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「生涯ドローイングセミナー」修了生座談会

「生涯ドローイングセミナー」修了生座談会


参加者:大原知沙(大原苣、1〜6期生)、竹浪音羽(6〜7期生)、はにゅうしずか(8期生)、高瀬きぼりお(10期生)、ほりけゆきこ(11期生)
進行:木村奈緒(美学校スタッフ)
写真:皆藤 将(美学校スタッフ)
収録:2016年9月22日 美学校にて


美術、音楽、写真、版画、映像、演劇、服飾……と、さまざまなジャンルの講座を開講している美学校。絵画教程ひとつとっても、カタチの基を木炭描写によって模索していく「造形基礎I」、モチーフを精緻に描く「細密画教場」、ゼミ形式で日本画を多角的に学ぶ「超・日本画ゼミ」など、その内容は多岐にわたります。今回はそんな絵画教程の中から「生涯ドローイングセミナー」の修了生の方々にお集まりいただき、講座について、ドローイングについてお話をうかがいました。

 

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お集まりいただいた修了生のみなさん

 

――まずは、自己紹介をお願いします。

高瀬 高瀬きぼりおです。2014年の10月期から半年間受講しました。今は完全なる無職です(笑)。アクリルで絵を描いています。

竹浪 竹浪音羽です。2010年度と11年度の2年間受けていました。今は、バイトをしながら絵を描いています。イラストの仕事がしたいので、仕事をもらえるように頑張ってます。

はにゅう はにゅうしずかです。2012年度に受講していました。今は主婦をやりつつ、ぼちぼち野球のイラストを描いています。ゆくゆくはイラストレーターになりたいと思っています。

 

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写真左から、高瀬さん、竹浪さん、はにゅうさん

 

大原 大原知沙(大原苣)です。2005年が「生涯ドローイングセミナー」の第1期だと思うんですけど、1期から2010年くらいまで受講していました。今は事務職をしながら、ほそぼそと絵を描いています。

ほりけ ほりけゆきこです。フリーランスとして出版・広告業界の仕事をしながら、油彩をメインに制作活動をしています。2015年度の受講生です。

 

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写真左から、大原さん、ほりけさん

 

――皆さん、お仕事などをしながら絵を描かれているんですね。そもそも、皆さんが美学校と「生涯ドローイングセミナー」を知ったきっかけを教えていただけますか。

ほりけ ひとりで制作をしているなかで息詰まりを感じたのがきっかけですね。何かないかなと探しているなかに美学校がありました。偶然友人から、画家だったお父様が、生前突然美学校というところでドローイング講座を取った、という話を聞いて、あ、それって……と思ったんです。後押しされるカタチで受講を決めました。

大原 私は、久住昌之さんのクラスに入っていた友だちに、美学校でやっていたロシア映画の講座を教えてもらって、そこから木版とか銅版の講座を取っていったんですけど、藤川さん(美学校校長)に細密画をやってみたいって相談をしたら、お前には向かないってバッサリ(笑)。それより、O JUNって面白いやつが講座を始めるから、こっちに行きなって言われて入ったのが経緯ですね。

――じゃあ、「生涯ドローイングセミナー」を受講する前から美学校にいらしてたんですね。

大原 そうなんです。なんだかんだで10年くらいは通っていて、その後もぶらぶらしてるから、15年くらいいると思うとゾッとしますね。

一同 (笑)

大原 「生涯ドローイングセミナー」に通っていたころは近くに職場があったんですけど、職場だけで一日が終わってしまうとやりきれないので、絵を描くことでバランスがとれたというか。それは良かったです。

 

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はにゅう 私は、元々飲食系の会社員だったんですけど、かねてから絵を描きたいと思っていたのでイラストレーションの学校を探してました。いろいろ候補はあったんですけど、この(2009年の美術手帖に掲載された美学校の)広告で美学校を知って調べてみたら、よくパフォーマンスを見ていた松蔭浩之さんが教えてることも分かって。その時は結局別のイラストスクールに入って展示をやったりしてたんですけど、行き詰まりを感じて、また学校に入ろうかなと思っていたときに、当時のバイト先の同僚が美学校に行くことになったり、その頃参加した会田誠さんのワークショップで会田さんに「美学校いいんじゃないの」って勧められたりして、美学校に入ることにしました。家ではなかなか絵を描けないので、とにかく描く場所がほしいと思って「生涯ドローイングセミナー」に決めました。

