【レポート】未来美術専門学校アート科「渦渦」展


文=木村奈緒 写真=皆藤将・木村奈緒


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“未来美術家”遠藤一郎が講師を務める「未来美術専門学校アート科」(以下、未来美術専門学校)初の展覧会「渦渦」が、4/1〜10まで阿佐ヶ谷TAV GALLERYで開催されました。

未来美術専門学校は2014年開講。講座紹介に「何がアートなのかなんてことを授業でやるつもりはなくて」とあるように、講座は作品制作に主眼を置いているわけではありません。

しかし、今回はTAV GALLERYさんから展示のお話をいただいたため、せっかくの機会だからと成果展を開催することになりました。

未来美術専門学校アート科はさ、それぞれやってることもフィールドもみんな違うから、作品を作って展示するっていう形態がみんなにあうわけじゃないじゃんか。今回も初めて作品を作って発表するやつの方が多いわけだし。だけどまあ、TAV GALLERYにいい機会を与えていただいたわけだし、フォーマットは合わなくても表現してみたら、つくりもんにはそいつが出るからね。で、やってみたよね。(遠藤一郎の発言より抜粋)

一期生・二期生、全8名が勢揃いした本展。一体どんな人たちが、どんな作品を発表したのか。展示の模様をお伝えします。

▼未来美術専門学校アート科「渦渦」
阿佐ヶ谷駅北口から徒歩5分ほどの場所に位置するTAV GALLERY。通りに面したガラス張りのスペースなので、よく通行人の方が覗いていきます。ギャラリー入口のポスターは、一郎さんが自らデザインしたもの。渦っていうか、燃えてます。

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入ってすぐのスペース。修了生の奥平聡さん、一十三さん、仲田恵利花さんの作品が並びます。

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隣のスペースには石関サエさん、川上遥かさん、中村留津子さん、奥平さんの作品が。桜の花もあって春らしい雰囲気。

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▼展示作品紹介
「一三七四にっき」と題された一十三(ひとみ)さんのインスタレーション。バラを唾液と水道水に活けた作品「バラの記録」、食パンを本に見立てた「文庫ぱん」などが並びます。本人曰く「意味がなさそうなことをやってみました」とのこと。初めて美術作品を作ったとは思えない出来に、一郎さんは「一十三は頭がいい。自分のイメージしたビジョンをひるまずやっちゃえる」と評価。

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ぐったりしている方が唾液に活けたバラ。やってみるまではどうなるか分からなかったそうですが、やはり水でないとダメみたいです。

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TAV GALLERYの受付の前に鎮座するのは、奥平聡さんの作品「阿佐ヶ谷大名物披露会」。大量生産品として一度は散逸したぬいぐるみ。幾人かの手を経て、今や奥平さんの元には1000体を超えるぬいぐるみが集まったそう。それらを、奥平さんが「目利き」として厳選。来場者とぬいぐるみの一期一会の出会いを生み出しました。一郎さんは「ただのぬいぐるみを買ってもらうには、ぬいぐるみの物語をもっと全面に出すと良い」とアドバイス。

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大量生産品が、なぜか骨董品のように思えてくるから不思議です。思わず連れて帰りそうに……。

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モニターに目が映しだされた作品は、仲田恵利花さんの「目-eye-」。単に目を映しているのではなく、瞳のなかに流れ行く景色を映しています。実際にモノを見ているのは(視覚情報を処理しているのは)脳だと言いますが、本作を見ると、確かに自分の目に世界が写っていることを実感できます。「見る」ことへの意識が変わる作品です。本作の撮影のために、一郎さんに首都高を何度も走ってもらったという仲田さん。そんな教え子について一郎さんは「恵利花は小さいけど、本当は大きい人間。必ず化ける」と評価。

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下のふたつのモニターには、視界のうしろに流れていく景色など、自分の目には映っていないが確かに存在する景色が映しだされています。

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川上遥かさんの作品「光」。たった今感じた気持ちを色彩で表現した絵画作品です。平面に描くのももどかしくなり、机やダルマもキャンバスになったそう。偽りのない川上さんの「今」が詰まっているかのようです。一郎さん曰く、「遥かは、かわいらしく見えて実は頑固でゴリッとしている」とのこと。それもそのはず。川上さんは、未来美術専門学校の紹介文だけを読んで受講した強者です。

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壁一面に掛けられた絵画作品とマネキンが手に持っている映像作品は、いずれも中村留津子さんの作品「お花見」。インドでの滞在から帰国して描き上げた絵画作品は、繊細なタッチと可愛らしくデフォルメされたタッチが共存する不思議な絵です。展示中に何度か額が落ちてしまったため、「絵や作品の内容は良いので、仕上げをしっかりするように」と一郎さんからアドバイス。

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鉛筆画なので写真では分かりにくいですが、かなり繊細なタッチで描かれた大作です。

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映像作品は以前から取り組んでいる「天使」のシリーズ。画面下に小さく天使が映っているの、分かりますか?

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石関サエさんの作品「鏡~you=I~」。「人は、相手を通して自分自身を見つめているのではないか」というテーマを、鏡を用いて表現。一郎さんは「美術館にこの作品があったら、一番見向きもされないだろう。だけど、これだけ人に媚びていない作品もない。そういう意味で、無視できない力がある」と評価。

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ちなみにサエさんは、ひとりの人間の生き様そのものがアートだとして、道化師に扮しながら「ライフアート」なるものを普段から行っています。さすがかっぱ師匠の教え子?

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▼修了生企画のイベントも
会期中には、修了生が企画したイベントも開催されました。4/9には「少女閣下のモノグラム」と題した、ぶーにゃんの作品(イベント)を開催。人気急上昇中のアイドル「少女閣下のインターナショナル」と遠藤一郎扮する「かっぱ師匠」がトーク&ライブを行うという、誰にも予想がつかないイベント。当日は「少ナショ」ファンのみなさんがギャラリーに駆けつけ、大盛況に。

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少女閣下のインターナショナルのみなさん。ギャラリーでのライブは初めてとのこと。

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最後は、少ナショのみなさんとかっぱ師匠で記念撮影。終始照れているかっぱ師匠です。

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最終日には、遠藤一郎と全修了生によるクロージングトークとパーティーも開催されました。受講生ひとりひとりの内面に踏み込んでコメントをする遠藤さん。受講生の「個」と向き合う未来美術専門学校アート科の魅力が伝わったのではないかと思います。遠藤さんから受講生全員へのコメントはこちらからお読みいただけます。

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未来美術専門学校アート科2016年度生募集中!


ということで、未来美術専門学校アート科がいかにわけが分からなく濃密であるか、その一端がお分かりいただけたのではないかと思います……。いや、これではぜんぜん分からない、という方に朗報です。なんと、4月24日(日)に「未来美術専門学校アート科〜春の大説明会〜」を開催します!当日は遠藤一郎さんが直々に「未来美術専門学校アート科」について説明するとともに、みなさんからの質問に答えます。予約不要・入場無料ですので是非。詳細はこちらよりご確認ください。

Endo Ichiro

授業日:毎月第三週の土曜日と日曜日
未来美術家・遠藤一郎による新講座。本当にお前がやりたいことは何なのか。お前の夢を好きなまんまにやれ、わがままに。夢バカ最強宣言。非実力派宣言。最初の一歩。世の中にはへんなやつが必要だ!!