藤将
不定期で開催している学内企画「卒業生の話を聞いて飲む会」。その第8回が「映像表現の可能性」の卒業生・前田菜々美さんを招いて4月10日に開催されました。
「卒業生の話を聞いて飲む会」とは?
美学校には様々な活動をしている受講生や卒業生がいるのですが、授業は基本的に週一回(音楽系の講座だと隔週一回)しかなく、授業の時しか来ないので、他の講座の人と知り合ったりする機会はほとんどありません。さらに講座は一年単位なので、同じ講座でも年度をまたいでいると同じく知り合う機会がなかったりします。せっかく面白い人たちがいるのに、知り合えないなんてもったいない。(もちろん、そもそも無理に知り合う必要なんてないんですが。)何とか講座間、年度間の縦横の繋がりを作れないかなと思い企画したのがこの「卒業生の話を聞いて飲む会」です。
具体的には、卒業生の人に自身の活動をプレゼンしてもらい、お酒を飲みつつ、料理をつまみつつ、色んな話しをしましょうという会です。当初はクローズドで美学校関係者のみで開催しておりましたが、現在は誰でも参加できるオープン形式で開催しています。
今回のゲストは“前髪”こと前田菜々美さん
前田さんは東京芸術大学に通いながら、2014年に「映像表現の可能性」を受講。作品制作だけでなく、パフォーマンスやワークショップ、そして展覧会の企画など様々な活動をされています。写真の通り顔が前髪に覆われているため、“前髪”と呼ばれることも。今回の会では、その多岐にわたる活動を一つずつ振り返りながらお話いただきました。
まずは、映像作品から。
映像では、自身がパフォーマンスをしている短編作を制作されていて、ホワイトキューブで鶏肉とトマトと戯れたり、床に盛られた土の中で泳ぐ作品などをご紹介いただきました。普通の人がやっても変な行為が、全面前髪の前田さんが行うことによって、違う生物に見えたり、何かの儀式に見えたりと、想像を掻き立てられるものに。
そして、企画した展覧会について。昨年夏に美学校主催でアートフェス「ギグメンタ2016」を開催したのですが、その中で前田さんは「YOTSUYA BEDROOM」という展覧会を企画、前田さん自身もパフォーマンスで参加しました。
「YOTSUYA BEDROOM」は、会場の照明が付いたり消えたりするという展覧会で、会期中常駐してパフォーマンスをする前田さんの気分で照明が頻繁に切り替わります。
▼こちらは「でんでんだーだ」というユニットで行ったワークショップの様子。「キになる身体」というワークショップで、参加者が用意された材料をアレンジして自分が木になってみるというシンプルなもの。
一般的なワークショップでは、作業工程や目標などが決まっているものが多いですが、でんでんだーだのワークショップはいい意味で雑多で自由。24時間出入り自由でやっていたり、やってもいいし見てるだけでもいいといったことが多いそうです。みんなで遊びながらパフォーマンスを開発していくという印象でしょうか。
▼「ずっといただきナイト」というオールナイトイベントで開催された「ヨルマチ燻製」というワークショップの様子。夜の築地を歩いて拾ったものを燻製にします。夜の街を燻製するというテーマだそうな。
▼こちらは「おやすみパンケーキ」。パンケーキの枕に寝たいよねという発想から、パンケーキを真空パックにして枕にして就寝。そしてそのパンケーキは朝食に。
▼「谷中妄想ツァラ」というプロジェクト型の作品。
街でやってみたいと思うちょっとした妄想を実行してくださいとポスティングで呼びかけ報告会を実施。人が持っているささやかな妄想を実行する時間を設けるプロジェクトで、一定期間の間に5回呼びかけ&報告をポスティングしたそうです。
▼報告会の様子。
▼そして「谷中妄想ツァラ」を発展させた「えそらにおせんたくつうしん」という愛知県豊橋市で行ったプロジェクト。
「谷中妄想ツァラ」では報告会を行いましたが、このプロジェクトではポスティングのみ。アートプロジェクトにおける「ハレとケ」を分析し、ケ=日常にフォーカスした結果、ポスティングのみとなったとのこと。ポストというプライベートに直結する空間に介入し、日常空間の延長線上で潜在的な非日常を刺激し、その体験自体が作品となります。
といった感じで前髪さんの活動紹介が終了。
お酒を飲みつつ、筍ご飯と春キャベツの炊きもの(写真)を食べつつ、夜遅くまで会は続きました。
前髪さんは現在は愛知に住んでいて、東京と愛知を往復しながらプロジェクトを継続してくそうなので、今後の展開にご期待ください。
ではでは〜