竹浪 18歳で上京して、デザインの専門学校の「イメージクリエーション科」っていうコースに入ったんですけど、何していいか分からないし、友だちもいなくて2年目から学校に行かなくなってしまって。美学校は、専門学校の特集本だったか、美術手帖の広告だったかで知ったんですけど、他の学校よりちょっと異彩を放ってて、校内の写真がすごい……すごいと思って(笑)、興味を持ちました。国立新美術館の「アーティストファイル」で見たO JUNさんの作品がすごく良くて、それでやっぱり入ろうって決めて、専門学校を辞めて美学校に入りました。

高瀬 僕は、NANJO HOUSEというギャラリーで個展をやらせてもらったときに、オーナーの人に美学校を教えてもらって知りました。ギャラリーの仲間たちで美学校を3日間借りて遊ぶっていうイベントにも参加して、気楽ないい場所だなって思ってたんですけど、オーナーの奥さんに「きぼりおはドローイングを受けるべきだ」って言われて(笑)。ちょうど、個展の売上と半年分の学費がぴったんこだったから、これは奇跡だなと思って受講しました。

 

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はにゅうさんが美学校を知った、美術手帖の美学校の広告

 

――受講以前に、ドローイングに対してどんな印象をお持ちでしたか。

大原 私はまったくドローイングって言葉を知らなくて、受講しながら、ただ描いてただけって感じですね。2005年くらいだと、ドローイングっていう言葉があったはあったんですけど、当時は美術館に置いてある「素描」をドローイングって呼んでいた程度で、そこまで強い印象はなかった気がします。私自身イメージがなかったから、言葉自体にはそんなに縛られていなかったかもしれません。

竹浪 自分が何をしたいのか分からなかったので、絵画でもなくイラストでもないのが、ちょうどいいなっていう……そのくらいの認識でした。

――「イメージクリエーション」よりはいいだろうと。

一同 (笑)

ほりけ ドローイングって、一般的には線画ってことじゃないですか。この講座はデッサンじゃなさそうだし、素描かな、なんてあまり深く考えずに取ったんです。ところが、「自由に描いていいよ」って言われて、ふむ……と思いました。先生も「何を描いているんですか?」としか言わないし。3週間くらいは「こりゃしまった」って思っていました(笑)。

 

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――授業はどんな感じで進んでいくんでしょうか。

高瀬 やっぱり「何描いてるの?」って聞かれます。

一同 (笑)

大原 授業のときは、先生と話したりしながら、ただただ黙々と描いてますね。先生が本とか画集を持ってきていろいろ見せてくれたのも面白かったです。あとは、描きためた絵を持ってきて先生に見せたり、皆の絵を見たり。そんな感じでしたよね。

はにゅう そうですね。家で描いてきて、先生に「ここがいい」とか、「もうちょっとこうしたほうがいいんじゃないか」ってアドバイスをもらったり。

――何か特定のモチーフを描いたりはしないんですよね。

ほりけ 何を描いてもいいけど、モノを描いたほうがいいとは言ってました。

高瀬 形を描けってすごく言うよね。色面だけで遊んでると、「形が欲しい」みたいな。それが講座の核にあるような気がする。

――その理由はなんでしょう?

高瀬 なんでって聞くと、「(形が)なくてもいいんだけど、たまにはあった方がいいんじゃない」みたいな感じだったなぁ。オレは、今はすっかり形ばっかり描いてる。

ほりけ でも、先生の意見はそれとそれとして、完全に抽象で通す人もいるし、みんなそれぞれでしたよ。個人的には、描けなくなくなったとき、つまり行き詰まったときに、とりあえず目の前にある物をモチーフにして、描く取っ掛かりにすればいい、みたいなことと解釈しました。

 

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大原 あと、夏休みの100枚ドローイングの課題が恒例です。それだけ描くとやっぱり絵が結構変わってくるんですよね。絵が壊れてきて面白い。

はにゅう 100枚ドローイングでは、自分でも変わってきたなっていう実感があるし、先生に「お前どうしたんだ?!変わったな!」って言われました(笑)。

大原 ゲストが来た回もありましたよね?

はにゅう ギャラリーの人とか、映画関係の人が来てくれて、みんなで好きな映画について話しあったりしましたね。

高瀬 宮嶋さんが映画好きなんだよね。

はにゅう 顔料の発色についてとか、絵の具の作り方とか実践的な話もありました。

大原 質問すれば、キャンバスの張り方とかも教えてくれますよ。

高瀬 聞けばなんでも教えてくれるから、途中から描いてるふりしてずっと宮嶋さんと話してた(笑)。一応、描きまくるっていう体裁は守りながら(笑)。面白いよ、宮嶋さん。

大原 あと、「マッペ」を必ず作るんですよ。

――マッペとはなんでしょう?

