【レポート】「会田誠の月イチぼったくりBAR」特別番外編 ゲスト:根本敬


文=木村奈緒 写真=皆藤将


会田誠さんお手製のツマミと酒を片手にゲストの話を聞く連続企画「会田誠の月イチぼったくりBAR」。これまでに、12名(組)の若手アーティストの方々にご登場いただきました。

「特別番外編」と銘打った今回は趣向を変えて、特殊漫画家として既に一時代を築いてきた根本敬さんをゲストにお迎えしました。当日は、根本ファンの方々や、根本さんと会田さんの掛け合いを楽しみに集まった方々で会場は満員。根本さんによる自作解説あり、慶応大学准教授・松田健児さんによるミニ「ゲルニカ講座」ありと、大充実の3時間でした。

ごく簡単にではありますが、当日の様子をレポートいたします。

すべてはここから始まった「根本敬ゲルニカ計画」


今回、根本さんをゲストにお迎えして「特別番外編」を開催するに至ったのには、理由がありました。その理由こそ、根本さんが現在取り組んでおられる「根本敬ゲルニカ計画」であります。

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「根本敬ゲルニカ計画」とは、漫画家・根本敬が「個人の意志を超えた大きな何かに突き動かされて」、ピカソの《ゲルニカ》サイズ(349×777cm)の絵画を描こうとするプロジェクトです(Motion Gallery「根本敬ゲルニカ計画」より)。

1981年に『月刊漫画ガロ』で漫画家デビューして以来、『生きる』(青林堂、1986/青林工藝舎、2001)、『タケオの世界』、『豚小屋発犬小屋行き』(青林堂、1991 /青林工藝舎、2010)、『未来精子ブラジル』など、数々の作品を発表。さらには「909/アノーマリー2」展(1995年/レントゲン藝術研究所/椹木野衣キュレーション)や「時代の体温」展(1999年/世田谷美術館/東谷隆司キュレーション)への参加など、漫画界はもとより美術界にも多大な影響を与えてきた根本さん。

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美学校にあった根本さんが表紙の『ガロ』1992年1月号

そんな根本さんが近年取り組んでいたのが、漫画的な《線画》ではなく《ペインティング(塗り)》でした。歴史的名盤レコードのジャケット165枚を根本さん独自の解釈で描いた作品群は、画集『ブラック・アンド・ブルー』(東京キララ社、2016)として刊行されています。

そして、根本さんの次なる作品が、《ゲルニカ》サイズの巨大絵画というわけです。根本さんと会田さんの書籍を手がけてこられた太田出版の穂原俊二さんを発起人として、会田さんを画材アドバイザーに、『美術手帖』編集長・岩渕貞哉さんをスーパーバイザーに迎え、強力な布陣で日夜制作が進められています。

また、制作の模様は、ニコ・ニコルソンさんによるルポ漫画(とても面白い!)となり、『美術手帖』誌に連載中。絵が完成した暁には、アトリエである京浜島のBUCKLE KOBOで、作品を前にして「鉄工島」FESなるものが開催され……という、前代未聞にして垂涎必至なプロジェクトなのであります。

根本敬による「新ゲルニカ」完成に向けて


しかしながら、《ゲルニカ》サイズの作品となると、何かと困難が多いのもまた事実。用いるキャンバスはM500号。キャンバス張りを専門とする業者でも尻込みする大きさだそう。外注すると費用もばかになりません。そうした数々の困難を乗り越えるべく立ち上がったのが、「根本敬ゲルニカ計画」のクラウドファンディング(CF)。「ぼったくりBAR特別番外編」は、このCFのキックオフイベントでもあったわけです。

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Motion Galleryのサイトより

イベント当日がCFの公開初日だったのですが、イベント終了後には早速プロジェクトへの支援が集まっていました。とは言え、目標金額は400万円。まだまだ多くの方の支援を募っています。

ニコさんの連載をまとめた書籍、完成除幕式の参加券、完成画複製、さらには根本さんの描きおろしキャンバス画と、様々なリターンが用意されています。人数限定のリターンもありますので、是非一度チェックしてみてください。本イベントの詳細なレポートもCFのページからご覧いただけます。4月24日(月)「会田誠の月イチぼったくりBAR」特別番外編 レポート(前編)(後編)

写真レポート


ということで、当日の模様は前述のレポートをご覧いただくとして、ここからは写真を中心に会場の雰囲気をお楽しみください。

▼写真手前から、会田さん、根本さん、穂原さん。

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▼二部屋ぶち抜きの会場にはお客様がぎっしり。

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▼終始、様々なエピソードを披露してくれた根本さん。その話術に「ロフトプラスワン的でいいですね。いつものぼったくりBARと違って、ベテランという感じで」と会田さん。

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▼スペイン美術史が専門で『もっと知りたいピカソ 生涯と作品』(東京出版)の著者・松田健児さんによるミニ「ゲルニカ講座」。「反戦絵画」としてではない《ゲルニカ》の捉え方や、ピカソと日本人の関係についてレクチャーいただきました。

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▼《会田誠お手製謎のツマミ》は炊き出しをイメージして、おにぎりと豚汁。おにぎりの具は昆布です。

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▼最後は全員で記念写真。松田さんの斜め後ろに控えるのは『美術手帖』編集長の岩渕さん。

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「根本敬ゲルニカ計画」への応援を!


ということで、いよいよ本格始動した「根本敬ゲルニカ計画」。一体どんな「新ゲルニカ」が完成するのか、楽しみに待ちつつ、引き続き応援して参りたいと思います。みなさまも、この前代未聞の巨大プロジェクトにご注目ください!