「コトノハ トウヘン リゾマトロニカ」展のお知らせ


Bookhike Salon x MCAA

「コトノハ トウヘン リゾマトロニカ」


トウジャリxブックハイク


当校の廊下の本棚にあるギャラリー「TANA Gallery Bookshelf(棚ガレリ)」にて、Bookhike SalonとMCAAのコラボレーション展「コトノハ トウヘン リゾマトロニカ」が開催されます。


日 程:2016年9月16日(金)〜10月31日(月)
時 間:14:00〜21:00(月曜〜金曜)
会 場:TANA Gallery Bookshelf(東京都千代田区神田神保町2-20第2富士ビル3F 美学校内)
※TANA Gallery Bookshelfは美学校の廊下の本棚にある無人ギャラリーです。


​TANA Gallery Bookshelfは、Bookhike SalonとMCAAのコラボレーションによる「コトノハ トウヘン リゾマトロニカ」展を開催します。五・七・五の言葉をマーキングした古本の一頁で陶片をひとつひとつ包んだパッケージ「ブックハイクx トウジャRe」を会期中に何度か入れ替えつつデモンストレーションする展示に加え、来場者は会場のガチャポンマシンでこのパッケージを百円玉三枚で実際に購入することができます。

Bookhike Salonは古本や何かしら印刷物に五・七・五の文字をマーキングすることのみで(無季)俳句を詠む人々の緩やかなつながりの俳会で、さもなければ埋もれてしまう様々な本を掘り返させるこの詠み方を「ブックハイク」(ハイク=俳句/ハイク=ハイキング)という言葉遊びで呼んでいます。ブックハイクはバラバラになったオリジナルの痕跡の上に新しい小さな通路を創り出し、まったく同じ言葉の上に生じる二重の物語の間におかしみのある矛盾を呼び込みます。

MCAA(Mashiko Ceramic Arts Association)は東日本の陶芸の町・益子の非営利団体であり、この街の名前は1920-1930年代の民芸運動と度々結び付けられますが、今日においても現代的で国際的な陶芸文化の活発な拠点となっています。2011年の震災により数多くの陶器と窯が破損したことをきっかけに、MCAAは益子の陶芸制作から出る陶片を集めて研磨したものをトウジャRe(トウ=陶、ジャRe=砂利/Recycle)として流通させることで壊れた器たちに新たな命を与える活動を行っています。

トウジャReはアクセサリーや内装などの他の目的にクリエイティブに用いられていますが、この小さな町で作られてきた陶器の驚くべき多様性を反映する欠片は、そのままでもとても豊かな含みを有しています。Bookhike Salonは、各々の欠片の個性的な魅力とそこに含まれた歴史をありのままに提示するため、あえて陶片そのものに手を加えず、代わりに古本による俳句でひとつひとつの陶片を包むことで、それぞれの陶片との私秘的な出会いという新しい歴史の一頁を加えるための偶然性を仕込んでいます。ブックハイクとトウジャReはいずれも、より大きく、より全体的な何かのわずかな断片ですが、失われたオリジナルをなおも想起させつつ、さらにその断片性ゆえに本当にそうであったものを超えた想像を促す力を持っています。

俳句は、五・七・五いう音韻形式が、たとえいくつか例外を許すとしても、利用可能な音の組み合わせをやがて使い果たしてしまうことから有限な美術形式だと考えられることがあります。これは俳句を作品のみ孤立させて捉えれば正しいものですが、言葉が意味を生み出す文脈が決して定性的でないことを考えれば誤りであることがわかります。俳句を一層おもしろくしているのは、最も広い意味における間テキスト性です。つまり、言葉の意味は時代や社会ごとの言語文化(そして言語以外の状況)によって変化しますが、俳句は他の様々な(広義の、言語以外も含む)テキストに明らかに強く依存しており、それが俳句という小さな形式の可能性を無限にしています。

ブックハイクは言語の持つこの相互依存性と戯れるためのシンプルなゲームです。あえて言い尽くさずに余韻に読み手の想像力を託すという俳句の意図的な不完全性は、たとえば陶片のような、他の形態のオープンな詩的想像力にも結びつくことができます。もともと断片的な俳句と、元の物語の断片という、それぞれ別の成り立ちで不完全な二つの声の中で作者という存在はおぼろげになり、五・七・五の音の連なりとその周りに残された言葉は、それそのものは変わることないないまま、全体性の外部で断片同士を反応させ自らの声で語らしめる触媒となります。

展示名のコトノハは言葉と詩、トウヘンは陶片、リゾマトロニカはリゾーム(多元的・非階層的な知のモデル)とトロン(微粒子性)を足したものに音楽的な響きをかけた実にでたらめな造語です。言葉と陶片を粒子として、それぞれに固有の運動と、それらの常にランダムで一回的な交錯から意味を紡いでいく遊びをお楽しみください。