高瀬 ドローイングの実物のファイルです。ヨーロッパだと、美術館への営業資料として、自分なりに何ページかにまとめたものを作るみたいで、そういうのを作って卒展で見せるんです。マッペはすごく良いですよ。グループ展だと、壁面に数枚しか展示できないけど、マッペをぽんと置いておけば、結構枚数見てもらえるじゃない。場所とらないし。だから、個展のたびに同じようなものを作ってます。

 

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2011年度修了展 「MAPPE」にて。受講生のマッペが並ぶ

 

――マッペを作る目的はなんでしょうか。

高瀬 「編集力」みたいなことなんじゃないかな。

大原 珠玉のドローイングを選び出すみたいな。

竹浪 自分の絵を、まとめて遠くから客観的に見るためなのかなと思いました。

高瀬 人の目もすごい意識するよね。

竹浪 マッペだけじゃなくて、授業で「描いて・見せて」を繰り返していくうちに、ヒット率が上がるというか。いっぱい描いていくと、自分でいいなと思えたり、人に見せたときにいいねって言われる率があがりました。それは、授業で人に見せることで培われている感じがします。

大原 確かに見せる場があると、黙々と描いているのとは違いますね。

――なるほど。その他に授業で印象に残ってることはありますか。

竹浪 O JUNさんは、絵を見て言ってくれる一言一言が重かった。格言があったりして面白かったです。

はにゅう O JUNさんからも宮嶋さんからも、突然格言のようなものがふってきますね。(授業のノートを見ながら)これはどっちの格言かな。「画材に振り回され、我を忘れよ」って書いてある。

大原 O JUNさんかなぁ(笑)。

高瀬 O JUNさんっぽい(笑)。

はにゅう 「ドローイングは人の数だけある。力みから解放されたもの、生々しい」っていうメモも。

 

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はにゅうさんのノート。格言やメモが書き込まれている

 

大原 宮嶋さんやO JUNさんが、「ドローイングは、色・形・生々しさ」と言っていたのが印象的でした。それをずっと反芻して描いてるわけじゃないんですけど、特に生々しさってことは今も意識しているかもしれません。完全とは言えないまでも、ふと、言葉がよみがえる瞬間があります。

――宮嶋さんと、O JUNさんの違いは感じたりしますか。

ほりけ 私の期では、O JUNさんがいらっしゃるのは月1回程度だったんですが、それまでに描いた絵を見てくださいとお願いすると、絵を仕分けてくれました。これはいい、という絵を抜いてくれる。宮嶋さんは、基本的に「思いついたことは何でもやりなさい」という人。「やってみたら?」「いいんじゃない?」って。アドバイスというよりは、思ったことはとりあえず試して可能性を広げなさい、というスタンスなんだと思います。

はにゅう 確かに宮嶋さんは「いいんじゃない」っていうのが多かったかも。

――大原さんは長いこと受講されてますが、いかがですか。

大原 ……記憶がモチみたいにくっついちゃって、そこだけ取り出せないんです。すみません(笑)。

一同 (笑)。

 

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――講座を受講する前と後で、皆さん自身に変化はありましたか。

はにゅう もともと、描くより塗る絵の方が多かったんですけど、100枚描くとなると、どうしてもそんなに塗ってられなくて、線画がすごく多くなったんです。そしたら、「お前、線がいいぞ」ってO JUNさんに言われて、それからは線画が増えて絵も変わりました。紙も、大きいのでやったほうがいいよっていうアドバイスどおり大きいので描いたら「はにゅうしずかっていう線が出てきたな」って熱く言われて、おお、そうかと(笑)。「筆致がいいから水彩をやってみたら」とか、より自分の長所を伸ばせそうな画材を提案してもらい、方向性というか、これをどんどんつきつめていこうかなっていう指針は少し見えました。

竹浪 宮嶋さんが「モチーフはなんでもいい」って授業中に言ってくれたことがあったんですけど、もともと、モチーフをちゃんと選んで意味を持たせなきゃいけないと思っていたので、「なんでもいい」というのはすごい変化でした。

