ハンドメイドの美学校ポスターが完成。掲示スペースを募集します。


文・写真=皆藤将


2017年度受講生募集のポスターが完成しました。5月から新年度が開講して早一ヶ月。本来であれば、開講前の募集期間にできていなければならないのですが、大幅に遅れてついに完成。

なぜ制作がこんなに遅れたのか?それには理由があります。言い訳がましかもしれませんが、聞いてください、みなさん。

一般的に印刷物としてポスターを刷る場合は、デザインデータ作って、印刷所に発注し納品という段取りになると思います。ですが今回は、せっかく作るんだし、何か面白い方法で作ろうということになり、美学校でできる様々な印刷技法等を駆使し全て手作業で制作しました。一点一点全てハンドメイドかつ全て一点ものです。しかも47点しかありません。

一応制作のスケジューリングをしたものの、やはり手作業は時間がかかるもの。技法のテストや予想以上に作業時間がかかったりして結局完成が遅れてしまいました。

で、実際どうやって作ったのよというところですが、制作過程のテキストがとっても長くなったので、先に完成したポスターの一覧と、掲示スペース募集から。

アートディレクション・制作:浦川彰太
制作:岡修平、皆藤将、竹下ひかり、平山文子
スペシャルサンクス:大原大次郎、鶴田崇、西村陽一郎、本多伸二、水野健一郎、宮添浩司

掲示していただけるスペースさん募集


2017年度の募集はもう終わってしまっていますが(10月期の募集はこれからですが)、せっかく制作した47枚のポスターたち。

もし掲示しててもいいよという心の広い方、スペースや店舗の方がいらっしゃいましたら、以下のフォームからご連絡ください。

郵送(送料は美学校持ち)か近場であれば直接お持ちします。美学校に来て実物を見ながら選んでいただくことも可能です。掲示期間は問いません。

サイズは、400×550mm前後、B3(364×515mm)より少しだけ大きなサイズです。

※ ポスター掲示の募集は終わりました。たくさんの方々にご協力いただきお礼を申しあげます。

制作過程のお話


さて、これらのポスターをどのように作ったのかというお話です。

今回は以下の四つの技法を用いて制作しました。

・サイアノタイプ
・ステンシル
・シルクスクリーン
・手書き(技法ではありませんが)

せっかくなのでそれぞれの制作過程を振り返ってみたいと思います。

ちなみに今回の企画と制作ディレクションは卒業生で武蔵美視デ出身の浦川くん↓↓が担当してくれました。大感謝。

試作


本番制作の前に、まずは試作を行います。「美學校」のロゴはステンシルで、半透明のグラデーションはシルクスクリーンで実際に刷っています。ロゴ、テキスト、写真はコピー用紙にプリンター出力で貼っています。

DTPの制作プロセスと違い、どうやって作業を進めて行けばいいのか未知の部分が多かったので、何をどの技法で制作しどう組み合わせてどの順番で制作していくかかなどを検討します。

サイアノタイプ


試作検討の結果。まず最初は水洗の作業があるサイアノタイプからとなりました。

サイアノタイプは写真の技法です。いわゆる青写真、もしくは日光写真とも言いますね。紙に紫外線に反応する感光薬品を塗布し、その上に透明フィルムに印刷した写真をのせ、太陽光で感光させるというものです。(これも一度(半日以上かけて)試作してから本番制作に入りました。)

ちなみにサイアノタイプの指導をしてくれたのは当校「写真工房」講師の西村先生。制作にあたっては、どのようの柄が適切かなど様々な相談に乗っていただきました。ありがとうございます。

作業はこんな感じです↓

薬品を調合し、フィルムを適切なサイズにカットし、薬品を塗布します。

露光の様子です↓

動画でどうぞ。

シルクスクリーン


次にシルクスクリーンでテキストの乗せていきます。シルクスクリーンは孔版の版画です。メッシュ状の版にインクが通る部分と通らない部分を作り、紙を版の下に置いて、版にインクを乗せて刷ります。

アート系で著名なところだとアンディー・ウォーホルや最近だと村上隆さんがシルクスクリーンで作品を制作されていますね。作品以外でも、Tシャツ、エコバック、ポストカードなど様々なものを刷ることができます。

美学校の「シルクスクリーン工房」は開校当時からある伝統の講座。自分も一年半学んだので得意分野です。製版も自分たちで行います。

感光乳剤を版に塗布し、その上にテキストのリスフィルムを貼り、露光します。

一枚一枚刷る箇所が違うので、どこに刷るか紙を貼って見当を付けます。「デザインソングブックス」や「絵と美と画と術」の受講生に手伝っていただきました。

刷り上がりです↓

「2017年度生徒募集」の箇所が刷られた箇所です。(うっかりしていて刷っている時の写真がないという…)

ステンシル


そしてステンシルで「美學校」のロゴを吹き付けます。型は浦川くんが手作業でカットしてくれました。スプレーはリキテックスを使用しています。

さらにシルクスクリーン


数枚に半透明のグラデーションを刷ります。デカルコマニーも乗せました。

手書きで


「美学校」も文字を手書きで講師の方に描いていただきました。

こちらは「絵と美と画と術」講師の水野健一郎さん。

こちらは「デザインソングブックス」講師の大原大次郎さん、宮添浩司さん、本多伸二さん。それぞれ一画ずつ順番で書いていきます。

裏面には様々な模様が


シルクスクリーン工房のみなさんが試し刷りに使った後の紙を使っているので、裏面には様々な模様が。逆にその柄を生かしてあえて表面にして制作したものもあります。

という感じで、47枚のポスターが完成しました。いやあ、完成まで長かった。

実際に技法ミックスで制作してみて、作業時間や要領など初めてわかったこともありました。浦川くんと来年もトライしたいねと話しているので、(募集期間に間に合うように)いいポスターを作りたいと思います。

来年も楽しみにしていください。