文・写真=木村奈緒
3月後半から5月上旬にかけて、様々な講座の修了展が開催される美学校。4月3日には「ビジュアル・コミュニケーション・ラボ」の修了展「ラウンドアバウト~ススンデ・デアッテ・ススミダス~」がスタートしました。
受講生それぞれがテーマを見つけ、美術作家として創作していくために必要な力を身につけることを目的とした本講座。すでに作品制作をしている人から、これまで作品を作ったことがない人まで、多様な人が集まっています。
展覧会初日には、リサーチャーの稲本竜太郎さんをお迎えしての公開講評会とオープニングパーティーが開催されました。その模様をご紹介します。
▼公開講評会の様子
冒頭の写真のとおり、多くの人がつめかけた公開講評会。ゲスト講師の稲本さんが、受講生ひとりひとりの作品にコメントをしていきます。「どうしてこのような展示手法になったのか?」「この素材を使った理由は?」など、稲本さんからの質問に答える受講生たち。やり取りを通して、作者(受講生)の制作意図やテーマが伝わってきます。
受講生の一年間の変遷を見てきた「ビジュアル・コミュニケーション・ラボ」講師・斎藤美奈子さんも講評。受講生の頑張りをたたえつつ、美術作品としての見せ方については時に厳しいコメントも。愛のある講評でした。
▼展示作品紹介
展覧会場でまず出迎えてくれるのは、イェンリンさんの作品。太い針金を用いた勢いのある大作です。
ピアニストとして活動する本間志穂さんの作品。作品にもどこか音楽的な要素が感じられます。今回初めて美術作品を制作したとは思えない完成度に、斉藤先生も驚いているとのこと。
普段はデザインの仕事をしている白瀬愛理さん。「命あるものを食べることへの罪悪感」を自身のテーマとして表現した作品を展示。講評では、デザイナーとしてのパッケージングの上手さと、美術作品としてのインパクトの兼ね合いについて議論が深まりました。
自分の妄想のなかにある島を表現した渡辺直子さんの写真作品「スポットライト」。会場に置いてある本間さんのポートフォリオでは、展示作品以外の写真も見ることができます。とても素敵なので、ぜひお手にとってみてください。
自分を見つめる「目」を描いた池田和秀さんの作品「みつめる、みつめかえす」。最初は目の怖さを描こうと思ったものの、親しい間柄の人たちの目を描くうちに、相手との親密さに気持ちが傾いてきたそう。当初、斎藤先生は「見慣れた体のパーツを描画して作品の域に持っていくのは難しい」とアドバイスしたそうですが、試行錯誤した結果、見事作品に。
様々なバックグラウンドを持つ人が、それぞれの関心を深めて作品にする「ビジュアル・コミュニケーション・ラボ」。同じ講座を受講しているとは思えない、多様な面白い展示になっていますので、ぜひご来場ください。展覧会は4月10日まで開催しています。
ビジュアル・コミュニケーション・ラボ2015年度 修了展
「ウンドアバウト~ススンデ・デアッテ・ススミダス~」
出 展:イェンリン、池田和秀、白瀬愛里、本間志穂、渡辺直子
会 期:2016年4月3日(日)〜4月10日(日)
時 間:13:00~19:00(最終日のみ13:00〜16:00)
会 場:HIGURE 17-15 cas(東京都荒川区西日暮里3-17-15)
▷授業日:毎週火曜日 13:00〜17:00
作品制作を中心に、現代美術に関する講義を交えて進む講座です。制作を通して、美術作家としてのものの捉え方や考え方も学んでいきます。まず、ゆるやかな方向性をもったカリキュラムを用意します。とにかく、何か作ってみる。そこからスタートです。