高瀬 モチーフに感情移入するなってことだよね。すごい新鮮だったな。例えばモノを描いたとしたら、「なんでこれを描いたの?」って説明を求められることが多いじゃないですか。でも宮嶋さんは最初からそれがなくて、ぱって目についたものをひたすら描く。その練習は今も続けてて、ネットで画像検索をして、出てきた順番に描き写していったりしています。宮嶋さんの、その話が一番おもしろかったですね。

 

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大原 単純なんですけど、やっぱり四隅を見るようになったことです。枠外に視線が出るにせよ何にせよ、四角なら四角の隅から隅まで気をつけることを意識できるようになったことですかね。「四隅を見ろ」はO JUNさんの言葉だったと思いますけど、当たり前のことだけど見てなかったなと思って。

ほりけ 自分の中で「こうすればドライブがかかる、こうすればタガが外れる」というものを掴めたかな。今後もし行き詰まることがあっても、ドローイングに戻れば大丈夫という確信を得ました。あと、OJUNさんが「こっちのドローイングが、こっちのドローイングを見るんだ」って言っていたのが、ものすごくよくわかるようになりましたね。言い換えれば、「この一枚があったからこの一枚が生まれた」というような……枚数を描かなければわからないんですけどね。

高瀬 他の人がどんな環境でどんな気持ちで描いてるかなんて知らなかったから、それをいっぱい見れて面白かった。宮嶋さんもO JUNさんも、自分なりの立場で絵と関わっていて、意外とみんな違わないなって。O JUNさんもあんなにすごいのに、たまに「いいドローイングできちゃった」とか言って見せてきたりして、O JUNさんでもそんな感じでやってるんだって安心するって言うか。

 

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OB・OGも勢揃いした10周年記念展「なまどろてん」にて。
宮嶋さん、O JUNさん、修了生たち

 

――こういう人には「生涯ドローイングセミナー」がオススメといったものがあれば教えていただけますか。

大原 仕事を憎んでいれば憎んでいるほど制作が捗ります。このまま終われるか、みたいな。だから社会人にオススメです。

一同 (笑)。

高瀬 絵をどう描いたらいいかじゃなくて、どうやって描いていくか。例えば、仕事にしていくのか、どういうテンションで描いていくのか、どういう人に向かって描きたいのかとか、絵との関わり方を考えたい人にはオススメです。オレはそうだったから。

ほりけ 絵と向き合っていきたい人、自分でガツガツ描いていける人にはいいと思いますよ。逆に、何かを教えてもらえると思っている人には、オススメしません(笑)。

はにゅう 枚数を描いていくうちに、展覧会で作品の筆致を見るようになったり、自分の技術だけじゃなくて、人の絵も楽しめるようにはなると思うので、そういう意味で、より描くことを楽しめるようになると思います。

 

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講座の風景。ひたすらドローイング

 

――受講を終えた今、みなさんにとっての「ドローイング」とは何かを教えていただきたいのですが。

竹浪 絵画とかイラストは完成に向かって進むんですけど、ドローイングは途中過程でも魅力が十分あるというか、そういうものかなと思います。

はにゅう ドローイングは、頭より体から生まれるものが多いと思います。でも、なんで自分は描いているんだろうって悩んだりもして、そこが「生涯ドローイング」なんだろうなって思います。

高瀬 オレはドローイングしかできない気もしてきた。

大原 私は、ドローイングになじみすぎたのか、逆に油画とかが描けなくて…。また違うところから「ドローイング」を見なきゃいけないのかなって思い始めていて、今になってドローイングを意識し始めているような気がします。生涯何であるかつきとめられないでしょうけど。

竹浪 ドローイングの感覚で、絵画とかイラストを描こうとするとできないことはいっぱいあります。即興性とか、生の感じをイラストにもっていくのはなかなか難しいので、それをできたらいいな。あと、ドローイングは何歳でも描けるのが魅力です。お孫さんがいる人も受講してるし、年をとってもできるし、今からでもできるし、発見があります。

ほりけ 描けば描くだけ何かしらあるような感じですね。

――最後に、言い残したことなどありましたら。

大原 宮嶋さんに積極的につっこめばすごく面白いです。それだけ言いたいですね。

高瀬 うん、そう。オレもそれだけだと思う。何でも聞ける。失礼なことうっかり聞いちゃっても怒られないしね。あっ、一回怒られた(笑)。

一同 (笑)。

――怒られない程度に突っ込むのが良さそうですね(笑)。みなさん、今日はどうもありがとうございました!

一同 ありがとうございました。

 

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最後は皆さんで集合写真

 

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